京成電鉄が保有するオリエンタルランド株の評価額、時価総額を超えてます。
京成電鉄の対応に痺れを切らしたパリサー・キャピタルは、資本配分計画に関して法的拘束力のある株主提案を行いました。
ものすごい金額の含み益のある株式を京成電鉄は持っていて、その含み益が京成電鉄の時価総額を超えている点にパリサー・キャピタルは着目したものと見られます。
もっと具体的に、本件を見ていきましょう。
オリエンタルランド株の筆頭株主、京成電鉄
オリエンタルランドの有価証券報告書(四半期報告書)を見てみると、2023年9月30日時点の大株主の状況は、京成電鉄が22.15%の株式を保有していることがわかります。
京成電鉄とオリエンタルランドの関係は、オリエンタルランドが設立された1960年頃から始まります。
オリエンタルランドのHPによると、当時の京成電鉄社長と三井不動産社長らによって「オリエンタルランド設立計画趣意書」がまとめられ、最初の事務所は京成電鉄本社内に置かれるなど、密接な関係であったようです。
そのような経緯があるため、京成電鉄がオリエンタルランドの筆頭株主であることを理解することができます。
オリエンタルランド株の含み益
22.15%もの保有比率があるということは、時価総額が約7兆8,700億円である2024/5/2現在、京成電鉄が持つオリエンタルランド株の評価額は1兆7,000億円を超えます。
京成電鉄の時価総額は約1兆円(2024/5/2現在)です。
京成電鉄の時価総額を保有株式の評価額が軽く超えていますね。保有株式の簿価を調べてみると、投資その他の資産に含まれる投資有価証券は、約1,900億円(2022年度有価証券報告書より)です。
含み益も軽く1兆円超えていますね。
ついに京成電鉄を保有するこのオリエンタルランド株に外部のメスが入ったというわけです。
パリサー・キャピタルの主張
パリサー・キャピタルは、まず2023年10月に京成電鉄に対して、13D Monitorが主催する「The 2023 Active-Passive Investor Summit」において企業価値向上案を披露しました。
そこでは、20スライドからなるプレゼンテーションを公表しており、その要点は以下の通りとなっています。
京成電鉄は時価総額約8,800億円、本源的価値1兆5,500億円の企業である
京成電鉄株の評価は、本源的価値に対して43%の大幅ディスカウント状態にある
京成電鉄株式の第8位株主、パリサー・キャピタルによって着実なエンゲージメントがなされている
76%の価値上昇の可能性と更なる企業価値向上への道筋があること
割安に放置された優良企業、京成電鉄
パリサー・キャピタルによると、京成電鉄のコア事業の持つ価値は3,200億円、オリエンタルランド株の価値は1兆2,300億。合計して、京成電鉄の本源的企業価値は1兆5,500億円となります。
それに対して、京成電鉄の時価総額は8,800億円(2023年10月時点)です。
よって、その差は6,700億円であり、76%のディスカウントが発生している状況です。この魅力的な投資チャンスに気づいている人は少なからずいたことでしょう。
76%ディスカウントの原因と発生している課題
京成電鉄がこれほどまでにディスカウントされて株式市場で評価されている根本原因は明白ですよね。過大に保有しているオリエンタルランド株です。
そして、オリエンタルランド株を持ち過ぎていることで、PBRが高く見えることとなり、経営陣の自社PBRに対する意識が欠如するという悪影響が出ています。
パリサー・キャピタルの提案
パリサー・キャピタルは、そんな京成電鉄に対して、以下のような提案を行いました。
オリエンタルランド株の持分比率を15%未満にすることで、会計上の歪みを解消(適正なPBRの実現)
業界最高水準の資本政策を採用
コーポレートガバナンスとIRの先進化
これらの提案に沿った企業運営を実行することで、京成電鉄は「真の価値を解き放つ」ことができるとパリサー・キャピタルは考えています。
株主提案へ
しかし、パリサー・キャピタルの提案に応じた痕跡は、京成電鉄のIRサイトには見当たりません。よって、京成電鉄は首を横に振ったものと見られます。
そして。2024年4月24日、パリサー・キャピタルは京成電鉄に書簡を送り、パリサー・キャピタルの勧告的決議案を株主総会における議案に加えるよう要求しました。回答期限は4月26日。
しかし、京成電鉄は議題に追加しないと回答した模様です。4月30日、パリサー・キャピタルはついに、オリエンタルランド株の売却計画などを定款に追加するように要求する新たな株主提案を行いました。
まとめ
京成電鉄vsパリサー・キャピタルという構図ですが、真に企業価値が向上する施策こそが株主視点での正解であると思います。
この京成電鉄のオリエンタルランド株の扱いに関しては、長年に渡り誰も大きく攻め入ることはありませんでした。しかし、パリサー・キャピタルがついにこじ開けようとしています。
京成電鉄の対応とパリサー・キャピタルの次なる一手に注目です。
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