秋田はきっといい日になる(9/19-20)
秋田市千秋公園と横手編(9月19~20日)
ACMFの2日間を終えてたくさんのアーティストとパフォーマンスの芸人さん、こんなに一度に見る機会ってあまりない。インプット続きで頭がパンパンになりそうだ。
この日もにこりさんに便乗、秋田市のホテルまで行くと遠回りになるので最短駅まで同乗させていただきお別れすることになっていた。でも秋田の人は善い人でその中でもこのご夫婦は群を抜いて善人だと少しずつ解ってくる。1時間弱の車の中で話が弾み、お店の場所を決めた経緯、なまはげのおくりものが生まれた経緯など正直真摯に話してくれる。その内に私の耳は秋田のイントネーションが心地よくなり始め完全に聞き手に回っていた。二人ともお話上手である。
標識を見ても地名の位置関係が判らない私は気づいたら宿泊地のホテルの前に居た。途中下車するつもりがホテルに横着けになっていてほんとに申し訳ない。にこりさんの方がここ2週間お疲れも溜まっているだろうに。明日もお店を開けるという。優くんのライブの前後はわざわざお店に寄ってくれるファンも多いからお店を開けないと、と言っていた。定休日は火曜でランダムに月曜お休みにするそうだが今週は火・水の連休を設けている。私は明日は千秋公園近辺の観光、にこりさんはお店を開け、火曜にまた会う約束をして車を見送った。
ホテルは新しく綺麗、ウエルカムドリンクがありがたい。チェックイン後に部屋に入ってエアコンつけて東京から宅配で直送したバッグを解く。どうせ往復宅配だからと余分に衣類を入れていたのでめちゃくちゃ重い。化粧品や薬、ドライヤーなど嵩張り重い物もこちらで送っていた。4泊だから生活しやすいようにテーブル上のセッティングを済ます。
お風呂でほっと一息、出たら涼しい部屋のはずがなぜか暑い。エアコンをつけてあるのに汗が止まらない。エアコンの表記を見たらエラーになっていた。夜中の0時、フロントに電話する。エラーコードを伝え調べてもらったら修理になり翌日にしか業者の人が来ないから今夜は扇風機で凌いでほしいという返事。しばらくしてホテルの人が扇風機を持って来てくれた。エアコンのようにはいかないけど汗は退いた。部屋が満室で移動ができないから明日チェックアウトした部屋をお掃除した後に移っていただくとのことだった。そういえば前にも北海道のホテルでお風呂が壊れていて別室に移動したことがある。その時は一回り大きな部屋を使わせてくれた。こういうトラブルは案外よくあることなのかもしれない。
翌日19日の部屋移動は思ったより遅く午前は待ち時間で潰れてしまった。朝食はバイキングだったのでフェスの疲れを癒すべくゆっくりめに摂り部屋にコーヒーを持ち帰り秋田の地元番組を見ることにした。
前日のテレビでは男鹿フェス、今日のテレビではACMFの映像が映っていた。さすが地元のフェスは注目されている。男鹿と北秋田でフェスが続いていたことを知る。秋田の人はこの秋楽しみが多く忙しい! 東京では多分20~30秒で次の話題に映ってしまうだろうけど秋田のニュース番組では高橋優さんのインタビュー、観客のコメントが多分3分以上流れていた。外に出ていたら見られなかったのでエアコントラブル中の幸いである。11時30分過ぎにドアがノックされホテルの人が現れた。荷物が多いので半分手伝ってもらいお掃除を済ませた別部屋に移動した。その部屋でもう一度バッグの中身をテーブルにセッティングしてやっと外出できる体制になった。
前日のにこりさんの車の中で秋田県立美術館で開催されている藤田嗣治展の話を聞いていたのでまずは歩いてそこまで行った。美術館の前にはミルハスがオープンを控えていて、どうしてミルハスなのか直ぐ解るほどの大きい蓮の池が前面にあった。蓮の花の実物を見るのは初めてかもしれない。蓮の中心(ひまわりだと種の部分)がジョーロの口のように見える。モネの睡蓮どころではない、ぎっしりと生え詰まった蓮池だ。
上に上がると藤田嗣治氏の描いた「秋田の行事」が横長のスペース一面に広がって見えた。それを見上げてずっと眺め、飽きずに中央にセットされた長椅子に座り、またまた左右を眺め観していた。
この作品は平野政吉さんの所蔵物であり平野家の米蔵で保管されていた物で、11月6日まで県立美術館に展示されている。解説では秋田市内となっているがにこりさんが車中で更に詳しく教えてくれたので観たいという興味が膨らみ真っ先にこの作品に向かうことになった。秋田の事は秋田の人が詳しい。これぞ旅の醍醐味となる。ただ聞いていても不確かなことが多くここに書くのは躊躇してしまう。昨夜は疲れている中市内を走らせ駅や市役所、名所などを教えて下さった。米蔵は確か大町というところにあったと聞いたと思う。
