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「タイパ」にこだわると幸せが逃げる

「コスパ(コストパフォーマンス、費用対効果)」という言葉が市民権を得ました。
そしてここ数年「タイパ(タイムパフォーマンス、時間対効果)」という言葉も使われ始めました。
個人的な感覚としてタイパにこだわると幸せが遠ざかるのではないか、と思います。
同じようにお感じの方も多いのではないでしょうか。
ではなぜタイパ偏重が幸せを逃すのかについて考えていきましょう。

■タイパとコスパの違い

コスパとタイパの大きな違いは「即物的かどうか」だと思います。
1,000円で食べられるステーキが500円で食べられるとしたらお得ですよね。
1,000円で100文字の文化評論を読むよりも、5,000文字の文化評論を読む方がかなりお得です。
(そしてなんとこの記事は0円です!コスパが超絶良い!)

ここまで読んで慧眼な読者の皆様はお気づきかと思いますが、「物」に対する費用対効果と「行為」に対する費用対効果は意味合いが違います。
引き続きステーキを例にしましょう。
30分間で食べられるステーキと、5分間で食べられるステーキがあるとします。
あなたはどちらを選びますか?(値段は同じ)
僕だったら30分間を選びます。5分で食べ切れるかわからないし、そもそもステーキは急いで食べたくありません。なんかもったいないでしょう。

続いて文化評論の例。
100文字に要約された文化評論と、要約されてない5,000文字の文化評論。
あなたはどちらを選びますか?(値段は同じ)
急いでる人は100文字の方を選ぶでしょうし、せっかく買うのならばと5,000文字の方を選ぶ方もいるでしょう。

つまり「物」はコスパが測りやすいですが「行為」はコスパが測りにくいのです。
そしてタイパはこの「行為」に関連が深いため「タイパが良い」=「良いこと」とは感じられないのです。

■タイパで何を得るかが重要

2時間の映画を倍速1時間で鑑賞する。
これに対して反対したくなるのは、作品を「物」として見られているからでしょう。
ただ情報を得るためだけの倍速視聴をしている。作品を体験していない。
これらがタイパ反対へとつながります。

サッカーワールドカップ決勝を生で見たことがありませんが、現地で見守るのと現地で結果だけ見るのとでは得られるものが大きく違うでしょう。
本物の『モナ・リザ』を見たことがありませんが、チラ見と30分間凝視するのとでも同じように得られるものが違います。

時間が短ければ短いほど良い。空いた時間を別の事に使える。という考えは一見利口に感じますが、「得られる体験の濃密さ」という観点からすると薄まっているため、反対派からするとどこかもったいなさを感じてしまうのです。

タイパ偏重の「損をしたくない、得をしたい」というこだわりは、「失敗すること」への恐怖が原因のひとつなのではないかと感じます。

■「失敗」はマイナス?

年齢を重ねると失敗から学んだことが活きる経験が何度も訪れます。
そして他人の失敗にも寛容になります。
失敗は、そこで全て終わってしまうようなことではなく、成長するための経験値です。
失敗や損を避けてばかりいると成長できません。
タイパ偏重により人生にとってものすごく意義のある失敗や損を見逃しているのではないか、という懸念があります。
そしてこれは確認しようがありません。
人生に必要なことはコスパのように金額で判断できるような単純なものではないからです。

■幸福度ってどう測る?

タイパにこだわった人たちは幸福でしょうか。
むしろ時間に追われ続けて幸福とは程遠いのではないでしょうか。
幸福度を測る方法はいろいろあるようで、わかりやすいのは「自己決定感」「寛容性」「愛されているか」などでしょう。
果たしてタイパ偏重の人生で自身の幸福度は上がるでしょうか。
もし得をしているはずなのに幸せに感じられないのだとしたら、それはタイパ偏重を見直すべきなのかも知れません。

■まとめ

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