愛されキャラカパルの㊙️人気の秘密。『絆を大事にする、ゆるキャラ界のアイドル。』
組織票報道で揺れた今年のゆるキャラグランプリ2018。
そのテッペンを取ったのは、埼玉県志木市の志木市文化スポーツ振興公社所属のゆるキャラ、カパル。
カパルをご存知無い方は、何のキャラなのかと思われるかも知れないが、振興公社の山口館長いわく、、
『ただのカッパ』(笑)
しかし、取材を進めていくと、カパルが、いかに愛されキャラであるかということを実感することになる。
振興公社の山口館長からも、お話しをお伺いしたが、今回は報道されていない部分を、別の視点から追った。
まずは、志木市産業振興課の石塚課長への取材から。
埼玉県志木市は、人口約7万5千人。
池袋から東武東上線で約20分程。
都内に近く、自然に恵まれているため、住みやすい街と評判だ。
人口も増え続けている。
そして、志木市は面積が9.05平方キロメートルと全国6番目に小さい街。
その街に三本の川が流れている。
江戸時代から大正初期にかけて、川越から隅田川まで舟での運輸が行われていた。
志木はその時代物資の集積地、商人の街として栄えていた。
志木市ホームページより
志木市にはカッパ伝説がある。
そのカッパ伝説をベースにカパルが誕生した。
市内にはカッパの石像が24体ある。市内の彫刻家の皆さんが寄贈してくれたものだが、その石像を回る観光客の方もいらっしゃるそうだ。
カッパの街、志木市。
商工会には、カッピーというカパルとは別のカッパのゆるキャラもいる。
同じく商工会には、志木あらちゃんというゆるキャラも。
市内には複数ゆるキャラがいる事情から、志木市としても、カパルだけを全面応援という訳にはいかなかった。
そこで、カパルが考えた戦略が、市外へのアピール。
そして、全国を回っていくこと。
そして、ファンの方、全国のゆるキャラと交流を深めていくことだった。
SNS上の盛んな交流もカパルの特徴。
他のゆるキャラたちは、県や市の看板を背負っているので、自由奔放な発言はなかなか難しい。
発言コードがあったりする。
カパルはツイッターのヘッダー上に、「発言はSNS上の特性上コミュニケーションを重視した言葉遊びを多用しておりますことをご了承下さい」とあらかじめお断りを入れている。
自由奔放さゆえか、公式アカウントなのに二回凍結されているらしい(汗)
カパルのアカウントを見ると分かるが、カパラーさん(カパルのファンの皆さん)とカパルが実に楽しそうにコミュニケーションを取っている。
他のゆるキャラのアカウントとの交流も盛ん。
カパルはもともと競うのが嫌い。他のキャラと仲良くするのが大好きなキャラなのだ。
そんなことから、カパルサイドも志木市も、最初は、何がなんでも1位をとるぞというスタンスでは、無かった。
全国を回って、ほかのキャラとの絆を深めて、全国のファンの皆さんとも交流を深めていく。
通常のゆるキャラは、地域内でのPRを強化して、地域の代表で、地域を背負ってという、ある種悲壮感を漂わせながらグランプリで競っているキャラもいる。
そのために、自治体が必死になったある一部分の姿が、今回のグランプリでクローズアップされた。
カパルは2012年からゆるキャラグランプリに参加しているが、この「何としても」という姿勢からは、一線を画していた。
順位より触れ合い、絆を大事にしていこうというもともとのポリシーから、このグランプリは、今年で最後にしようと考えた。
カパルが一番大事にしてきたのは『ハートtoハート』
そんな独特なキャラを愛するファンが全国各地に増えていった。
そんな時、今年を最後の挑戦と聞いたカパラーさんたち、全国のファンが、カパラーにテッペンを取らせようと、全面バックアップ始めた。
カパラーさん達自らが、志木市内で応援させて欲しいということになり、自発的に志木駅前などで、ビラを配布し、市内の皆さんに応援を呼び掛けた。
全国のカパラーさんの本気度、熱い応援支援の動きを見た市民のカパラー熱も、徐々に盛り上がっていった。
東大阪市で行われたゆるキャラグランプリ2018での会場得票は、カパルがダントツのトップだった。
会場には、全国からカパラーさんが集結し、カパルへの投票を呼び掛ける姿があった。
他のゆるキャラのファンの方も、カパルを応援する程皆さん頑張った。
『愛され度は、今年間違いなくNo.1だった。』
結果グランプリを受賞することが出来た。
この過程を市は充分理解しており、1位になったからしっかりしましょうというようなことは言わずに、カパルらしさを今後も尊重し、応援していく。
志木市ホームページより
志木市が、ふるさと納税で得たものを、カパルの支援に使ったりといった展開も今後あるかも知れない。
しかし、まだ具体的には決まっていないと石塚課長。
ふるさと納税返礼品の中には、カパルのグッズも一部含まれている。
グランプリ以降、この問い合わせも増えているそうだ。
市側も、市長もグランプリを取れたことは、奇跡!!