作品の同室逆側に藤田氏が描いた美人の奥様、マドレーヌさんを描いた絵が飾られている。どうやら奥様のことが大好きで他の女性は眼中になかったらしい。モデルはすべて奥様でありどれくらい深い愛だったか推し量ることができる。奥様が先に急逝されたあと藤田氏は心痛で筆が止まってしまい、平野氏がマドレーヌさんの鎮魂の為に藤田美術館の建設を勧め、その後藤田氏は「秋田の行事」という大作を描く気持ちになった。そういういきさつは資料にも書かれているので読んでから観ると更にこの作品の重みを感じることができる。
県立美術館を出てすぐ近くのナカイチ4分の3という施設に入った。そこにも「秋田の行事」の4分の1サイズが飾られていて公益財団法人平野政吉美術財団蔵として解説が書かれている。美術館の入館料は1,000円、上階の~子どもへのまなざし~という作品たちも一緒に観ることができる。
美術館でゆっくり観るもよし、ナカイチで買い物のついでに毎回観るもよし、なかなかのスポットだと思う。その後ナカイチの中で観光案内所を見つけ、千秋公園と久保田城のことを聞いた。久保田城の拝観が16時半までだと聞き場所を確認し慌てて公園の方に向かった。
美術館とナカイチを歩いていたら時刻は16時を過ぎていた。前の信号を渡ると右手に蓮池、左手にミルハス、正面の緩やかな坂を上がっていくと千秋公園に入る。思っていたより広い公園は坂や石段があちこちに在って歩行順路というものが無い。孫に頼まれている100名城スタンプがある久保田城御隅櫓は公園北西の隅にある。拝観は16:30までなので急がないといけない。登りが続く道を北西目指して早歩きで行く。北にあがるほど人が居なくなり烏の群れが飛び交っていた。自分が餌と間違われ狙われるのではないかと心配しながら烏がいる道を避けて進んでいく。
登り詰めた場所に御隅櫓が建っていた。あと15分も無いので急いで拝観料100円を払い最上階に上がった。エレベーターがあったらしいが階段で上がる。今まで入ったお城の昔ながらの急な階段をイメージしていたらビルの中のようなよく見る階段だった。上階に上がると東西南北の戸が抜けていて遠くまで景色が見える。座ると心地良い涼しい風が吹き抜けそれまでの汗が一気に退いた。本当はここで30分、いや1時間、風に吹かれながら景色を眺めていたかったがそんなわけにも行かない。閉館まであと5分というところで立ち上がり階段を降りた。
中階、1階は資料館になっていてビデオも観ることができたがそんな時間も無く歩いて一周、展示物を目視しながら出口に向かい絵葉書を買って外に出た。外ではまだ烏が飛び交っていて暗くなった分なんだか不穏な空気が流れている。人が居ない。烏が何か突ついているのが見える。なるべくそちら
を見ないようにして急いで坂を下った。
行きと違う公園の外回りの道を歩いていたら「氷」の幟が見え暑さ回避の為お店に入った。店内は一気に体温がさらわれるほどの低温で氷が食べられなくなりソフトクリームを注文。トルコアイスのような美味しいソフトだった。若い人たちが大きなフラッペを食べているのを横目で見ながら外に出たらまた暑さが一気にやってきて外でフラッペでも良かったなと思う。千秋公園は御隅櫓の他、佐竹資料館、秋田犬ふれあい処、石川達三記念館など観光地図に載っているので次回来ることがあれば公園内をゆっくりと歩いて回りたいと思う。
この後一旦ホテルの部屋に戻って荷物を減らし駅に向かった。トピコという商業施設があり店内を探索。18時を過ぎるとお店に布がかかり店員さんも居ない。何か買いたいと思いキティの金萬を包んでもらった。
駅の散策を続けやたら歩き回るのだけど非効率な歩き方で時間だけが過ぎていく。私がこの時食べたかったのは比内地鶏の親子丼でどこで食べられるんだろうと探していた。お土産物屋さんの偵察もしていたので余計に時間が過ぎた。20時を過ぎると飲食店も片づけに入るみたいで閉店になっていた。東京の感覚で居たので夕飯難民になってしまった。
秋田市での最初のお夕飯は結局持ち帰りのはなまるうどんになってしまった。パンを買おうとしたらパン屋さんもレジ締めを始めていて買えなかった。秋田はすべてが早い。もたもたしていると買えない。次は18時までにどこかに入って食べたい!
