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CXO Night #4「見えない魅力の引き出し方」イベントレポート

こんにちは、のっちです。

9/12にCXO Night「見えない魅力の見つけ方」が開催されました。
前半ではコスメアプリLIPSチームによるリニューアルについて、そして後半はハヤカワ五味さんと龍崎翔子さんが経営している企業での魅力の見つけ方について、お話しいただきました。
デザイナーとしてとても参考になる話が多かったので、今回はそのイベントをまとめていきたいと思います。

togertterまとめは↓

スワンさんのまとめは

全体をみたい方は

LIPSのリニューアルについて

まずは、コスメのコミュニティサービスであるLIPSのリニューアルについてです。このお話は、昨年末くらいからプロジェクトが動き出したとのことで、詳しい概要はこちらの記事に掲載されています。

今回はリニューアルの中心として活動された、取締役の松井さん、iOS・Android両方のUIアップデートを担当された池田さん、ブランド・アイデンティティのリニューアルを担当されたタカヤ・オオタさんがスピーカーとして登壇くださいました。


デパコス層を取り込むために必要だったリニューアル

LIPSはコスメのコミュニティサービスで、ソーシャルに化粧品を探すことのできるアプリ。リリースから1年ほどで100万DL以上を突破しています。

創業してから1年ほどは、サービスをリリースしては失敗し、を繰り返したというAppBrew社。その中で、元々コスメの口コミサイト@cosmeのユーザーだった松井さんが、TwitterやInstagramからのおすすめでコスメを購入するという経験を多くするようになったのがきっかけで始まったのがLIPSだそう。ファッションのコミュニティサービスであるWEARのコスメ版というイメージでスタートしたそうです。

この領域でのプレイヤーは大きいが参入できるかもと思ったのは、競合がアプリではまだ大きく成功していないことが大きかったそう。
それでもリリース当初はほとんどユーザーもいない中だったが、トライアルで使用してもらったユーザーがその期間が終わっても使い続けてくれたり、昨年の春にYoutuberにしてもらったプロモーションで、狙った数字の何倍ものユーザーを獲得して競合を使用していないような層を取り込んでいける自信がついたことで、よりアクセルを踏んで行く意思決定ができたとのこと。

一方で、コスメ業界は10-20代前半に多く利用されている比較的安価なブランド(プチプラ)と、20代後半から利用されるようになるブランド(デパコス)があり、デパコス層を取り込まないとマネタイズが難しくなるという現実があります。
しかし一方で当時のLIPSは比較的ビビッドなピンクで中高生に受けるデザインになっており、デパコス層を取り込みにくいと感じたそう。狙っているターゲットと現状のデザインを冷静に見たときに、リニューアルの必要性を感じたということでした。

ちなみにリニューアルの必要性を感じていたのは松井さんだけでなく、代表や他のメンバーも共通で感じていたようで、その意思疎通が今回のようなスピーディーなリニューアルに繋がったのかなと感じました。

Twitterでタカヤさんを追っていたという松井さん。タカヤさんが手がけられたPKSHA Technologyのアウトプットを見て是非ともお願いいたいとなり、イベントで声をかけて話を持ちかけたそう。

一方タカヤさんは「こういう人と仕事がしたい」という自身で立てられた目標のなかにLIPSが入っており、スムーズに話が進んでいったとのこと。魅力的な経営をしているとこういうメリットもあるんですね...。

社内リソースに空きが無いためUIデザインに関しても依頼したいと思っていたときに、タカヤさんに紹介してもらったのが池田さんだったそう。
タカヤさんと池田さんはプロジェクトを一緒に進めるのは初めてでしたが、仕事の領域をスムーズに区分けし、それ通りにプロジェクトを進めることができたとのこと。この辺りからもプロフェッショナルな2名の姿が感じられます。

