【ミステリーレビュー】密室殺人ゲーム2.0/歌野晶午(2009)
密室殺人ゲーム2.0/歌野晶午
「密室殺人ゲーム王手飛車取り」の続編にあたる、シリーズ第二弾。
1冊1冊で物語が完結して、最新刊だけ読んでも問題ないシリーズものも数多く存在するが、本作については、必ず第一弾から読むべし。
ひとつひとつの事件は単体でも楽しめるし、1冊の中での盛り上げ方も見事なのだが、「密室殺人ゲーム王手飛車取り」のネタバレを多々含んでいるうえ、歌野晶午らしい"読者を騙す"ストーリーについては、第一弾を読んでいないと気持ち良く引っかかることができない。
頭狂人、044APD、aXe、ザンギャ君、伴道全教授というハンドルネームしか知らない5人の登場人物が、交代でミステリーさながらの殺人事件を犯す。
その理由は、現地での探偵活動や、ニュースやインターネットでの情報集めなど、立体的な推理ゲームを行うため。
罪悪感なくビデオチャットで殺人を語らい合う登場人物たちに嫌悪感を抱くが、前作同様、ミステリー愛好家へのアンチテーゼということでもあるのだろう。
おおまかな構成が前作と重なっているのも、わざとだと思われる。
2周目ということで、ひとつひとつの謎については、少し難解になった印象。
リアル殺人ゲームとして書くには、やや非現実的なパズラー要素が強いトリックも多く、各事件の面白さとしては、第一弾に軍配が上がるか。
一方で、やはり継続したからこその面白さというのも代えがたく、殺人ゲームを行っている別グループへの対抗意識や、メンバー同士の関係性を逆手にとったトリックの創出など、2作目だからこそできる工夫も、ちゃんと盛り込んでいる。
前作のオチが良くも悪くも印象的だっただけに、ちょっと終わり方には物足りなさを感じてしまったが、続編に繋げる伏線もあり。
シリーズとしての存在感を高めた1冊と言えよう。
【注意】ここから、ネタバレ強め。
第一弾で死んだはずの"コロンボ"こと044APDが登場してくるので、前日譚か……と思わせて、実際は後日談!ぐらいの仕掛けはしてきそうだなと待ち構えていたのだが、まさか全員入れ替わっているとは。
敬意を表しているとはいえ、キャラクターまで完璧にコピーできるものかよ、と突っ込みたくなるほどのなりきり具合いで、オリジナルパーティーの顛末については、中盤に突然訪れた盛り上がりポイントになっていた。
また、そこで誤認させることによって、"頭狂人"が出題した問題は第一弾を読んでいる読者のほうが解きにくくなっていたのもポイント。
彼を"女性"だと認識してしまうと、フーダニットは絶対に溶けなくなってしまう。
犯人がわかっているからこそ、ベタなトリックに気付きにくいというのは目から鱗。
シリーズを通して新鮮な感覚を受ける最大の理由である。
オリジナルが安否不明の伴道全教授だけは、2代目と同一人物なのでは、なんて推測を立てていたのだけれど、特に触れられず。
それであれば、ラストの伏線。
この少女こそ、属性的に伴道全教授では、なんて期待もしてしまうのだが、相手は歌野晶午だ、一筋縄ではいきますまい。
それにしても、044APDは、安楽椅子探偵として事件の真相を暴きつつ、最後は命を落とすというのが役割化している。
このハードルが高すぎて、3代目を企画しても、044APD役が当面集まりそうもないのでは。
どういう形で進めていくのか、はやく続きが読んでみたいものである。