科学探偵 理路名刹(りろめいさつ)VS呪怨霊能者 利不二寿恩(りふじじゅおん)
「おい!早くしやがれ!」
山中が部下達をどやしつけると五人の若い男達が各々バールやハンマー等の工具を手に取る。
(鈍臭い奴らだ。これだから平成生まれは)
広い倉庫の中には工事用具と一辺1mの立方体のコンクリートブロックと今も音楽を流す古いラジカセしか無い。
「とっととそのコンクリを壊せ!」
それを合図にゴンゴンとブロックに鈍器が叩きつけられる。
(ったく親父も若頭もビビリ上がって情けねえ。そんなわけねぇだろ)
山中は心中の愚痴が止まらない。そもそもは麻薬の密売ルートにマジシャンを利用した事だ。
美貌とナイスバディと派手な奇術が話題で、海外公演もしていた彼女を脅して、マジック道具に麻薬を仕込んで運び屋にした。
そしたら女がしくじってルートが潰れた。だから見せしめに四肢を切断して生きたままコンクリ詰にして工事現場に埋めた。
よくある話だ。極道やってりゃ腐るほど聞く話。
ところが短い間にこの件の関係者が次々と怪死した。しかもかなり酷い死体になって。
(で、組長の命令で俺が埋めたコンクリを掘り出して中を確認する事になったと。やってらんねえ)
大きく伸びをする拍子にふとさっきからラジカセから流れている曲の名前を思い出した。
「ああこれ、オリーブの首飾りだ」
「それで、ここで六人の遺体が発見されたと」
現場となった倉庫の中で理路探偵所の所長、理露名刹は事件のあらましを語り終えた。
「間違いありませんわ。これは怨念による呪殺です」
美貌の霊能者、利不二寿恩が断言する。彼女は魅惑の谷間から扇子を出して開きながら。
「遺体は全てマジックボックスの手品の様に胴体が横にズレていたのでしたわね」
「しかしですね〜」
名刹が困った様に言う。
「そもそも怨念も何も彼女、本当に死んでるんですか?だってほらコンクリ詰にしたって言うブロック、中に誰も居ませんよ」
そこにはコンクリート以外は存在しない、半分くらいを粉々に割られたブロックが鎮座していた。
【続く】
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