今までの人にもこれからの人にも愛されるLIPSに

タカヤさんが感じたのは、LIPSユーザーの熱量の高さ。
そこでタカヤさんが目指したのは、
今までLIPSのことが好きだった人がもっと好きになり、
前だったら「私のものじゃ無いな」と思っていた人が「私のものかも」を思ってもらえる
、そんなCIだったとのことです。

プロジェクトの進捗としては、最初に松井さんがタカヤさんに声をかけたのが昨年の12月。そこからプロジェクトが本格稼働する1月末までにある程度のリサーチを進めていったとのこと。
プロジェクト開始のミーティングでは、リニューアルの目的が明確であり、タカヤさんが以前女性向けのサービスを手がけていたこともあって情報共有はスムーズに進んだそう。この辺りは情報共有の仕方や協業する人を選ぶ時の参考になりますね。
そのあとは毎週アウトプットして行くくらいのスピード感で制作に取り組んだというタカヤさん。
「今までのユーザーもこれからのユーザーも好きになってくれるか」という視点で、LIPSのモチーフであるシカを使用したもの・しないものをそれぞれ作成し、2-3週後には、最終的なアウトプットに近いCIの大枠が決定していたそうです。恐るべき速さ…。

当初の予定では2週間という衝撃的な短さでUIリニューアルを依頼されたという池田さん。そしてそれを間に合わせるというプロ根性。完全に見習いたい。

UIアップデートに関してはタカヤさんのBIと一部同時に進んでいたため、後々カラーなどが変更になってもいいシステムにしていたそう。また、コンポーネントの柔軟性を徹底しており、どんな変更があっても数回のアクションでリデザインできるような構成にしているとのこと。勉強会開いてほしい....。

sketchのコンポーネントやスタイルを使いこなすことで、
エンジニアさんとのコンポーネントの名前という共通言語を持つことができ、「新しいページは〇〇のコンポーネント、マージンはいつもの通りで」のような会話で新しいページができるようになった
新しく入ったり経験の浅いデザイナーさんでも新しいページをデザインできるようになった
などのメリットがあったそう。

よくここで問題になるのは、
『デザイナーが独自につけた名前がエンジニアさんに使われず、結果として共通言語をもつことができない』という問題ですが、
池田さんの場合、数多くの案件をこなす中で、エンジニアさんに親しみのある名前のつけ方を体得しており、その感覚をつかんでいるとの事。勉強会してほしい...

データから出てくるユーザーをもとに施策をつくる

松井さんが大切にしているのは、データ分析に時間をしっかりとっているところ。

LIPSでは明確にペルソナ像は立てておらず、「自分たちの思うユーザー像」のようなものは持っていない。その代わり、「データから出てきたユーザー像」をしっかりと分析し、それに対して施策を打つようにしていたとのこと。

今はインタビューは重点的に行っていないが、「データから出てきた(定量的な)ユーザー像」に対して定性的なインタビューをすることで、「ここのデータってどうしてこんな風になっているんだろう?」という検証をやっていきたい、というのがこれからやりたいことということでした。

ここまでが前半の本編。最後に質疑応答です。

タカヤさんへ:リサーチのプロセスの中でこだわっているプロセスはありますか?

タカヤさん:自分が思うサービス像はあてにしない。今回であれば、自分が思う「LIPS」像をあてにしない。コスメだけでなく、音楽、ファッションなど、そのユーザーを取り巻く環境をとにかく洗い出して、その中で好まれているデザイントーンやトレンドになっているカラーを見出して行く
今回は、LIPSのピンクに少し紫を足している。それは、1年単位で色を観察していると、2-3年前に使われていた「ザ・ピンク」ではなく、より中性的なピンクが使われていることに気づいたから。そのような形でリサーチを実際のアウトプットに活かしている。

松井さんへ:どうして有料モニターやYoutuberの起用というPR戦略をとったのですか?

