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こたけ正義感の『弁論』の社会批評性の深度について
「こたけ正義感の『弁論』」がすごかった。
2025年1月15日まで無料配信がされていた単独ライブ『弁論』。
弁護士で芸人のこたけ正義感氏によるこのライブは、笑いと社会批判を兼ね備えたものでした。
「すごかった」だけだともったいないほどの上質な体験だったので、文章化しておきたいと思いました。
第一条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
第二項 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。
とある青年のこの宣言から始まる『弁論』は言わば、この第一条と第二項についての社会批評です。
笑いを交えつつ弁護士や検事についての授業という側面があり、そしてクライマックスである「袴田事件」にまつわる冤罪について、観客に再考してもらうという構成になっています。
なぜ『弁論』がここまで胸を打つのかと言うと、こたけ正義感氏の名に恥じない熱き正義感が怒りの熱を帯びて伝わってくるからでしょう。
2022年10月から放送されたドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(渡辺あや氏脚本)でも冤罪事件を扱っていましたが、こちらは報道の是非と我々個人の向き合い方を問う構成でした。
『弁論』も我々の事件に対する向き合い方と、冤罪は晴らすことができるという矜持。そして冤罪は今後起こさないという覚悟が込められているように感じました。
お笑いライブにですよ。
だからこそ痛快で心を打つのです。
「冤罪は遠いお話」ではなく、「我がこと」のように再考できるのです。
我々市民も基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを優先させなければなりません。
そして社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。
そのためには弁護士や検事の力を借りなければなりません。
それだけではなく「推定無罪」の「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」「たとえ100人の罪人を逃したとしても、1人の無実の人物を罰してはならない」という考え方を絶対に守らなければならないのです。
先日、和歌山毒物カレー事件のドキュメント映画『Mommy』が公開され、冤罪かどうかが再び注目されています。
『弁論』のラストにはとある仕掛けが施されていて、この展開がますます「冤罪事件は我がこと」と唸らせるものとなっています。
「こたけ正義感の『弁論』」がすごかった。
すごいだけでは言い足りない。
こたけ正義感氏の熱き正義感が社会を良き方向に変えると信じられるだけの説得力がありました。
そして我々の目を醒ます力強さもありました。
基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること
法律制度の改善
推定無罪
この3つだけでも覚えて帰ってくださいね。
あと『弁論』のすごいところが、お笑いライブとしても面白いっていうところです。
観て損はないどころの話じゃありません。
得しかない。
むしろ社会観が広がる。
快作と言っても過言ではありません。