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もし今死んだら

もし今死んだら、後悔が残るだろうか。
ここ最近よく考えた。


一年ほど前の自分は「残らない。」と答えていたかもしれない。
生きていて楽しくなかったかといえばそうではない。
しかし、生きていく張り合いというものがほとんど何もなかった。
大学生活は2年目を迎え、授業はそれなりにサボれると知ったし、部活でも怖かった4年生が卒業した。
めちゃくちゃダレた。
授業の成績は落ちたし、部活では大きな怪我をして一つも大会に出ることが出来なかった。
そして、何よりも一番焦っていたことは、趣味が何もないということだった。

何も用事がない休日は廃人のようにベッドに横たわり、一日中Youtubeを見ていた。時に風呂にも入らないこともあった。
これは誇張ではなく、本当にスクリーンタイムが24時間だった。
同じチャンネルの動画を繰り返し再生にして流していた。
食べている時も、ゲームをしている時も、寝ている時さえも。
無音が怖かった。
自分の内から絶えず聞こえる不安定な声を聞きたくなかった。
このままではいけないということは分かっていたが、自分と対話することを避けていた。
何もかも上手くいっていない自分と向き合って何かを変えようと考えるよりも、何も変わらず友達や部活の仲間とそれなりに関わって生きている方がはるかに楽だったからだ。
大学に入ってから「思考」というものが苦手になっていた。


昔から音楽を聴くことは好きだった。
前から好きだったアーティスト以外は、耳に入った曲で気になったものを聴くだけであったが、一年前くらいから自分で見つけ出して色々なアーティストや曲を聴くようになった。
能動的に音楽を求めて聴くようになった。
90年代のHiphopを漁り、70~90年代くらいの歌謡曲を漁り、60~00年代くらいの洋ロックを漁って聴いた。その間にエレクトロニカとも出会ったし、邦ロックも聴いていた。
今ではSpotifyのライブラリに約300枚のアルバムがお気に入りとして登録され、毎日自分にとって新しい音楽を聴いている。

先日、部活の後輩と話していて音楽の話題になった。
僕はつい熱くなってしまい長々と好きな音楽を語ってしまったが、後輩は黙って僕の話に耳を傾けてくれて、最後に「めちゃくちゃ詳しくて面白い。すごい知識量を持っている。」と言ってくれた。
この瞬間、僕にとって音楽を聴くことは、胸を張って言えるほとんど初めての趣味となった。


短歌と出会ったのもちょうど一年くらい前だ。
きっかけは、今やありきたりかもしれないが青松輝(またの名をベテランち)だった。
すぐに作ってみたいと思い、去年の夏休み中に初めて作った。
それからしばらく関心は冷めていたが、今年の5月ごろ突然思い立ってまた作り始めた。
だが、すぐに勉強不足だと感じた。なので本を読み始めた。
小説などの本を一冊まともに読んだのは、小学生が最後だったかもしれない。
おかげで読書には苦手意識があり、文章の短い歌集や詩集を少し読んだ。
少し読書に慣れてきた今は、小説にも挑戦している最中だ。
まだそこまで自信はないが、本を読むことも趣味の一つとなりつつある。


ちょっとづつ趣味といえるようなものができてきた僕は、自分との対話を始めた。
きっかけは今年の夏、少しの間帰省したことだった。
やはり実家はすごく快適なもので、居心地が良かった。
その反動か、一人暮らしに戻ってから身の回りのことに手がつかなくなった。一週間くらい廃人のような生活が続いた後、自分と向き合い始めた。

自分が本当にやりたいことは何なのか、この世で何を大切にしたいのか、価値があると考えるものは何なのか。
出た答えは、「知りたいことをなるべく多く知る」ことだった。

その興味の対象は人によって様々だが、人間は誰しも好奇心を持っていると思う。
というか極端な話、この世の人間による活動の全ては好奇心によるものだと思う。
科学において、行けもしない宇宙のことや見えもしない原子や分子を研究することも、芸能人の私生活とりわけ恋愛事情に世間が注目して大騒ぎするのも、根本には好奇心がある。
知らないことを知りたいという欲求は、進化の過程で獲得した優れた機能であると同時に、それは本能であって逃げることはできない
上手く制御する必要がある。

この世で価値のあるものは何もない。
この世界では死んだら骨しか残らない。

ならばせめて、知りたかったことをなるべく多く知ってから死にたい。
自分の知らない感動する音楽や詩があって、それらで感じるまだ知らない自分の感情があることがもどかしい。
今は興味の対象が音楽や文学だが、スカイダイビングやバンジージャンプ、サーフィンに富士山登頂。
やったことがないことは山ほどあって、やってみなければ自分が何を感じるかは分からない。


だから、生きられるならば無限に生きていたい。
僕は今死んだら、必ず後悔する。


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