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楽しかった、嬉しかった、誇らしかった。その気持ちを忘れないで。
些細なことだけど心に残ることがあった。
わたしは最近あるプラットフォームを使って海外の方からお仕事をいただくことが増えた。(このプラットフォームの話はまた今度)
一応そのプラットフォームでは「英語から日本語への翻訳をします」という体でお仕事募集を出しているのだけど、ニーズは様々。
自分が今度日本企業に履歴書を提出するので日本語訳して欲しい、とか、映画のこのシーンの日本語サブタイトルが欲しい、とか、今度ローンチするアプリの日本語化を手伝って、とか。
中でも今日は、珍しい依頼があった。
その依頼とは、「近々日本語のタトゥーを入れたいので、候補となる四字熟語の意味を教えて欲しい」というちょっと変わったものだった。
何を思ってタトゥーを彫ろうと思ったんだろう?とか、少額ながらもお金払って意味を聞くなんて、本気度が半端ない....とか、いや、四字熟語て!とか、いろいろ感じるところはあった。
ただ、それよりもただ嬉しかった。
「タトゥー」という、半永久的に自分の皮膚に残るものを、あえて日本語で入れようとしているその依頼主の覚悟や日本への好意、日本語の意味をしっかりと感じ取ろうとするまでの日本や日本語、日本の文化への強い興味を感じた。
「いろいろ調べてみて、これがいいと思ったんだけどどう思う?」と見ず知らずの日本人に聞いてくる、依頼主の真剣さと事の重大さを感じた。
すぐに返事をして、「タトゥーを彫るっていう一大イベントについて、わたしに相談してくれてありがとう。そして日本語を選んでくれてうれしい。もしよければ、四字熟語が背景に持つ意味とか、それを聞いた人がどんな印象を持つか、なども合わせて解説しますよ。」と返信し、仕事を受けた。
このタスクの金額はプラットフォームが提供する最低金額。手数料などを引くと、300円くらいになる。
でも我ながらものすごく親身に対応して、もらった候補の四字熟語を英語で説明するだけでなく、類似する四字熟語を提案してベストなニュアンスのものを探したり、もらったタトゥーの文字の意味合いやデザインに合うフォントを探してきたり、最善を尽くした。
別にここまでしなくてもよかったはず。依頼主は四字熟語の意味がわかればよかったのだから。
でも、その人にとって思い入れのある大事なイベント、これから先長い事そのタトゥーを眺めて過ごしていく事を考えると、どうしても納得感・満足感を感じて欲しいと思った。
結局数時間くらいして依頼主の納得いくデザインに仕上がって、「You are the best!」というメッセージをもらって、その仕事は終わった。
別に大金を稼いだわけではないが、かなりの充足感があった。確実に自分はこの依頼主の役に立ったし、価値提供をした感覚があった。そしてそれ以上に、「仕事をしている」という義務感やピリッとした緊張感・ストレスを感じなかった。
そのタスクが終わった後、旦那さんに「こんな面白い依頼があってね、とっても楽しかったの。」と話した。
「アメリカには面白いことをお金払って聞いてくる人もいるんだね」という笑い話で終わる予定だったのだけど、彼はもうちょっと大事なことを言った。
「その気持ちを忘れないで。その、仕事をして楽しかったとか、嬉しかったとか、誇らしかったとか、なんだかいい気持ちになったとか。お金をいっぱい稼いだ、とかよりもとても大事なことだと思うから、覚えておいてね。」と。
わたしは前職のお仕事を退職して以来、キャリアに悩んでいる。
どういう道に進んでいくべきかとか、どのようなキャリアプランを歩むべきかとか。
候補はあっても、「これだ!」と決めてコミットして進み出すことがまだできていない。
頭でごちゃごちゃ「べき論」とか「今後の社会のニーズ」とか考えてた。
毎月必要なお金がいくらで、逆算して作業をどのくらいして稼ぐかとか、ということばかり考えてた。
けど、大事なのってもっと根底だ、ってわかった。
自分が誰かの役に立った、と感じることで得られる充足感とか、自分は正しいことをした、という誇らしさ、単純にその作業を楽しめる気持ち。
人生の中でそういうことに費やす割合を増やしていくことが1つの理想であって、今の自分にとってはベストな選択なのではないか、と思い直した。
もちろん、仕事してたら嫌なことはあるよ。納期守るの大変だし、結果が出なかったら辛いし。全部が全部うまくいくわけではない。
でも仕事を通じて「価値を創造する」ことで得られるポジティブな結果が、そこから生まれるネガティブな側面があったとしても自分を素晴らしい気持ちにさせてくれるか、ということはとても大事な視点だと思いました。
ああ、物事はこんなにシンプルだったのか、と思い直した、という話でした。
仕事って本当に素敵ですね。
あと、旦那さんがいつも名言みたいなことを言うので、この人人生何周目なんだろう、ってたまに思います。
おわり。
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