夕食のお店探しにうろうろしていたら2015年の秋田フリーライブのことを思い出した。今歩いている場所がそうだ! あの時は駅に着いた瞬間から街のあちこちに笑う約束の幟が立ち、今考えるとナカイチが会場で、ずっと幟は続いていた。秋田の街がとても賑やかでちょっと歩くと竿灯が立っていて私たちを出迎えてくれた。お昼にナカイチに行った時もここで並んだ。ここがステージ会場だった。ここでご飯を食べたと7年も前なのに昨日のように思い出すことができた。あの時の資料館のような場所にもう一度行きたい。あの日に見た高橋優さんが描いたであろう絵がとても好きで今も頭の片隅に残っている。今よく見るイラストとは全然違う上手な絵、私はそちらが好きだ。もう残っていないので記憶の中でしかないけどどこかにあるならもう一度見ていたいなぁ。
ホテルで侘しくはなまるうどんを食べる。テレビでは台風の影響で明日は大変なことになるかもと報じている。沖縄、九州、関西、静岡あたりの被害状況を伝えていて、自分が遊びに行く為に晴れてくれとはとても言えない気分。明日は明日の風が吹く。所詮人間の力なんて微力なんだからこういうことは天に任せるのみだ。明日の予定は明日決まる。
天に任せようと思ったのに夜中の3時半に目が覚めてNHKを点けてみた。最近のNHKはAIに気象予報を読ませているようである程度行くと女性の同じ音声が繰り返されていた。かなり、かなり、かなり前のソフトバンクの総会で孫さんが2040年にAIの数は人間の人口を超えると予測していたけど多分実際はもっと速いスピードでAIが進化し2035年辺りで超えてしまうのではないかと私は思う。その時の孫さんが予測した世の中がどんどん現実になっていて考えられなかったことが今は常識になっている。あと10年経ったらどんな世の中になっているのか凡人の私では到底想像がつかない。
自動音声の台風予報を聞きながらそんなことを考えていた。私の祖母は新幹線を知らない。母は飛行機を知らない。私は何を知らずに死んでいくんだろう、そんなこともふと考えた。逆に子供や孫たちはどこまで知ることができるんだろう。きっと想像をはるかに超えるんだろうね。(注・ここでいう知らないは知っても乗れなかったということです)
余計なことを考えず明日の為に早く寝よう。
20日、目覚めてテレビの台風情報を見ていたらにこりさんからメッセージが来ていた。台風が逸れそうなので大丈夫そうならお昼前にホテルに行くとのことだった。私はこの日ひとりで電車に乗り秋田から横手駅に行き、ローカルで相野々駅に行く予定だった。その話をにこりさんにしたら自分たちも横手に行ったことが無いから一緒に行こうと言ってくださった。ずっとフェス準備で疲れているだろうしせっかくの連休を潰してもらってよいのかと考えたけど結局ご好意に甘えることにした。
台風が酷かったら今日はどうして過ごそうか、JRは走ってくれるのかなんて考えていたので内心すごく嬉しい。でも自分からは言い出せないことだからにこりさんの状況にお任せしようと思っていた。雨は降ってなかったけど早朝まだ風はきつそう。朝食を食べながら道行く人を眺め木々の揺れを眺め、台風が収まるのを願っていた。
いつでも出られる準備をしてスタンバイしていたらもうすぐ着くというメッセージを貰い、慌ててエレベーターで降りて行った。独りだと道順や電車や乗り換えやその先の道中をいろいろ調べて行かないといけないのに車だと電話番号を入れるとナビが案内してくれる。ありがたいことだ。
エアコンが壊れ扇風機で寝たことや藤田嗣治展や千秋公園の話などをしながら車は横手市に向かった。話していると速いけど本当は1時間以上かかっていると思う。私は相野々駅に友人に2度連れて来てもらったことがあって近くになると景色が思い出された。ここ、ここ、ここが相野々駅! っていう感覚だった。前に車を停めて駅に入った。正面に線路。なんだか懐かしい。
左手には村さ来亭さんがある。その入り口には高橋優ファンが寄せ書きをした大きな模造紙が2枚貼られている。メッセージがいっぱい溢れている。
私たち3人が中に入ると3組のお客さんが食事をしていた。2組は食事が終わりお帰りになった。残った1組の中の1人が先日フェスのテントで顔合わせしていたカトさん。そしてカトさんのご友人。(16-19人目) カトさんは高橋優モデルの可愛いマスコットを作りこのお店やにこりさんの店頭にも置いてくれている。
村さ来亭さんは高橋優ファンの聖地かもしれない。というほどデビュー時からの資料にぐるりと取り囲まれている。来店者の寄せ書きノートもある。お昼は2時間しか営業していないそうだけどこの2時間はファンにとっては至福の時間になるんだろう。
私は過去に2度此処に来ているけど1度めはお店の準備時間だった。入って見てくれていいよと優しく奥さんが言ってくれて少しおじゃました。2度目は店内に人がいっぱいでとても注文できないと思いそのまま引き返した。なので来るのは3度目だけどまだお店で食事をしたことが無い。
食べてみたかったのは横手焼きそばだ。昔高橋優さんが笑っていいともに出た時に横手の焼きそばはジューシーで上に目玉焼きが乗っていて美味しいとタモリさんに話していた。それを聞いて関西人の私は焦げるほど炒めた焼きそばしか浮かばずどんなやきそばかいつか食べてみたいと思った。なまはげのおくりものだって食べたいと願ってたら食べられるようになったし、今回のフェスは横手に行って焼きそばを食べる為に延泊し1週間の長旅になったんだからここに来たらメニューに迷うことは無い。焼きそば一択である!