と正直びっくりしているそう。
たが、『カパルは市民の誇り』だ。
こうはっきりとおっしゃったのが、印象的だった。
カパルは、アイドルやアーティストでいうなら、現在ツアー中。
追っかけのカパラーさんも、毎週のように全国を駆け回っている。
10月20.21日の彦根ご当地キャラ博
11月16.17日の東大阪でのゆるキャラグランプリ2018
11月24.25日の世界キャラクターサミットin羽生
12月2日の志木市民まつり
例年三万人前後が集まっていたこのお祭り。
今年は実行委員会発表で三万四千人が集まった。
ここでカパルに特別住民票が交付された。
ゆるキャラ日本一になったからという理由からではなく広報大使として、もともと住民票交付する計画は進んでいたそうだ。
12月3日の志木駅前イルミネーション点灯式への出席
志木市ホームページより
そしてこの後12月9日(日)高知県安田町のなかやま山芋祭り、ここに出席する。
分身の術が使えないカパル。
修行が進んでいるキャラは、分身の術が使えるそう。。。(カパル談)
一体しかいないカパル。
マネージャーのような役割のアテンド花子さん。
人気キャラだけにファンが集中すると、前に進めなくなることもあるそうだ。
そんな時にも大活躍するのが、花子さん。
ファンをかき分けながら、カパルは進んでいく。
そして、カパラーさんのハードスケジュールは、まだまだ続く。
『あんたろう君との深い絆』
カパルさんにはお世話になっている。大変感謝している。
高知県やすだ町のゆるキャラあんたろう君。
次に高知県安田町地域創生課竹内さんへの取材。
高知県の安田町。人口約2700人。人口減少と高齢化が進んでいる街。
特産は鮎、なす、トマト、柚子、お酒、山芋など。
川がきれいで、ふるさと納税返礼品では米も人気だ。
水がきれいなところは、お米、お酒、トマトのおいしさに直結する。
あんたろうはこの町公認のキャラクター。背中に特産の山芋を背負っている。
あんたろうは、特産の鮎がモチーフのキャラクターだ。
あんたろうは、5年前に生まれたが、県外へのアピールを本格的に始めたのが1年半前。
SNS上でカパラーの方が『カパルに似たキャラクターが高知にいるよ。』とカパルに知らせたことが、カパルとその後、親交を深めていくキッカケとなった。
今回のゆるキャラグランプの際には、あんたろうがカパルに応援ポスターを贈った。
それは印刷所で作られた本格的なもの。
それが、志木市の市役所に貼られて、それを見に行ったカパラーさんも、紙質が本格的だとツイートしたほどだった。
あんたろうは人口の少ない地方の田舎町のキャラクター。
関西や関東で認知されるのは、なかなか困難だった。
しかし、SNS上でのカパル、カパラーの皆さんとのやり取りで、絆を深めていった。
昨年初めてイベントで一緒になった時も、カパラーの方が、ツイッター上に、カパルと一緒の写真をアップしてくれた。
結果、あんたろうはカパルやカパラーの皆さんのおかげで、関東、関西地区での知名度が格段に上がった。
東京で開いた予約制のイベントにも、カパラーの皆さんも含め60人が集まった。
あんたろうもカパルと一緒で、全国をイベントを回る活動を大事にしている。
ゆるキャラと言うと、一般的には、ゆるキャラグランプリのイメージが強いと思う。
しかし、ゆるキャラグランプリで上位になったからと言って、わざわざその地域を訪問してくれるかというとそんな簡単なものではない。
ゆるキャラ自身が、全国のイベントに積極的に出掛けていくことで、その地域のキャラ、そしてファンの皆さんと交流が深まる。
そこで初めてお互いの地域の行き来が始まるそうだ。
それが、本当の意味での地域活性化に繋がる。
