全部まとめてセンタクキ
去年の夏の終わりから年を跨ぎ今年の始めにかけて
島根神在劇団シンゲキ、天神幕劇による公演『アイのセンタクキ』は、無事終演いたしました。
ご来場いただきました皆様。
そして、関わってくださった全ての方々に、改めて感謝の意を表します。
本当に、ありがとうございました!
さて、無事終幕ということで、今まで歩んできた道のりを振り返ってみようと思います。
振り返り
・そもそも
今回の島根sideの座組ですが、多数はシンゲキメンバーとちょこざいメンバーで構成されていました。
アーリー・サマーでは別だったシンゲキメンバーの皆様とも、今回同じ舞台に立てたので、それがまずとても嬉しかったです。またけいてぃあさんの演出と作り方にとても興味があったので、めちゃくちゃ楽しみかつ張り切ってました。
また、これがなければ出会わなかったであろう、岡山の方々との新たな繋がりができ、本当に実り多い4ヶ月間でした。
というわけで、遡って4ヶ月前。
公演への参加が決まり、稽古を行なう日々が始まっていきます。
先ほど述べた通り、参加者はほぼ顔見知り。
ですが私は、めちゃくちゃ緊張してました。
人と話すのも大勢でいるのも、どうしたらいいかわからなくなっちゃって苦手なんです。でも嫌いではない。これがミソ。
それに、距離感がまだ微妙だったし。
今も時々わかんなくなっちゃうし。
そんなわけで、後輩にイキる内弁慶野郎だったわけです。よくないぞ……。
稽古が始まった頃は、よくワークショップが行われておりました。稽古予定には「関係作り」の文字。
自分でなかなか人と関わるきっかけを作ることができない私みたいな人間には、とても有り難かったです。おかげでなんとか皆さんとお話しできるようになりました。ワークショップ自体も初めてやるものが多く、新たな発見もありとても楽しかったです。
こういうのすごい大事だなって思いました。
演劇に限った話じゃなく、多人数で一つのことをするって時に、コミュニケーションがきちんと取れるかどうかって、その後にすごく響いてくると思うんです。だから、こうやって少しでもお互いに楽しく、やりやすい環境を作るってとても大事だなって思いました。
・役が決まる頃
そしてぼちぼち配役決めが始まっていきます。
決まるまでの期間に色々役を回して本読みをし、この稽古で決めますという日がありました。
めちゃくちゃけいてぃあさんの頭の中見たかったです。今も見たいですけどね。見せてください。
私が演じたのはH(新人)役です。役が決まる前から、私はH(新人)役をやりたいなと、心の底で大変強く思っておりました。好きだなって思ったんです。隠しきれてなかったかもしれません。実際に決まった時は「本当か?」とずっと確認していました。そして嬉しすぎて小躍りしました。やりたい役がやれるなんて奇跡みたいなことですからね。
と、そうして喜んでいたのも束の間。
目の前に立つ壁に全身を強打。
正直ずっと、不安でした。
どうしたら上手くできるか、どうしたら魅力的な演技ができるか、私がH役をやることに、この配役に何を見出したのか。ずっと悩んでいました。
そんな楽しみつつもどこか晴れやかではない日々が続いていました。どうにかしなければ。でもどうしたらいいかもわからない。
ぐるぐるぐるぐる、悩んでました。
・岡山との交流
そんな時に、島根と岡山の交流稽古が行われることを知りました。
岡山のH役の方がどんなふうなのか、なにかヒントが見つかるのではと、とても楽しみにしていました。
実際に交流稽古では、岡山の出演者の方と話したり、シャッフルして読み稽古をしたり、とても楽しかったです。
岡山でH役をやられていたのぞみんさんとはこちらで初対面。なんだか掴めない不思議な方だなというのが第一印象です。
そういやH役って男性キャストのつもりで書かれています。なので、やりたい気持ちはあってもあんまりできるとは思ってなかったんです。岡山の方々も、島根は女性キャストでやるんだーって驚かれてた覚えがあります。
そうして交流稽古を経て、より芸術山脈の繋がりは深まったわけですが。
私の悩みはまだまだ解消されませんでした。
それまでにもいろんな人に相談に乗って頂きました。しかしやはり、理解はすれど実感が伴わないままでした。
もう少し何かあれば……。
そうだ、岡山行こう。
岡山で実際に見るとまたわかることもあるのではと、岡山へ稽古見学に行かせて頂きました。
結構違うというのは聞いていたし、交流稽古でもその片鱗は見ていました。実際に見に行くことで、空気感や稽古自体の様子を知ることができたのはとても楽しかったです。いろんな方に声もかけて頂き、大変嬉しかったです。
改めてそこでのぞみんさんの演技を見て、自分とは結構違うなって思いました。役者が違えば方向性も変わると頭ではわかっていても、実際目にするとそのことが強く感じられました。演出も岡山の良さとか特徴に合わせてされており、とても面白いしすごいなって思いました。
・その後
いろんな人と役について話したり、岡山との交流をしたり。そんな中で、自分の演技について悩むことは少なくなりました。
きっと、演技で「こうあらねば、こうしなければならない」と思いすぎていたんだと思います。いろんな人の演技を見て、触れて、自分もこれでもいいんだって思えたからこそ、悩むことなく、自分の演技に集中できるようになったのかと。役者として、とても大事なことを学べました。
だから私、皆さんにめちゃくちゃ感謝してるんです。直接相談に乗ってくれた方も、そうでない方も、島根の方も、岡山の方も。直接的な関わり以上に、皆さんがいてくれたということが、同じく『アイのセンタクキ』というものに取り組んで頑張っているということが、何よりも心の支えになりました。本当に、ありがとうございました。
・どうしても語っておきたいあのシーン
閑話休題(?)
