「学校教育法の一部を改正する法律案」の調査(NHK党浜田聡参議院議員のお手伝い)
はじめに
こんにちは。さかさきと言います。今回は、「学校教育法の一部を改正する法律案」について、調査しました。その調査内容を書いていきます。
「専修学校」ってなに?
今回の改正案は、「専修学校」についてです。最初に、「専修学校」について調べていきます。まず、専修学校とは何でしょうか。専修学校は、「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」ことを目的とした学校とされています。例えば、美容師や調理師など、その職業に従事するには資格が必要となります。資格を取得するには、専門的な技術や知識が必要です。それらを教える学校が「専修学校」です。専修学校は、入学資格の違いにより、三つの課程があります。一つ目は、高等学校卒業者・高等専修学校修了者が入学できる「専門課程」。いわゆる「専門学校」です。二つ目が、中学卒業者が入学できる「高等課程」(高等専修学校)三つ目が、特に入学資格はない「一般課程」となります。
実際に、日本はどのくらいの専修学校が存在しているのでしょうか。専修学校数は「3,020校」で、生徒数は「607,951人」になります。課程別だと、専門学校(専門課程)は「2,187校」、高等専修学校(高等課程)は「424校」、一般課程は「157校」です。大学に比べると、生徒数は少ないですが、短期大学よりも多いので、義務教育を終えた子どもたちにとって、専修学校は有力な進学先になっています。
ちなみに、専修学校における卒業後の進路は、「医療・福祉関係」が多いようです。
専修学校の現状
次に、専修学校の現状について見ていきます。まず、歴史的な背景として、現在の専修学校制度が出来上がったのは、昭和51年になります。昭和51年(1975)に、「学校教育法の一部を改正する法律案」が議員提案で提出され、7月3日の参議院本会議で全会一致で可決、7月11日に学校教育法の一部が改正され、専修学校制度が成立します。それ以前は、「各種学校」ないしそれに準する形で、明治時代から存在していました。私たちが通っていた小中高校は、学校教育法において「一条校」とされており、このほかに従来から「学校教育に類する教育を行うもの」としての「各種学校」がありました。昭和40年代以降、高度経済成長による日本経済の発展により、幅広い職業が誕生し、高等学校への進学率が増えていたこともあり、高等学校を卒業した者への職業訓練や専門的な技術や知識を求める声が大きくなりました。
そして、各種学校の社会的な地位向上・国による振興を求める機運が高まり、各業界の連盟の誕生や資格検定の創設が起きました。
その後、教育関係者や団体からの陳情もあり、中教審や高等教育懇談会などが答申や報告書を発表。文部省(現在の文部科学省)が実態調査に乗り出します。一例として、中教審の答申を載せておきます。
一連の動きを見ていくと、「経済発展で、高いレベルの人材が必要だ」→「若者が、今後必要となる職業に就いてほしい。」→「今の各種学校をどうにかしたい」という思惑が透けて見えます。では、現在はどうでしょうか。
令和では少子化が加速しており、至る所で人手が不足しています。労働力人口が減少していく中、新しい人材を育成・輩出していかなければなりません。更に、コロナ禍を契機として、デジタル化が叫ばれるようになりました。その為、既存の知識だけではなく、新しい知識や技能を学び直す必要が出てきました。そこで、リカレント教育やリスキリング(学び直し)が重要視されています。そのような社会的な背景を踏まえて、各業種における専門的な人材確保を目指しつつ、時代の変化に対応できる人材の育成も急務となっています。文部科学省では「専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議」を開催しています。会議では、3本の柱を中心とした振興策に「実践的な職業教育の推進」「社会人・留学生の受け入れの拡大」「修学支援新制度の中間層への拡充等への対応」を提言しています。今の専門課程等に対して、学校教育法の改正を念頭に制度改正を視野に入れたり、専門課程修了者の学習機会の継続や社会的評価の向上を目指したり、教育機会の質の保証として、自己評価制度を義務付けたりと、昭和時代における専修学校とはまた違う様相を呈しています。
「学校教育法の一部を改正する法律案」について
大学等の制度的整合性を高めるための措置
改正案は、専修学校の専門課程の入学資格を大学入学資格と同等にすることを明記しています。条文では以下のようになります。
大学入学資格は、以下のような規定があります。
資格要件が多いですが、大体が「高等学校又は中等学校を卒業した者」に集約されるかと思います。
また、専修学校専門課程の在籍者の呼称を「生徒」から「学生」に改めます。ちなみに、学生という呼称は、「大学・高等専門学校」に在籍している者に対して、使われています。後述しますが、それによって附則の条文も改正されます。さらに、専修学校となるために「最低限必要な学習時間に関する基準」を大学と高等専門学校と同様に、「単位数」に改めます。以下、案文です。
大学や高等専門学校は、「単位数」を基準にしていますが、それを専修学校にも適用する内容です。改正案には、「専修学校を大学と同水準に引き上げる」「大学との乖離をなくしていく」という意図が伺えます。
専門課程修了者の学業継続の機会確保や社会的評価の向上のための措置
次に、専門課程修了者への内容です。まず、一定の要件を満たす専門課程を置いている専修学校には、「専攻科」を設置できます。専攻科とは、「特定専⾨課程を修了した者等が、より深く学び・研究することを⽬的とした 課程」のことです。今までは、高等学校や中等教育学校、高度専門学校など「1条校」と規定された学校に専攻科はありましたが、これを専修学校かつ専門課程を置いている場合は、専攻科の設置を認めます。リカレント教育やリスキリングを推進する中で、学業機会の確保を目指しています。
