大相撲九月場所13 竜電ー遠藤
十三日目。優勝争いは実質3名に絞られた。
しかし、その3名とも思いの外あっさりと終わってしまったので、竜電ー遠藤の一番を。
立ち合い。すぐに左四つに組む。
竜電としては遠藤に上手を取られたくない。しかし、遠藤は上手を取れなくても下からおっつけて上手を取るのが上手い。とにかく遠藤の上手を警戒するような意図が伺えた。
同時に右の上手を立ち合いの瞬間から探っていた。
したがって、竜電は右からおっつけて遠藤の左差しを封じつつ、上手を狙い、かつ、遠藤の右の上手から距離を取ろうというねらい。
竜電が上手を取った。どのタイミングで上手を取ったのか分からなかったが、遠藤がおっつけのポジションを取り直そうと右肘を引いたタイミングだったのではないか。この際、右を引くことで、逆の左の上手が近づいたのかもしれない。いずれにせよ、遠藤にとっては痛恨であった。
竜電からすると絶好の体勢。出し投げで崩し、さらに頭をつけることで遠藤の上手から避難する。そのまま横から寄って出た。遠藤の後方に足をつけ、密着した丁寧な仕上げ。美しい攻めだった。
実力者が帰ってきた。横綱、大関陣に絶対的な存在がいない場所というのは不安を覚えるが、誰が優勝してもおかしくないという戦国時代さながらの場所もまた面白い。
話は逸れるが、北の富士氏の解説はやはり面白い。
玉鷲が帰宅直前の宮城野親方に声をかけられるシーンで、実況に、
「こう声をかけられると、気合いが入るものなのではないですか?」
と向けられると、
「うるせえな、と思ってるんじゃないの?」
「早く帰って休みたいものですよ」
との返し。
現役時代は頂点まで上り詰めつつ、比較的好きなことを言いいやすい立場にある北の富士氏は貴重な存在である。苦言も呈すし、褒めもするし、過ちも認められるバランスの良さも好感がもてる。あと何年この解説を聞けるだろうか。
ある種、次代横綱よりも深刻な後継ぎ問題である。