松井さん:一番最初のユーザーなので、密に連絡が取れる人がいいと思ったから。
Youtuberに関しては、FacebookやInstagramerなどを考えたが、
・Facebookは既存のプラットフォームで新しい層を狙うにはコスパが悪い
・動画での紹介をLIPSのコミュニティ内で行うのはこのサービスにぴったりだと考えた
・当時まだYoutuberを起用するという戦略を他があまりとっていなかった(のであまり価格も高くなかった)
などの理由があった。

タカヤさん:トレンドが速く移り変わる今、自分のデザインの寿命について考えたことはあるか

タカヤさん:基本的にCIはサービスが生きている間は使われて行くことを前提に作って行く。
しかしビジネス的に他の層を狙いたいという思いやブランドを刷新したいという場合もあるので、その時まではしっかりと持つような設計にする。
今回のLIPSは、20代の女性を対象としているが、20代後半以降も対象となっていった場合は、よりLIPSというブランドが象徴的になったり、洗練されたイメージを持つ必要があったりという可能性が出てくる。そういった場合にも段階的な変更で長く使っていけるようなCIを目指して設計した。
スタートアップは流れが早く、その時その時でUIを変更して行く必要性を持つ一方で、「何を変えないのか」という一見矛盾する問いを持ちながら、ブランドとしての資産を継承していきたいと考えている。

プロフェッショナルなLIPSチームだからこそできたクオリティ

LIPSチームは、タカヤさんや池田さんのような外部からのクリエイターが独自のプロフェッショナルなこだわりを持ちつつ、明確な納期と目標を共通意識に持って持って挑んだからこそ、
『既存ユーザーを活かしながら新しいユーザーを巻き込んで行く』
『どんな変更があってもどんなデザイナーでも柔軟に対応できるデザインシステムをつくる』
という難しい課題を、高いレベルで解決することができたのだろうと感じました。
また、松井さんを含めた経営陣が明確な目標を立てて迅速に共有したからこそ、このコラボレーションを生み出されたのだろうと思います。お三方は本日初めて3人で顔を揃えたらしいですがとても良好な関係そうで、プロジェクトがうまくいったことが伺えました。

お三方ともデータ×デザインという視点でLIPSはとても学びの多い場所であると話していたので、もし興味ある方はお話ししに行ってみてはいかがでしょうか?


続いては後半戦、株式会社ウツワのハヤカワ五味さんとL&G GLOBAL BUSINESS, Incの龍崎翔子さんの「見えない魅力の引き出し方」です。同い年のお二人同時の登壇は初めてとのことで、とても貴重な共演でした。

五味さんは高校生の時からアクセサリーやタイツを始めとした制作を始め、現在はランジェリーブランド『feast』やワンピースブランド『ダブルチャカ』を立ち上げている経営者。

龍崎さんは「ソーシャルホテル」というテーマで全国5店舗のホテルを経営しています。ホテルを「コンテンツが入る箱」として捉え、その箱と地域の特色を織り交ぜ、その地域をプレゼンするような感覚で、事業を営んでいるとのことです。
最近ですと、『平成ラストサマー』というイベントが話題。

伝わりやすい仕掛けを生み出すには

まず話に上がったのが、若い子に広がりやすくするためにどのような仕掛けをしているのか。

龍崎さんのホテル「HOTEL SHE, OSAKA」ではクリーム色にラベルを一本だけ通した壁が前面に配置されており、インスタ映えを狙い過ぎない撮影スポットを用意しています。
いかにも「ここで撮ってよ!!」のような空間ではなく、「ここで撮れるんじゃない?」のような、撮る側に発見と想像力を持たせることが、伝わりやすさの一助となっているようです。確かに↓みたいなとこで撮ってるのちょっと寒い感じわかる。

また、ホテルって「豪華!!」とかでもない限り他の人に伝えることもないので、人に伝えるための要素を与えないと広がらないと考えたそう。

そのために必要だと考えたのは大きく二つ。
①説明した時に「面白い!」と思ってもらう意外性
②簡単に説明・理解できるわかりやすさ
これを実現するために、例えばレコードプレーヤーを全部屋に置いて「ホテル面白かったよ、レコードプレーヤーが部屋にあったりして」など、他の人に伝わりやすいように工夫しているとのことでした。

五味さんもSNSでの伝え方にも徹底的な分析を入れており、自分の発言でも、ブランドの発言でも「狙った層にきちんと伝える」ための技巧を凝らしているとのこと。
この画像でもわかるように、「こういうとこがいい!」と人にすすめやすいような情報設計にすることで、人から人に伝わりやすいように意識しているのだそう。詳しくは有料noteをcheckです!

