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「放課後のプレアデス仕様」ができるまで。

 こんばんは。さかもちです。
以前は戌亥とこ仕様の真っ青なロードスターで関東圏のイベントにしょっちゅう参加していた群馬のオタクです。

 今年の秋のフォトミFinalから、「放課後のプレアデス」仕様のレガシィを各イベントに展示させてもらっています。

 有難いことにEMTGでは「kawaiiで賞」なんてスタッフアワードもいただきまして、うれしさを大爆発させたのも記憶に新しいです。

本当にうれしかった

 このnoteは、この痛車を作るにあたって考えたあれやこれやを、心行くまで語るだけの内容になっています。
 オタクの面倒な部分が出ていますが、よろしければ秋の夜長の暇つぶしにでもどうぞ。

そもそも何故「放課後のプレアデス」なんだ

 「放課後のプレアデス」は、簡潔に言うと「僕を救ってくれた作品」です。
 僕、大学の頃に就職活動中にまぁまぁ路頭に迷いまして。はちゃめちゃにふさぎ込んでいた時期がありました。そんな僕の心を優しく解きほぐして、そこから先の人生のコンパスになってくれた作品、といっても過言ではありません。

12話のアイキャッチ。見ると涙出てくる。

そもそも「放課後のプレアデス」ってどんな作品なのか。

 簡単に言うと、主人公の「すばる」を中心に、中学一年生の少女たち5人が、「プレアデス星人」という謎の宇宙人のため、魔法使いとなって「エンジンのカケラ」と呼ばれるアイテムを探し集める話です。5人それぞれがカケラ集めの中で自己の内面と向き合い、何かしらの答えを見つけて小さな一歩を踏み出していく、というのがストーリーの大筋です。

 2011年にYouTubeでショートアニメが公開され、その後2015年にTVアニメ版のほか、小説版、コミカライズ、児童書版(!!)とマルチに展開したコンテンツでした。

 大塚舞氏による可愛さとスマートさを兼ねたキャラデザ、鹿乃さんの歌う主題歌「Stella-rium」の素晴らしさ、国立天文台監修のもとで科学的な考証がなされた設定やストーリー。すべてが僕にとって「刺さる」要素でした。

 ついでに言うなら舞台は僕の地元である群馬県太田市ですし、主人公の「すばる」は高校時代の僕と同じで天文部の部長を務めていますし、もはやこの作品を好きになるのは自分にとって運命といってもいい訳です。

 元々は富士重工業のプロモーションムービーであったため、作品には多くのスバルネタが散りばめられています。ドライブシャフト(魔法の杖)からEJとかFAの音がしたり、窓にぶつかりそうになるとアイサイトよろしくシャフトがピピっと急停止したりする等、車好きならフフッとくる要素が多いのも魅力の一つです。

テーマは「第2話」

 今回の痛車は、そんな数あるストーリーの中でも特にお気に入りの、TV版2話「星めぐりの歌」を題材にしました。この話は主人公のすばると、幼馴染のあおいの関係性の拗れをちょっとだけ解くストーリーです。僕が一番好きな回です。

【超雑なあらすじ】 
 すばるとあおいはもともと幼馴染。ですが、中学の進路が分かれたことで疎遠な関係になってしまいました。
 ある日、展望室の鍵を開けたすばるは、「プレアデス星人」と称する宇宙人の力で、突然あおいと再会することになります。

ここ前髪絡まってるのマジ尊すぎる

 すばるは、自分の知ってるあおいと、目の前にいるあおいが「別人」なんじゃないか、と気づき始めます。

 すばる達5人は、カケラを集めるために、宇宙人の力によってそれぞれが別の運命線(世界線)から「寄せ集められた」状態だ、とプレアデス星人から告げられます。

 あおいとすばるは戸惑いながらも、放課後のカケラ集めの活動の中で、お互いの「それでも変わっていない部分」を少しずつ意識し始めていきます。

いちご牛乳。物語全体を通しての重要なアイテムです。

 終盤。2人は「2つのエンジンのかけらを同時にキャッチする」というミッションに直面します。2つのカケラは、遠心力と引き合う力が釣り合った状態。どちらかが止まれば、カケラは弾き飛ばされてしまうのです。

 ここで2人は、元の運命線で幼いころから歌って遊んでいた「星めぐりの歌」を使って、歌い終わりのタイミングで同時にカケラをキャッチする作戦を用い、これを鮮やかに成功させるのです。