語りたいシーンなんて全部ですけど、厳選してワンシーン。
それが、東京でアイちゃんと2人で話すところです。
全部のシーンで苦労したと言っても過言ではないのですが、ここは特に、大変でした。
アイとHはそれまで同じ空間にはいても、直接関わることはありませんでした。
しかしこの2人の関係のすごくいいところは、Hはアイのことを以前から認識できているというところです。切ねぇ!
これが片思いってやつなんですかね……。
当方恋愛経験もなければ、歪んだ性根の持ち主のため、恋も愛も好きとか全然わからないし、どう表現すればいいのかもわからなくて、めちゃくちゃ悩みました。
それもあって、アイちゃんに対する態度とか、テンション感とか、それまでの諸々を踏まえてあのシーンではどんなふうになるのか、ずっと掴み損ねてました。何度かアイちゃん役のいろはさんを呼び出して、2人で頭を悩ませながら練習をしたこともあります。三分の一くらいは、「けいてぃあさん!」と叫んでいた気がしますが。抜き稽古もありつつ、いろんな人に助けてもらいながらあのシーンは作られました。
最終的に、自分としては悪くないものが出せたのではないかと思います。観ておられた方の胸に響くものであったなら、幸いです。
・そして本番!
仕込みから本番前は大忙しでした。本番前は緊張するし、準備しなきゃだし、自分の役割は全うしなきゃいけないし、楽屋にけいてぃあさんが「5分前でーす(嘘)」って言いながら凸ってくるし、衣装どっかいっちゃうし、サンタさんが急にくるし、てんやわんやしてました。また開場してから開演までの30分はとても長く感じられました。
そうして1日目の幕が開きます。
実はこの日、私は序盤で喉を痛めてしまいました。
今まで経験したことがなく、しかも本番中にそんなことが起こって、内心めちゃくちゃ焦ってました。そして焦りすぎて逆に冷静になります。無駄なことを考えなくなりました。とにかく目の前のことに、一つひとつのシーンにしっかり集中する。袖にいる間はできるだけ水分をとり、喉に負担をかけないよう注意していました。若干の声変わりはしましたが、なんとか最後までやり切ることができたのでよかったです。
やり切ったものの、少し悔しさも残りました。
2日目の朝。
昨日のこととか、今日頑張ろうねなどと話しながらいろはさんとSTICKビルへ。途中にパン屋さんがあって、昨日と2日続けてパンを買ったのですが、パン屋の方が「昨日も来てくれたよね?」とパンを一つおまけしてくださいました。それがもう本当に嬉しくて美味しくて、泣きながらパンを食べ歩く変な2人組が爆誕しました。お互いに昨日の公演は、しっかりやり切ったものの悔いの残るものだったために、ちょっと落ち込んでいたのですが、人の温かさに触れ、周囲の人の支えを感じ、ものすごく頑張ろうって思えました。
2日目はまた慌ただしく準備をしつつも、とてもよい緊張感を持てていた気がします。昨日の反省を生かし、喉のケアは怠らず。
本番はあっという間でした。たくさんのお客様にご観劇いただきました。
みんなより先に舞台に出る中田さんを見送り、最初の挨拶で片山さんが場をあっためてくれました。センタクを繰り返し、成長していく。チョイスは心から楽しんで。みんな大好き中華料理屋のシーンでは、四宮がでた瞬間笑いが起きてて、袖でみんなで喜んでました。続く物語の重要なシーンでは、これまでやってきたことに加え、その時の空気や流れを最大限感じながら、最高の演技ができたのではないでしょうか。
カンソウを終え、お試しコースからは存分に気持ちがぐちゃぐちゃになりました。お姉ちゃん役の増田さんの演技にはいつも泣きそうになってます。それでも足を止めるわけにはいかない。葛藤の中でとったHの決断が、驚きと共に印象深いシーンになっていればと思います。というか、普通に皆様客席まで走ってきたことに驚かれたのではないでしょうか。私も初めて聞いた時めちゃくちゃびっくりしました。プチパニックになりました。ここでもちゃんといいシーンにできるか不安で、メンタル強打してました。でもやってる間にめちゃくちゃ楽しくなりました。
とても苦労した東京のシーン。いろはさんと2人で、「とにかく楽しもう。頑張ろう」と励ましあいながら挑みました。いいシーンになってたのではないでしょうか。その後、帰ってくるシーン。ここの雰囲気は今までとずいぶん違っていたように思います。その日の、それまでの積み重ねの成果でしょう。清々しいような、悲しいような、嬉しいような、幸せなような、不思議な気持ちでした。最後の台詞が、彼らの最期と、私たちの最後とが合わさって、みんなの気持ちが一つになって、すごく、やっててよかったって思いました。見ている皆様まで届けられていたら、とても嬉しいなと思います。
・終演
客出しのときはじめて、観に来てくださった方々と対面します。家族や友人をはじめ、演劇を通して繋がった方など、たくさんの人に来ていただき本当に嬉しかったです。はるばる岡山から来てくださった岡山sideの方々も、すごくこちらの熱を感じてくださったようで、私もとても嬉しくなりました。いつまでも名残惜しい時間でした。
振り返ってみれば、本当にいろんなことがありました。ここで書ききれていないことも、書くほどでもないこともいっぱいありました。それら全てが本当にいい思い出で、大切な宝物です。
何度でも言います。
関わってくださった皆様、本当にありがとうございました。皆様と出会えて、本当に良かったです。
『アイのセンタクキ』は終わりましたが、シンゲキとしては始まりであり、天神幕劇としてもこれからも続く道の途中でしょう。今後もさらに演劇や芸術を盛り上げていってほしいと思っています。芸術山脈が広がっていくことを願っています。私もその一助になれるよう、今後も活動していけたらと思います。
それでは、また。