五味さんからすると、ファッション業界においてはブランドの立ち位置が変わってきているのだそう。
これまでは「説明しないけど伝わる」のがブランドの役割だったが、そのスタンスで伝わる層が減っている今では、「このブランドはこういう良さがある」ということをその人が理解し、他の人に伝えるサポートをしてあげるまでがブランドの役割なのではとお話しされていました。
名探偵コナンのように、
・リテラシーがない人でもアクションシーンで楽しく、
・ハイリテラシーの人でも推理して(ディティールを読み解いて)楽しい、
のような立ち位置をfeastが築けているのが成長の強みなのでは、という話が面白かったです。20年以上経っていまだに興行収入を更新し続けるコナンの理由がわかりました。


現地の空気感を体現することで伝える

龍崎さんは、ホテルを作るにあたって、現地の空気感を取り込み「その街をプレゼンする」ような感覚を大切にしているのだそう。
HOTEL SHE, OSAKAがあるのは弁天町。高層ビルがあったり古い工場があったりと、デジタルとアナログが合わさる街。
その街をどのように表現すると、弁天町を表現することができるのか。その表現手法のひとつとして各部屋にレコードを配置するという方法をとったとのこと。

龍崎さんは「ホテルに宿泊する人以外はホテルだと思ってもらわなくてもいい」と考えており(HOTEL SHE, OSAKA では外装にHOTELの文字がない)、ホテル内に地元の人が気軽に入れるようなカフェスペースを作っています。ここでもホテルを「コンテンツが入る箱」と考えてホテル自体の役割を変えることで、旅行者が重要視している「現地の人との交流」を生みだし、その街の雰囲気を感じやすくしています。

また、オープン前のホテルの魅力を伝えるためにも工夫を凝らしていました。
ホテルは通常、完成するまでその部屋の様子を見せることができず、そのホテルがどのような雰囲気でどんなことを伝えたいのか、ということが伝えられません。確かに建築中のホテルのPRなんてなかなか聞かないし、オープン前から話題になることはなかなかありません。
そこで龍崎さんは、建築途中のホテルの中にベッドを置き、モデルと撮影を行うことで、建築途中だが、このホテルがどんな世界観なのか、どんなことを伝えたいのかを表現しました。これは魅力的。

このことによってホテルは建築中から話題となり、様々な媒体からの取材依頼があったとのこと。
実物を見せられなくても、空気感を伝える。まさにホテルを「宿泊空間」ではなく「コンテンツが入る箱」と捉えているからこそできるPR方法だと感じました。

大人の原稿執筆パックの作成背景

次はバズったこちらの企画について。

このアイデア、なんとなく思いついてサクッと投稿した感じありますが、背景には湯河原、そして「温泉」に関する龍崎さんの考えがあったのだそう。

ハレの熱海、ケの湯河原

熱海と湯河原、電車で10分とかからず移動でき、景色もできることもあまり変わらない。でもこの二つには何か違いがある。
湯河原にホテルをオープンする運びとなり、湯河原はどういうイメージなのか?をリサーチした龍崎さん。
そこで出てきたのは「不倫旅行」というイメージ。文筆家が執筆のためにひっそりと通っていたという事実もあり、湯河原はひっそりと佇むお忍びの場所として認識されていることを掴みました。つまり熱海が新婚旅行や社員旅行などで利用されるハレの場所であるのに対し、湯河原はケ(日常)の場所である、というインサイトを発見します。