"あかいめだまのさそり~♪"
"ひろげたおわしのつばさ~♪"
この5秒後くらいに大きめのどんでん返しがあって終了。

 超超超端的に話すなら2話はこういうストーリーです。特に終盤の「星めぐりの歌」を歌いながら北関東の空(?)を舞い降りるシーンは、CGも交えた表現の完成度が非常に高く、運命線の向こう側にいる、すこし変わってしまった友達でも、変わらずに残っている大切なものがあるんだということを、強く印象付けてくれています。痛車にするなら絶ッ対このシーンを使いたい、と思いました。

ベース車選び

 やはり作品が作品なだけに、スバル車をベースにしないことには納得がいきません。
・貼れる面積の広さ
・スバルを代表する車種である
という要素から、レガシィのツーリングワゴンに絞って、中古車サイトをあさる日々を送りました。
 ところが昨年の夏、友人であるのせふ(@nosefu1)から2.5XTを買わないかと相談が。

 レガシィ アウトバックの2.5XT。4代目レガシィの国内モデルでは希少なEJ25を搭載したモデルです。4代目レガシィなら維持も比較的楽ですし、修理やカスタムのノウハウがかなり流通しています。
 何よりEJ25なら不等長エキマニ特有のドロドロ音が楽しめます。やっぱ僕の中のスバルのイメージは、幼いころから家の前の道で毎日聞かされていたドロドロ音と共にありますから、ここは大事です。

 放課後のプレアデスは大元を辿ると「アイサイト」のプロモーションアニメが転じまくって作られた作品です。2.5XTが販売された頃のレガシィは、そのアイサイトが初めて搭載されたモデル(F型)と合致します。
(合致するだけで装着されていたわけではないです。悪しからず。)

 そして何よりすでにシャコタン。足回りのセットが出来上がっていて、かつどこをどの様に触ったか、彼に訊けばすぐに分かる訳です。

 というわけで

 購入。

買っちゃった。水垢まみれだった。

 一方で問題もありました。アウトバックはドアパネルやフェンダーの「段差」が非常に大きく、サイドに貼るに際してかなりの問題を抱えています。貼ると顔がガタガタする訳です。

納車1週間くらいの写真。モールの段差のエグさがわかると思う。

 そこで、思い切って各部のスムージングと全塗装を決行。巨大なドアモールはクリップ穴が多く、パテがヒケてしまうため、アウトバック用ドアの使用を断念し、モールの小さいツーリングワゴン用のものに交換。サイドステップも専用品に交換。
 アウトバックの魅力的なポイントであるオーバーフェンダーはそのまま活かしたかったので、途切れている部分に関してはナチュラルなラインを作ってもらいました。そもそも前オーナーの段階でフェンダーが叩き出されていたので、そこも微修正。
 その結果、まぁまぁ個性的なレガシィが出来上がりました。

ツルッツル。

 車体下部の樹脂形成された黒い部分も、同色で全塗装することで車体の「どっしり感」を演出させています。もともとアウトバックは車高を高く見せる工夫が各所にちりばめられているので、それらの逆を行って視覚的な低さを演出。
 ホイールはWORKのシーカーMX(9.5J+30)に交換。星座早見盤っぽいフェイスデザインがまぁまぁ気に入っています。

リアフェンダーの形状を見てほしい。

 車体色は「マグネタイトグレーメタリック(P8Y)」を採用。スバルの純正色の中では、痛車のデザインがなじみやすい無彩色かつ、「北関東の夜らしさ」を感じる冷たさと奥行きが魅力的な色です。

ちょっとだけ加工してます。実際はもう少し黄みがかったグレー。

 加えて、グリルもツーリングワゴン用に交換。これは本作の魔法の杖、「ドライブシャフト」の意匠の再現ですね。

TV版1話より。ちゃんとハザードも炊けるんですよ。

イラストからデザインしていく

 イラストは、いろいろなご縁から知り合った少女漫画家(今は休業中)の鈴峰あおいさんにかなり無理を言って制作してもらいました。(Mac miniを買ってくれるなら、という条件付きでした)。YouTube版、TV版、コミック版を観てもらったうえで、デザインのコンセプトを伝え、車両の形に添って描き下ろしてもらっています。とても近しい存在だからこそ、綿密な打ち合わせと意見の交流ができ、そして非常に素晴らしいイラストが完成しました。本当に頭が上がりません。

納品間近のとき。

 2人はドライブシャフトにまたがった状態で描かれています。この状態で走行すると、あたかも2人が夜空を飛び回っているような状態が演出できます。キャラの大きさも我々と等身大に近くなるように意識してます。

