窪美澄「じっと手を見る」まるで雨音を聴いているような。
こんにちは。
お元気ですか。
さむくなりましたね。
お風邪などひいていませんか。
休日が、一日、雨のときってありますよね。
朝おきて、雨の音が聴こえて、カーテンを開けたら、水滴の向こうに霞む世界。
ああ今日は、一日、家にいよう。
予定も特にないし。
そう思うときって、ありますよね。
コーヒーを淹れて、パンを焼いて、サラダを食べて、そして窓の外を見て、雨の音を聴いて。
今日はずっと降るんだろうな、って思って。
窪美澄「じっと手を見る」
これは、そんな、雨に霞んだ一日のような本です。
本って、いろんなタイプがありますよね。
テンションの高いものとか。ずっと張り詰めているようなものとか。
暗い水の底のようなものとか。
夏の太陽のように明るく強いものとか。
この本は、雨の一日のようなんです。
沈み行きながらも、優しさがある。
優しい雨。恵みの雨。
水滴。
したたる。
育む。
そんな本でした。
窪美澄「じっと手を見る」
働いて、家に帰って、誰かを好きになって、そうじゃなくなって、でも惰性で一緒にいたりして、やっぱり離れて、また働いて、食事をして、また誰かと一緒にいる。
生きるって、きっとそういうことですよね。
言葉にすると、すごく単純。
たった数行で終わる。
でも、心は違いますね。
傷んだりする。
悲しかったり嬉しかったりする。
寂しかったり安らいだりする。
日常を、できごとで表すのは簡単です。
でも、日常を、こころで表すのは簡単じゃないんです。
「じっと手を見る」は、日常をこころで表した本だと思います。
**「二人とも本当のことを口にしないまま、自分の気持ちを打ち明けるふりをして、目の前の人と別れようとしている。大人はどこまで馬鹿なのか」 **
**「人の体は永遠に繁茂する緑ではない。けれど、永遠じゃないから、私はそれが愛おしい」 **
とても良かった。
私は、この作品が直木賞を取ってもよかったのではないかと思います。
こういう作品が大きな賞を取ってもいいと思う。
雨に沈む休日。
じっと手を見る。
こころのかたちを、とらえてみませんか。
星5。
#じっと手を見る #窪美澄#直木賞候補作