「休暇をとる」と言いにくい日本

もう一つ龍崎さんの頭の中にあったのは、温泉って今の人たち行かないよねという話。背景にあるのは、「温泉」=「休暇」で、忙しく働く人たちにとって、なんとなく「温泉に行く」=「休暇をとる」ことに後ろめたい気分を感じているからではないか、と考え、なんとかしてこの概念を変えることはできないかと考えます。

「消費」を「投資」に変える原稿執筆パック

そこで生まれたのが原稿執筆パック。
今までの「温泉に行く」=「休暇をとる(消費活動)」という考えではなく、「温泉に行く」=「仕事を進捗させるための投資」と捉え直すことで、「温泉」にポジティブなイメージ(自分にも周りにも)を持たせることに成功。
また、「原稿執筆」というワードを当てはめることで、ケ(日常)の湯河原を体現しています。「缶詰で作業」とか「リサーチ」とかじゃないところがいい。

ここまでくるとただその場で温泉に入って仕事する、というだけでなく、宿全体の雰囲気や、提供したいものがしっかりと伝わってくる気がします。
元はTwitterのリプライできたようですが、ここまで龍崎さんが考えていたからこそ、一本の線に繋げて実現できたアイデアなのだろうと思いました。

『思っていると思うこと』と『思ってること』は違う

ユーザーの声を拾って実現して行くのが上手い五味さんは、どんな考えを持ってユーザーの声を活かしているのか。
彼女が話していたのは『思っていると思うこと』と『思ってること』は違うということ。

ユーザーが「〜だと思う」と話すことは、ユーザーが『思っていると思うこと』であり、とても表面的な思考である可能性が高く、本当に『思っていること』であることは稀(特にファッション業界では顕著だそう)。

本当に『思っていること』を掴むため、五味さんは普段からまるでイタコのように相手に感情移入し、自分と相手の考えを同化することに重きを置いているとのこと。それは仕事モードの時だけではなく、ご飯を食べたり喋ったりしている時から意識しているのだそう。これはすごく大切な視点ですね。

デジタルな領域においては、『行動しているデータ』が比較的取りやすく、実際に行動に移しているものは本当に『思っていること』に近いです。
なので、そのようなデータを積極的に集め、『思っていると思うこと』と区分けして考えることができれば、よりインサイトに近い着想を得ることができたり、説得力を持ったプレゼンをすることができるのでは、という話もしていただきました。

ホテルがあることで地域が潤い、それがホテルに還元される

次の話題は『夜遊びパジャマ』の話。

ホテルという特性からすると、その地域に魅力があれば、最悪妥協の選択肢としてもホテルが埋まりやすくなったり他社に譲渡しやすくなり、ビジネス的にメリットがあることが多いのだそう。
一時期繁盛していたが寂れてしまった温泉街は、その街のホテルそれぞれが巨大化してホテル内で宿泊体験が完結してしまってその地域を楽しむことをしなくなったため、ユーザーの興味が他の地域に移ってしまうと途端に魅力が落ちてしまったのが理由と考えられています。
そのため龍崎さんのホテルでは、そのホテルがあることで地域が盛り上がり、潤うような仕組みづくりに取り組んでいるとのこと。

例えば夜遊びパジャマ。超売れててビビる。

泊まりに来たお客さんに街に出て欲しいと思った時に、ハードルになるのが服にあるのではと考えた龍崎さん。確かに一度着替えちゃうと外に出にくいし、見た目に気を使う女性であればなおさらなのかもしれないです。
それではその内と外の境界を溶かすようなものを作れば、そのハードルを下げられるのではと考えて作ったのがこのパジャマ。

このように、地域に人が出て行かないと街が潤うことはないという問題を、独自の仮説からパジャマという解決策を考案し実現する龍崎さん。課題解決と独自の仮説のバランスがとても優れていると感じました。