 これ、要はどういうことかと言いますと、
1.夜の北関東道でレガシィを走らせると、車体のあおいとすばるが浮かび上がって飛んでいるように見える。
2.この痛車に追い抜かれると、彼女たちが北関東の夜空を飛び回りながらカケラを捕まえているように見える。
3.追い抜かれた直後に写るリアガラスを見ると、カケラを捕まえた2人が仲良く並んでいる。

という一連のストーリーを1台の痛車で表現したかったんです。

また、イラストを間近で見ると、

お互いの瞳に相手の色を混ぜてます。お互いが見えているイメージです。
これは僕がオーダーしたわけではなく、鈴峰さんが勝手に入れてくれました。
マジで天才なんだと思います。

両面で差をつけたい

そんなわけでイラストを受け取って、そこからはデザイナーの仕事。

 お気づきの方も多いかもしれませんが、左右でバイナルのボリュームに若干の差をつけました。
 これはすばるのモチーフがBR型レガシィ、あおいのモチーフがGRB型インプレッサであるところから来る「速度の差」を表現したかったからです。
 実際、公式設定でもあおいちゃんのシャフトが最も速度が出る、とあります。その代わり、すばるの方では「高度」を演出しています。
「高度を上げれば速度は下がる」「高度を下げれば速度は上がる」です。

 バイナルそのものは、2話で飛ぶ北関東の街明かり(白)や、シャフトから出力される魔法(水色やピンク)をイメージして、まっすぐなスピード感を表現しました。2話の舞台は北関東の上空。北関東道はほぼ一直線な高速道路ですから、直線メインにすることはハナから決まっていました。

 また、バイナルの一番「分厚い」部分は駆動輪に来るようにしました。シャフトからのエネルギーが一番濃いのはどこだろう、と考えたときにイメージするのはやはり駆動輪の部分ですからね。すばるのバイナルに水色、あおいのバイナルにはピンクを混ぜていますが、これはお互いの信頼関係をイメージしたものです。(ちょっと伝わりづらいですね)

 走行車線から見たときにはあおいの面が写るようにしていますが、これはあおいのシャフトの方が速度が出るからです。追い越し車線を走ってる方が当然速度は出ますから、そこでもすばるとの速度差を意識しています。

 リアガラスにはカケラを持った2人。背景にこっそり「星めぐりの歌」の英訳を仕込んでいます。

ロゴはデカめに配置しました。元々アウトラインをとったロゴデータは存在していないので、既存データからチマチマとトレースしてベクターデータを書き起こしてます。

一番大変だった

 そもそも、プレアデスのロゴはスバルやSTiのロゴをイメージしたデザインになっているのが大好きなんです。プレアデスの痛車を作るなら絶対デカデカと配置したいなという願望がありました。ニュル耐車両のデザインを参考にしている部分が結構あります。

ニュル耐のデザインはどの年度もカッコいいんですよね。GT300のBRZは…ノータッチで…

 本当は細かなスポンサーロゴも入れていきたかったのですが、まだ車両の雰囲気的に「走り」よりも「置き」のテイストが強いので、その辺は追い追い進めていければなと思っています。ロゴなら上から貼っちゃえばいいわけですし。

野望

とまぁ、4000字近く長々と語ったわけですが…
この痛車には僕なりの野望みたいなものが結構詰まっています。

 アニメを制作したGAINAXは、この作品を最後に元請作品を作っていません。公式Twitterは2017年末で更新を停止。公式サイトは消えました。
 10周年記念イベントもクラファンで資金を集めて実施されましたが、その際にスタッフが持っていた貴重な品々をファンに放出しているところから察するに、もう公式から新しく何かが作られることはないと考えられます。制作に携わったSUBARUも、ほとんどこの作品には触れていない状況です。

僕はこの作品に新しい展開を望んでいるわけではありません
(あったら当然泣くほど嬉しいんですが)。

 ですが、忘れないでいてほしいんです。
「こんな作品あったな」「キャラかわいいな」「観てみようかな」と、少しでもこの作品のことを知ってほしい。忘れないでいてほしい。あわよくば見直してほしい。

 クルマのかっこよさとか、痛車としての完成度も大切です。でも僕の場合、イベントに出て、人の目に触れられなければこの痛車は存在していないのと一緒なのです。僕はこの痛車に乗って、いろいろな場所に行きます。

 そうして、少しでも多くの人に、「放課後のプレアデス」という作品をreminiscence(回顧)させていきたいな、そう思っています。

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