ファイブカード+ワン
アイリが死んだ。
彼女は僕の幼馴染みの奥さんで、3人の子供の母。
夫で僕の幼馴染みの親友ジョーは、必然的に幼い三兄妹の世話をしなければならない。でも彼には仕事がある。彼にしか出来ない、彼だからこそ出来る偉大な仕事。
グレイトジョー。宇宙から来た世界最強・最高のスーパーヒーロー。それが僕の幼馴染みだ。
そんな訳で、なかなか家に居られない彼のために、僕が一緒に住んで子供達の面倒を見ている。
なぁに、僕は在宅仕事で時間は有り余ってるし、アイリの弟で、スーパーヴィランのルースも仮出所で家に居るしね。子守なんざちょろいもんよ。
ごめん、嘘言った。子供達はしっかりスーパーパワーを受け継いでるし、ヴィランはやって来るし、ルースはいらん事を吹き込むし、おかげで常にドタバタ騒ぎの3年だったなぁ。こちとら何のパワーも無い一般人だよ、勘弁してくれ。
今はハロウィン、あの世の門が開いて死者が溢れ出した。ジョーは復活したスーパーヴィラン達をあの世に叩き返す為に東奔西走テンテコ舞い。
「なあ、ノエル。なぜあの写真を処分しなかった?」
「したさルース。まさかクラウドを復旧したら残っていたとは思わなかったんだ」
この日、僕はルースと一緒に、クローゼットの中で震える羽目になった。
「ジョー!ルース!ノエル!どこに隠れたぁぁぁ!」
戻って来たアイリにみんな大歓喜していた。去年の誕生日にジョーが美人にキスをしている、あの写真を見つけられるまではね。
「ねえルース、本当にアイリにスーパーパワーは無いの?」
「無えよ!だからマジで!ビビってるんだろうが!」
子供の時から怒らせると恐ろしかったが、今は地獄の悪鬼も裸足で逃げ出す有様だ。
世界を震撼させたスーパーヴィランが子犬のようになる程に。
「ここに居た、小さい頃から隠れる場所は変わらないのねぇ」
扉の前に恐怖が立っている。
今さら、あの写真に写っているのは僕ですと言って聞いてもらえるだろうか……
【続く】