アイデアを言語化するためのメンバー構成

独自の仮説やインサイトを元にオリジナリティのある企画を生み出して行く2人。でも社内に1人ではこのような優れた企画を生み出すことはできないはずで、どのようなメンバーと企画を生み出しているのか、という坪田さんの問い。

龍崎さんは、周囲のマネジメントメンバーと1対1で話し、それぞれと話してよかった部分をまとめてドン!と企画を出す形。意思決定は龍崎さん自身がやっているが、周りの人も納得感のある企画に仕上がるようです。

五味さんは、自身のポジションを「編集者」と特徴づけています。様々な方向から立ち上がって来た企画を対話によりブラッシュアップし、ブランドのストーリーに乗るように合わせて(トンマナを合わせて)リリースすることで企画を生み出しているのだそう。

お二人とも、独自の感性を活かしながら、組織で企画を作って行くメリットをうまく享受している印象を受けました。

また、「五味さんはどこまでデザイン面で手を動かしているのか?」という質問に対しては「今はほとんど手を動かしていない」とのこと。
自らのデザイン理念を言語化し(四半期レベルで修正)、企画段階(判断基準の決め方)や最終意思決定の部分でデザイナーと綿密にすり合わせることで、デザイナーのセンスを活かしつつ、ブランドの指針やクライアントの意向に沿ったプロダクトを作成できているとのこと。

重要なことは、自分たちとバイブスが合う(感性が合う)人と仕事をすること。ホテルとして進みたい方向だったり、「かわいい」の基準だったりと、見ているものは違いますが、いずれにしても一緒に事業をする上で譲れない部分を無意識レベルで共有できている人と仕事をすることが、優れた企画を生み出し続ける上で必要なことだと感じました。

ちなみにこちら、話の中で出て来たCX DIVEの五味さんの講演まとめ。読んだんですけどめちゃくちゃ面白かった。必見です。

今実現したいことは?

自己紹介から盛り上がりすぎて50分経って全くQが進んでいなかったという後半戦(ただQ1-4の話をうまく散りばめていたので坪田さんすごい...)。

残り5分となったので、最後のQとして『今実現したいこと』について。

龍崎さんの会社が思っている『幸福な社会』は、『選択肢の多様性に溢れている社会』自己のアイデンティティは選択によって生まれるため、選択肢が多様である社会は、自分自身を形作りやすく、自己実現がしやすい社会であると考えています。
なので、ホテル以外でも、選択肢の多様性を引き出すことのできるようなプロダクトやサービスを作っていきたいとのことです。

五味さんは、コンプレックスは『社会から求められていると感じることと自分のギャップ』から生まれるのではと考えています。それであれば、社会から求められると勘違いしているものがなくなればコンプレックスはなくなって行くはずなのでそこを解消していきたい。
また、売り上げを伸ばして行くためにはマスに向けて売って行くかニッチなまま攻めて行くかを考えなくてはいけないが、コンプレックスの解消を考えたときに、マスに攻めるのではなく、ニッチなまま海外に市場を広げて行くことが最適なのではないかと考えているそう。そのために中国語を勉強し、中国への市場調査を繰り返しているそう。これからの海外進出が楽しみです。

以上が、後半戦のメインでした。質疑応答は後ほど追記します。

感情移入→言語化→拡散→実現化のプロ

後半の五味さんと龍崎さんはとにかくたくさんの視点を与えてくれたと思いましたが、個人的には感情移入→言語化→拡散→実現化の方法がとにかく洗練されていて、かつとても大切にしているのだなと感じました。
相手に徹底的になりきることで感情移入し、身の回りのバイブスの会うメンバーと言語化し、SNSを駆使して拡散して評価を集め、クラウドファンディングなどで実現する。この一連のプロセス全てのレベルがとても高く、また全ての中心に『伝える』ということがあるからこそ、この行為を大切にし、独自の方法を磨いているのだと感じました。
状況が違えば使うツールや手段は変わるかもしれませんが、この一連のプロセスを磨くことが、優れた企画を生み出す原動力になると感じました。

それではまたよろしくお願いします。

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