『落描きの知的財産権』
バンクシーが、出現した当初は正体不明で神出鬼没、そしてラクガキのメッセージ性の高さに誰もが感動した。
その後、様々な話題を提供し、ニュース性やカリスマ性が相まって、彼の作品の芸術的価値は高まる一方だ。
正体不明でありながら知名度だけは鰻登り。
当然、お金の匂いがする彼の周りには多くの人が集まる。
結果、ビジネス的に見ても、とてもおいしい存在となってしまった。
ところで、2020年に、バンクシーの商標権について欧州連合知的財産庁(EUIPO)は無効とする決定を下したと以前ニュースで見た。
著作者が敗訴する珍しい決定に私も驚いた。
バンクシー側は著作権は当然持っているのだが、やがて時が来れば著作権の権利は消滅する。
今や「バンクシー」と言う名前自体がお金を生み出す打ち出の小槌だ。
そこで見直されたのが商標権だ。
今後、バンクシーの名前で金儲けをしたい人々にとってこちらの方が重要だ。商標権は定期的に更新さえすれば永久に権利を保有できるので、長期ビジネスを考えたらこちら権利は何が何でも押さえたいはず。
その敗訴の大きな原因になったのは皮肉にもバンクシーが「正体不明」であったことらしい。
そして、もともとラクガキは違法性の強いもので、他人の建造物に許可なく描く場合が多く、商業目的で正当性を持って描かれたものではないと判断されたようだ。
この問題についてはバンクシー側も弁護士を雇い、戦っていくつもりらしいが、それを聞いて、
「結局、金儲けか」と正直思ってしまった。
匿名でメッセージだけを伝えようとした純粋なストリートアーチストという評価はどうやら違っていたようだ。
別の視点で捉えたら、バンクシーは優れたビジネスマンだと言える。
彼のこのやり方は自らの商品価値を高め、さらにニュースにすることで全世界のマスコミが取り上げ、最低の広告費で最高の効果をもたらしたのだから。
これが彼の戦略だとしたら、見習うべきビジネスモデルだ。
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