見出し画像

サービス紹介のパンフレットよかったデザインまとめと考察

こんにちは。のっちです。
現在企業向けのSaaSのデザインに携わっており、その一環でWeb販促EXPOというイベントに参加しました。

Web販促EXPOは、企業向けの業務改善ツールが一同に介して、来場した方に対して自社のツールをPRするイベントです。

250冊ほどパンフレットをもらったのですが、全くもらってもらえないパンフレットや、もらって速攻で捨てられるものを見て、なんだかやるせない気持ちになりました。
サービス紹介のパンフレットに携わる機会のある方は多くいるのではと思い、今回はイベントのパンフレットが果たすべき役割を考えながら、含まれるべき要素、最後に良かったパンフレットの紹介をしたいと思います。

WEB販促EXPOとは

Web販促EXPOについて、もう少し詳しく説明します。
前述しましたが、これは企業の業務を改善するツールなどを告知するイベントで、東京ビッグサイトでやっている、こんな感じのやつです。

いろんな会社が自社のサービスをPRしており、3日間の来場者は来場者は6万人にも及ぶという、人多すぎてやばいやつです。
よく知られている企業ですと、
- 顧客管理のsansan(eight)
- 営業生産性を改善するsalesforce
- 見込み顧客に対するマーケティングのマルケト
などでしょうか。

様々な企業が出展しているため、配られる資料も多種多様です。
- 紙1枚のチラシ
- 簡単な会社概要
- (リアルに)100ページくらいある会社説明
- 使い方マニュアル
などなど。速攻で捨てられているものも数多くあります。

自社のブースで話を聞いてもらおうと企業があの手この手で駆け引きをしてしのぎを削る3日間です。

まず考えるべきこと:みんな「情報収集」でしか来ていない

イベントというものはほとんどそうなのですが、やる気(買う気)で来場する人なんてほとんどいません。もしそうだとしたら直接会社に営業マンを呼びます。

実際にイベントの休憩室で来場者の話を(盗み)聞いていると
1、何かしらの課題感を抱えている
2、けど具体的な解決方法がわからずイベントに来ている
というマインドで来ている人がほとんどでした。
(もちろん契約につながる可能性があるので重要なイベントであることに変わりはありませんが、ここから即契約!ということはほぼない、ということです)

1、の程度は会社ごとに違いますが、喫緊で迫っている課題がある、というよりは、ほんのり「営業の生産性が上がるといいな」くらいにしか思っていない、と考えている企業がほとんどでしょう。

「うちのサービスに興味あるでしょ!」という気持ちでイベントを運営するのは、営業トークをする人としては良いのかもしれませんが、少なくともパンフレットを作っている人は同じ気持ちでいてはダメで、見る人のほとんどは「課題感はあるが情報収集をしている」ということを冷静に考えておく必要があります。

「いつか生まれる必要性」のために何ができるか

そんな方々が本気でサービス契約の検討を始めるのは会社の重要課題の解決を迫られ、必要性に駆られた時に他なりません。それは次の月かもしれないし、半年後、1年後かもしれません。いつ必要になるかわからないけど、いつか生まれるかもしれない。そんな状況において、パンフレットはどんな役割を果たすのでしょうか?
ここでは3つの目的を考えてみます。

イベントに参加した人の記憶に残るために

サービスの必要性が生まれた時、まず思い出す可能性が高いのはイベントに参加した社員です。しかし、その人はイベント内で何十社の話を聞いており、どの会社がどのサービスだったか、ほとんど覚えていません
そんな時にパンフレットが手軽にサービスを思い出させてくれれば、数十社あるうちの、記憶に残っている数社に確実に残ることができます。
しかも、休憩や食事中、帰り道などで同僚とイベントについて話す時、パンフレットが的確にサービスのポイントを伝えてくれれば、同僚の印象にも残りやすくなります。

イベントに参加していない人に知ってもらうために

他にも、イベントに来ていない人へ伝える役割もあります。
会社の時間を使用してイベントに参加すると、何かしらを持って帰る必要がありますよね。
上司や周囲の社員から「今後に活きそうなことあった?」と聞かれたとき、パンフレットが簡潔に内容を伝えてくれるものであれば、「このサービスよかったです」と言ってそれを渡すだけで、イベントに行っていない人にもすぐに知ってもらうことができます。
イベントに参加した人からすると数多くあるうちの1サービスですが、イベントに行かずに話を聞いた側からすると、彼らが聞いたサービスはここで話されたサービスだけになるので、特に記憶に残りやすくなります。