出てきた焼きそばは美味しかった。いつも食べる焼きそばとは違うけどソースがジューシーで目玉焼きもとろーり。お昼だからなのかサラダのお皿もついていた。食べ終わる頃アイスコーヒーまで出てきた。メニューではお代金は440円なんだけどこれで良いんだろうか。。。東京と違いすぎる。
いやいや価格のせいではなく初めての横手焼きそばは美味しく思った。もう食べられないと思うと残念で思わずお持ち帰りはできますか? と聞いてしまった。そしたらご主人(20人目)が奥に行って1人前をパックに入れてきてくれた。
夜はにこりさんが美味しいお店を紹介して下さると聞いてたんだけど、焼きそばの誘惑にはかなわず私はパックを戴いて帰った。
持ち帰りの焼きそばを待っている間に奥さんともお話ができた。にこりさんは奥さん(21人目)に自己紹介をしてフェスで完売だったパッケージをお渡ししていた。にこりさんが私のことも紹介してくれたからちょっとだけ高橋優さんの番組を作らせてもらった話をしてカトさんたちに渋谷のラジオを聴いてくださいとアピールもした。
奥さんからは横手の焼きそばの話を聞いた。元々横手焼きそばはひき肉を使っているけどこのお店の焼きそばは豚肉を使っているので厳密にいうと横手焼きそばとは違うらしい。だから山内焼きそばと呼んでほしいと話してくれた。ご主人に私の為だけにお手数をかけ、パックの焼きそばを戴きお礼を言って外に出た。
私は山内焼きそばが好き。村さ来亭さんが好き。にこりさんが好き。秋田の人が好き。カトさんが私にも高橋優さんのマスコットを下さった。西瓜が付いたマスコット、この旅で初めて逢った人と思わずハグしてしまった。
村さ来亭さんの近くに池があって、そこに山菜恵ちゃんという販売所があって美味しい卵焼きを作るご高齢の婦人が居て、私はその卵焼きをまた食べたかったんだけどそこまで贅沢は言えない。どこにあるのか場所もよくわからないので窓の景色をきょろきょろと見回していた。そうしていると車は山内の道の駅に着いた。
此処があの曲のソフトクリーム巻いてる場所だと思いながらもお腹が大きくてソフトが食べられない。店内に行き地場物を見て回った。前に買ったお菓子が今も売ってたり新しい物が並んでたり。私はお菓子と葡萄を買って帰った。帰りの車中で食事美味しかったねーと話したけど正直自分の焼きそばのことで頭がいっぱいで前のお二人が何を食べたか記憶が無い。でもそっちのメニューも美味しかったということは解った。長年お店を開いているだけあって味は満点、ご主人と奥さんの人柄も素晴らしく行けて良かった。近くにあるなら週一で通ってしまいそうなお店だった。
にこりさんは横手のフレンドールも行こうと思ってたんだけど今日は残念ながらお休みだと。私の為に調べてくれたらしい。お菓子屋さんなのにお菓子屋さんに連れて行こうと思ってくれるにこりさんにも感謝、感謝だ。メロンパン美味しかったもん。前に行ったときに大きな保冷袋を買って東京まで持って帰ったことを思い出した。
一旦ホテルに戻り暫く休んだあとまたにこりさんがお迎えに来てくれて馴染みのお店に連れて行ってくださった。街中のすごく美味しいお店で器も上品で絶対一人旅では見つけられない場所だった。予約もしないといけないだろうし私には勿体なすぎるお店で美味しい食事をいただき2時間、3時間話し続けた。好いお店だったので高橋優さんも絶対来ている、、、はず。
にこりさんの数少ない連休の前半を私のつきあいで潰させてしまったのが申し訳なく、明日はゆっくり過ごしてくださいと言ってお別れした。私はあした男鹿のなまはげを観に行く。電車とバスを乗り継いで山深い里で新たな出逢いがあるだろうか。早く寝て明日に備えなければ。
私の秋田はいい日が続いている!!
秋田はきっといい日になる(9/16-18)|すぎもとかよこ|note