写真を見て小説の序文みたいな文書を書く。 【新潟の雪室の旅行写真】
「ここが雪室でございます。」
係員の男性に案内され、重い扉をくぐり俺は天井の高い空間に足を踏み入れた。
「お、寒い」
詰めた空気が肌を刺し、思わず身振りをする。
今は季節は8月半ば。屋外の気温は25度を上回り、雲1つない青空からは灼熱の太陽光が降り注いでいる。それなのに雪室内の温度計は摂氏4度を示している。室内外での気温差に驚き、慌てて手に持っていた上着を羽織った。何も知らなければ半袖のまま来て後悔をしていただろう。それでも汗ばんだ肌が急激に冷やされ体温が下がっていくのがわかる。
私の反応を見て係員の男性は面白そうに笑った。
「思ったより寒いでしょう。」
係員の言葉に私は頷く。
「はい、雪だけでこんなに冷えるんですね」
「昔から天然の冷蔵庫として重宝されておりました。雪室の良さは温度の変化が少なく、お酒にストレスを与えずに低温熟成することができることです。最近はエコロジーな面も注目をされております。」
私は話を聞きながら、雪室の内を低温に保ち続けている雪の塊にカメラを向けた。フィルダー越しに見る大きな雪の塊は、巨大な白い怪物が横たわっているようだった。毎年捕らえられて、雪室の閉じ込められてしまう怪物。真夏でも温度を低温に保ち続け、人々の生活を守り続けている。
なんだか神話に出て来そうな話だな。そしたらこの雪の塊は神様か。
そんなことをすぐに考える自身の妄想癖に呆れながら、俺はカメラのシャッターを切った。
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*雪室の情報は、「魚沼の里」「雪室推進プロジェクト」のHPを参考にしておりますが、物語は完全なフィクションです。
*写真は作者が「魚沼の里」に行った時に撮影したものです。