長く記憶に定着するために

いつか思い出されるまでの長い期間の記憶に残るためにも、パンフレットが役割を果たす可能性があります。
これは会社によりますが、このようなイベントがあった際にもらった資料を、休憩スペースや通路など社員が使用するスペースに置いておくことは多くあります。そこで社員の視界に入ったり、時間がある時に目を通してみたりすることで、イベント当日だけでなく、そこから長い期間社員の記憶にとどまる可能性があります。
また、それまでそのサービスのことを知らなかった社員も、その場所にパンフレットが置いてあることで、新しくサービスのことを知る可能性があります。

もちろん営業電話はメールなどのフォローもあり、パンフレットだけで終了するコミュニケーションは少ないと思いますが、以上のような3つの点においては、パンフレットが果たす役割は大きいと思いますし、作る時にはこのような役割を持っていることを念頭に置いておく必要があると思います。

では、パンフレットには何が書いてあるべきか

ここまで、「情報収集」で来た社員に対してパンフレットが果たすことができる役割を考えてきました。
それでは、その役割を果たすために、パンフレットはどんな要素を備えているべきでしょうか。

①利用シーンが瞬時に思い出せること

これまで考えてきたように、パンフレットが役割を果たすのは数ヶ月先の重要な課題が生まれた時です。その時に「名刺から新しい顧客を発見するならSansanかな」のように思い出されるためには、「どんな時に価値を発揮できるのか」を一番に印象付ける必要があります。

そのためには
・「こんなお悩み抱えていないですか?」というペインの例
・「こういうことがしたい場合はこのサービス」というニーズの例
・提供サービスの利用例
など、いろいろな方法がありますが、その中で自社に適切な方法を使って、「こういう課題を解決したい時には○○を使うと良さそうだな」と認識させることが重要になります。

②他とどう違うのかがわかること

利用シーンを思い出してもらったあとは、「その中で、このサービスがどんな位置にいるのか」がわかることが大切です。

これは、もちろん「〜のNo.1!」という形で語られることもあるでしょうし、「こんな企業に導入されている」と見せることで「大手企業が多く使用しているんだな」「金融系に強いんだな」などとアピールすることもできます。

「強み」という言葉ともほぼ同じだと思うのですが、ここの印象が「競合他社でもできる」ようなことだと失敗します。(細かく見ると違うんだけど...というのは、見る側はそんな部分まで見ずに印象で決めているのでNGです)

「〜の利用シーンの中で、このサービスはーーのような位置付けにあるのだな」という印象を与えることができれば、上で書いた役割は果たすことができるのではないかと思います。

③シンプルであること

最後が最も難しいことだと思いますが、極力情報を削ぎ落としてシンプルにすることです。
シンプルにするということは残った情報のメッセージ性を強めるということです。パンフレットの場合、考えて来たようにどのくらいあとに「ああ、あのサービスあったな」となるかはわかりません。その時に思い出されるのは一言二言くらいで、それは前述の①②に集約されます。
なので、①②のための情報以外は極力排除して、それを目立たせるシンプルさが必要となります。

ここは企業向けサービスの難しいところだと思うのですが、競合他社とじっくり比べられた時に「機能の豊富さ」「アピールポイントの豊富さ」が導入の決め手になるのでは、という思いからできる限りの情報をパンフレットに詰めこむという考えも理解できます。
しかしパンフレットだけで導入が判断されることはまずあり得ないので、その場合は「Webサイトへの導線を増やす」「詳しいサービス説明を別途用意する」などの対策をすると良いのではと思います。

それではここから、こういった観点で見た時にいいなと思ったパンフレットを紹介します。

よかったパンフレット1:Yappli

自社アプリ作成サービスのYappli。見開き3ページの簡単に目を通せるパンフレット。

開くとまず①どんなアプリが作れるのか、そして②登録企業数や利用している業種がまず目に入ってくるので、利用シーン、そして幅広い業種が使用しており「自社でも利用できるかも」ということがすぐに理解できます。
さらに読み進めるとヤプリについての詳細な説明と特徴となる機能が書いてあります。
利用シーンや他との違いがわかり、シンプルに落とし込まれているなという印象を受けました。