また、専門課程の修了者の社会的地位の向上を推進しています。特定専⾨課程の修了者全てについて⼤学編⼊学資格を認めるとともに、当該修了者は専⾨⼠と称することができるようにします。「大学編入学資格」は以下のようになっています。
上記の要件の他に、「特定専門課程修了者」が加わると考えていいでしょう。また、従来では、文部科学省が認めた専門学校の修了者に対して、「専門士」という称号が与えられていました。専門士になった者は、大学への編入学の資格を付与されていました。それが「特定の専門課程修了者」全てに大学への編入学の資格と専門士という称号が与えられます。
ただ、この専門士という称号ですが、私がインターネットで検索したら、「専門士 意味ない」という結果で出てきました。信憑性があるかないかは別にして、そういうイメージがついてしまっている現実があるので、具体的にどう向上させるのか知りたいところではあります。
改正案は、一定の要件を満たす専修学校の専攻科に関しては、短期大学や高等専門学校の認定専攻科と同様に、⼤学等における修学の⽀援に関する法律に基づく修学⽀援制度の対象に含めるとしています。
改正案では、「生徒」から「学生」に改められたことで、上記の修学支援も受けられるようになります。大学との関連性を求めると共に、人材の質の向上を目指しているのでしょう。
教育の質の保証を図るための措置
現場である専修学校に対して、大学と同等の項目での自己点検評価を義務付け、外部の識見を有する者による評価を努力義務として設けるようにします。
専修学校は、平成19年に学校教育法が改正し、自己評価の実施・公表が義務化、学校関係者評価の実施・公表が努力義務化されました。今回の改正案にある外部者の評価はありませんでした。一方、大学の評価制度は、以下のように決められています。
大学は、自ら点検及び評価を行い、その結果を公表することを義務化し、
総合的な状況について、認証評価機関による評価を受けています。これを専修学校にも適用することになります。では、どんな実施評価項目なのか、駒澤大学を例にして、見ていきましょう。
駒澤大学の自己評価を見ていきます。まず、自己評価から外部報告書を公表するまでの流れは以下のようになります。
各委員会での調整から部会によるチェックシートを精査し、結果報告書を作成します。その報告書に基づき、外部評価委員会を開き、外部評価報告書を作成し、学長に提出する流れとなります。
実際の「全学自己評価・評価結果報告書」を見てみると、「大学基準」を10項目設け、「理念・目的」「教育課程・成果」「財務」など、様々な分野で自己評価を行っています。評価の中で、「現状、長所や特色、問題点」を説明しています。
評価の中身は置いておきますが、このような評価方法を専修学校にも適用することが改正案のポイントになります。
筆者の意見
改正案に関する問題点
まず、専修学校の専門課程の入学を大学入学資格と同等にするという点です。現在、各業種で人手不足が深刻化しています。例えば、理容師・美容師では、厚生労働省の「一般職業紹介状況について」において、「生活衛生サービス職業従事者」(美容師・理容師が含まれる)の有効求人倍率は「3.12倍」になります。これは、求職者数よりも求人数が多いことを意味します。美容師や理容師の国家資格の取得者数が増えていながら、人手不足は変わりません。そこに、専修学校の専門課程の入学資格を厳格化するのは、現在の状況とは矛盾しているような気がします。闇雲に、入学させろとまでは思いませんが、人手不足が深刻化している中で、入学資格の厳格化をする意味があまり分かりません。それよりも、各業種の賃金を上げたり、労働環境を是正させたりすることが第一優先だと感じます。
次は、専門士という称号に関してです。専門士を付与するとの事ですが、これは、付与された側にとってどのくらいのメリットがあるのでしょうか。大卒と高卒によって、給与額が違うように、専門士になると給与額を大卒同等にするという条件があれば、また変わってくるのかもしれません。ただ、「専門士という称号にすれば、箔がつきそう」だったら、中身が伴わない気がします。
また、「生徒」から「学生」と法律における位置づけが変わったことで「⼤学等における修学の⽀援に関する法律に基づく修学⽀援制度の対象」となります。修学支援の拡充によって、経済的な理由で学べない子どもが救えるかもしれませんが、その財源はどこから来るのでしょうか。財源は増税ということになれば、結果的に割を食うのは、今支援を受けようとしている子どもたちになるのではないでしょうか。まずは、減税して、経済活動を活発化させ、国民の手取りを増やした方が、長期的に見ても、救える子どもが増えると思います。安易な支援制度の拡充には反対です。
筆者の提案
最後に、私からの提案になります。人口減が加速している日本の中で、専修学校が発展していくには、修学支援を拡充するよりも、専修学校側で、入学する生徒全員に対して、入学金などの費用を全額負担するという制度を導入してみてはどうでしょうか。卒業後に、事業が成功する、あるいは社会人として活躍した場合は、寄付という形で学校に還元してもらう。そうなると、専修学校側は本気でカリキュラムを考えると思います。必要性の低い事業や部署などを削減し、学校の経営状況を逐一評価していくかなと思います。正直、自己点検評価や外部評価では生ぬるいと感じます。教育の質を保証していくには、学校側がリスクを負って、人材育成に努め、自身の教育事業や内容を精査していくべきでしょう。
もし、それが嫌ならば、学校の設置基準を緩和して、様々な分野や業界が専修学校へ参入していけるようにすべきです。「人手が足りない。だけど、教育の質を担保したい」と思っているならば、規制を緩和して、幅広い教育の機会を設けるべきです。私自身、日本の教育は学習者側の選択肢が少なすぎると考えています。夢を志した若者が、「給料が低いから」「なれる選択肢がなくて、、」という理由で、頓挫してほしくはありません。以上で、私の調査は終了いたします。