マーク・ロスコな虎屋の川島
洋菓子は油絵。
和菓子は日本画。
そうずっと思っていたのだけれど、今日はマーク・ロスコの描く抽象画のような和菓子に出会った。
伊勢丹の地下の虎屋菓寮でひと休みしようとやってきて、周りのマダムはみんな宇治金時とか宇治抹茶とかかき氷を召し上がってらっしゃる今はそういう季節。ただ、かき氷を所望するほど体が火照っているわけでなく、季節の生菓子を試してみることにしたわけです。
「川島」という琥珀製の菓子にしました。
上白糖と寒天で作った琥珀のごとき涼やかな菓子。
ガラスのお皿の上に四角い一片。なんとモダンでうつくしい。
夕暮れ時の川の中洲の島をイメージしたという、たしかにお菓子の向こうに沈む夕日が見えるよう。その造形がまるでマーク・ロスコの絵を見るようでウットリしました。
目においしい。
黒文字をあてて下ろすとムチュンと粘る。
黒文字の軸に絡みつくようにしながらそれでスパッと切れる。突き刺し持ち上げようとするもお皿に貼り付き持ち上がらない。指を軽くそえプチュンと皿からはぐようにして、舌の上にそっとのっける。
甘い。
琥珀の部分はハリがあり、川に浮かんだ島の部分はあんこでそこはとろけるようでプルンスルンと滑るようにしてお腹の中へと消えていく。
冷たくはない。
けれど涼しい。
今がまさにおいしい季節。
茶筅でたてた抹茶を氷の上に流してさましたグラッセ。深い渋みとほのかな甘み。香り豊かを味わいながら一口、そしてまた一口と体と気持ちを甘くした。