そして、お互いの地域を認め合う素敵な関係が出来上がるのだ。
一時、あらゆる手段を講じて、グランプリで1位になったとしても、それが地域にひとを呼び込むことに繋がらなければ、地域活性化にもならず、そのブームの灯は、自然と消えていく。
そして、ゆるキャラグランプリの順位は、必ずしも、ゆるキャラ界の知名度と、比例しない。
今回のグランプリでのゆるキャラ界の知名度は、カパルがダントツだったという声を複数の自治体関係者から聞いた。
やはり地道な努力が、ゆるキャラ界でも必要なのだ。
取材を進めて来て、山口館長がおっしゃってい
た、『地に足をつけて、これからも活動していきたい。』
この意味を、深く理解することが出来た。
竹内さんが言っていた「カパルって、凄く深いことをSNS上で、呟くんですよ。」
この言葉の意味も、分かる気がする。
カパルは毎年グランプリの投票が始まった当初は、トップテンに位置するそうだ。
根強い固定ファンがいるから。
しかし、その後は、大きな票の動きに飲み込まれていく。
この繰り返しだった。
この意味に、疑問を感じたことも、今年が最後のチャレンジにした一つの要因。
無念だったこともあるだろう。
人知れず涙したことも、あったかも知れない。
SNS上で親しいやりとりしているキャラのファンの皆さんは、熱量が非常に高いと竹内さんが、おっしゃっていた。
確かに、自分が応援している方から、リプライが貰えたり、コメントを拾って貰えたら、それは、それは嬉しいはずだ。
そのキャラクターを、本気で、応援しようとするカパラーの皆さんのお気持ちは、実感として分かる。
そして、その絆は、ずっと続くはずだ。
今回のゆるキャラグランプリでは、組織票にスポットが当たった。
そもそも組織票は、選挙では、公然と行われている。
それが、ゆるキャラでは批判されること事態が、おかしい。
あたかも組織票が悪のような印象操作報道。
そこにスポットを当てるのではなく、ゆるキャラ通しの絆、ファンとの交流。
それによって、地域通しでのこころ温まる交流が存在し、地域の活性化に役立っている。
こういったことに、スポットを当てるべきだ。
ゆるキャラの時代は、終わったと話す有識者がいるが、それも大きな勘違い。
今度の日曜日に行われる安田町の山芋祭り。
カパルが、ゆるキャラグランプリで応援をしてくれたあんたろうに対するお礼の意味も込めて、このお祭りを訪問する。
既に、反響が大きく東京方面からそして、四国各地のゆるキャラファンの方が、集結しそうだ。
人口約600人の小さな地域の廃校で行われるイベント。
http://higashi-kochi.jp/event/post-221.html
全国から毎年1000人から1300人程度集まるお祭りだが、今年は大幅に来場者が増えそうだ。
校舎、体育館を使ってイベントが開かれるが、高知市のなるまちゃん、カパル、そしてあんたろうが入るキャラクターの部屋が、校舎内に一室設けられるそうだ。
当日は、山芋汁などの地元の特産品も味わえる。
このイベントでは、各キャラクターのグッズも販売される。
高知空港から、車で約一時間の街。空港から、レンタカーを借りて訪れる方も多いそう。
空港からタクシーで約10分の場所にある、のいち駅までタクシーで行き、そこから太平洋沿いを走る電車での来場がオススメと竹内さん。
知れば知るほど深さを感じるゆるキャラ界。
カパルの世間への認知度ブレイクで、地に足を付けたゆるキャラ活動スタイルが、今後定着していくかも知れない。
最後になるが、
『ゆるキャラの順位付けは、不毛な争い。』
ある担当者の方が語ったこの言葉が、一番印象に、そして、こころに突き刺さった取材だった。