よかったパンフレット2:Net Protections

決済業務サービスのNet Protections。
シンプルな見た目ながら、開いてすぐ①「決済業務のフルアウトソース」ができること、②ユーザー数や流通総額や導入企業がわかり、利用シーンの認識や他社との違いがとてもわかりやすいです。
その後には、C向け、B向けのサービス説明が記載。どちらも同じレイアウトながら色を使い分けており、内容が理解しやすくかつどちらのサービスの説明なのか簡単に認識できます。

よかったパンフレット3 : ミュゼマーケティング

美容サロンミュゼプラチナムのユーザーを使用した女性マーケティングサービス、ミュゼマーケティング。

紙1枚のチラシでありながら、①「あなたのサービス、女の子に届けます」というメッセージが利用シーンを想定しやすく、②「年間350件以上のプロモーション」「40万本」「500台」など、パッと見ただけで差別化ポイントを理解することができます。一番下には「こんなお悩み解決!」としてニーズを明示しており、表を見るだけで十分なインパクトを感じます。

裏面には表をより具体的なデータやサービス内容で表示して説得力を持たせ、さらにサイトや紙媒体のダウンロードのQRまでついているということで、紙1枚だけどイベントのパンフレットとしては完璧だ...と思いました。もっとお金かけたやつ見たかったです。笑

ちなみにミュゼマーケティングのイベントブースも、狭いながら印象に残りやすい工夫がたくさんあって、デザイナー視点では全体の中でダントツ良い印象を受けました。

よかったパンフレット4:ラクスル


印刷サービス・広告サービスを提供しているラクスル。

総合的にサービスを提供している会社は、その広さから利用シーンを特定させにくいですが、『ラクスルで「楽」できている会社が多くあります。』とまず伝えることで、とにかく「楽」したい時に使って欲しいということがわかります。

このように、特定の業務の中でも特にこんなとき(デザインに凝るよりとにかくラクしたい、など)に使って欲しい、を伝えることで、広くサービスを展開している企業も、効果的に利用シーンを想像させることができます。

裏面では詳細なサービス内容とその価格と効果について書かれており、ここまで紹介したパンフレットと比べてみても「コスパ」感が表を見ただけで伝わってきます。


よかったパンフレット5:XROSSING

販促×ブランディングのXROSSING。

「ブランディング」というとかなり範囲が広いイメージがありますが、Web販促EXPOの中で「ブランディング」を押し出しているところは皆無だったため、『販促×ブランディング』にするだけで、見る側の注目度を集めやすかったのだと思います。同時に自社の実績を掲載することで、シンプルですが、利用シーンが想定しやすく他社との違いを感じることができるパンフレットとなっていると思いました。

よかったパンフレット6:FORCUS


B2BマーケティングのFORCUS。Newspicsを運営しているユーザーベースのグループ企業です。
ミニマルでシンプルなデザインになっており、ユーザーベースっぽくて(?)ビジュアルとしては1番好きでした。

情報の内容としては、「データ分析を軸にB2Bマーケティングを推進」というワードをまず使用していますが、そういった企業はかなり多くて利用シーンが特定しにくいなーと思いました(デモを使用すると「この機能すごくいいのになんで書かないんだろう...」的な機能があった)。
また、情報はまとめているが量が多くシンプルさにかけるため、結果として印象に残りにくいと感じました。デザインは勉強になるのですが...。

見る側の頭の中の「まとめ○選」のトップに滑り込むように

今回は、イベントの中で出会ったパンフレットから、パンフレットがどのように使われるのか、そのためにどんな要素が必要なのか、そしてよかったパンフレットを紹介しました。

書いてみると当たり前のことだなーと思うことが多かったのですが、250社もらって印象に残ったのは今回紹介した数社のみだったので、気をつけるべきポイントを数点もてば、それほどお金をかけずに他と比較して効果の高いパンフレットを仕上げることができると感じました。

良いパンフレットは、見る側の頭の中の「〜のサービスまとめ○選」に滑り込んでくるのがうまいなと思いました。「決済代行サービス○選」「印刷のコスパ良いサービス○選」のようなまとめで、何かあった時に最初に思い出しちゃうサービス。

以前デザインの会社で働いていた時、問い合わせのきっかけが「デザイン会社まとめを見て問い合わせしました」のようなクライアントが複数いたので、まとめに載るって結構大切なんだなと感じた覚えがあります。

まとめのトップに表示されるためには、見る側が理解しやすい言葉で利用シーンを語り、その中で明確に他社と違うポイントを書く、というのが必要なことだと思いました。

それでは、またよろしくお願いします。

いいなと思ったら応援しよう!