ONEJAPAN(民)と自主研(官)
2022年開催のONEJAPANカンファレンスへの感想は前回のnoteでたっぷりと書きましたが、今回はONE JAPANの活動から見えた、民間における有志活動と自治体職員による自主研活動との違いや相似点、そして今後提案していきたいことについて記します。
【共通】活動開始のキッカケ
自組織や社会に課題認識をもった人材が集い、活動が立ち上がるところは共通しています。
大企業も自治体も、主に戦後の人口増加時代に築き上げた成功体験に基づくシステムをベースとして運営しているという背景と、それが長年にわたって運用されてきたことで変化させづらい、それでいて人口減少や国際化等環境の変化に適応できていない。そんな組織に対する課題意識から活動が生まれるのでしょう。
【ほぼ共通】ネットワークが持つ方向性
組織や社会をより良くするには仲間が必要。そこで、ネットワークづくりが始まります。ネットワークはだいたい次のように分類できます。
① 飲み会が中心なとてもユルいつながり
② 互いに学び合う自己研鑽系のつながり(自主研系)
③ (社内他)事業を立ち上げ運営するようなガチなつながり
※ONEJAPAN参加団体は③が多そうです。自治体側の事例では、空き家活用やイベント主催等がこれに該当。
「ネットワーク形成の容易さ」と「ネットワークから得られる経験値」は反比例の関係にあるようですが、いきなりガチを目指しても人が集まらない可能性が高いので、このあたりは”上手にやる”ことが求められるでしょう。
企業側でも自己研鑽系の活動もあるようです。若手グループが取締役から話を聴き、終了後に懇親会を開いてつながりを深めるといったパターンは①と②の混合型でしょう。これは自治体でも似たような実践があります。
ちなみに、ONEJAPAN共同代表の濱松さんはとてもしたたかに①~③を使い分けているようで、「意識高い系とは言わせない!」という戦術にて①で広く網をかけつつ、それだけでは意味がないとも断言してました。いや本当にやらしいさすがです。
【相違】社内事業化
今回のONEJAPANカンファレンスで参加団体の実践事例を聞いていて、自治体の自主研との最も大きな差があるのは事業化だと痛感しました。
社内アントレプレナー(参考リンクあり)とでも言うのか、有志団体の活動に起因しているにもかかわらず会社としての事業化に成功している実践例が複数紹介されていました。
これに関しては、自主研が実施する取り組みが「地域のイベントとして事業化」されている例はありますが、自治体としてのオフィシャルな事業化に発展しているというのは聞いたことがありません。
これには複数の要因があると考えられます。
1つには、自治体の事業は全て所管が決まっているということ。事務分掌規則等でどの課が、何の事務を行うのかが例規で定められています。さらに、予算化しようとした場合には、予算議会における委員会で誰が説明するのかといったことが必ず問題となるでしょう。こうした事業化のハードルの高さは民間との違いと言えます。
もう1つ大きな要因と考えているのは、実行力がある人材の総量です。そもそも大企業に入る人材は元々優秀な人が多いのに加えて、社員総数が万人規模。それに対して、自治体は千差万別ですが万人規模の自治体は非常に限られます。
自分が知る範囲ですが、ONEJAPANの参加団体に最も近い動きをしているのは横浜市の自主研くらい。なお、横浜市は日本一の大きな基礎自治体ということあって、職員数は約4万人です。
【反比例】社内影響力
優秀な人材が集結し、社内企業的な事業を立ち上げ、成果をあげる。
そんなことができる有志活動は非常に質が高い活動といえますが、その活動を持ってして組織がチェンジできるかというと、それがなかなか難しい。
社員規模に対して、質の高い活動の生まれやすさは比例するかも知れませんが、組織全体に与える影響は確実に反比例します。30人程度で極めて質の高い有志活動を実施したとしても、組織規模が数万人規模になると組織全体への影響度は低くなってしまう可能性が高いと感じています。
それに対して、5人くらいの有志活動であっても、組織規模が300人程度であれば、活動の質が高いと結構クリティカルに変貌する可能性があります。
このあたり、非常に難しいところありますが、いずれにしても一歩踏み出さないと何も変わらないので、できる・できない、意味がある・ないの分析で立ち止まるくらいなら、それぞれの環境でまずは「やりはじめる」ことが大事ということなのではないかと、個人的には思うところです。
【提言】課外活動から有志活動へ
以前「自主研の代わりとなる名称は何がよいでしょうか?」
と、投げかけたことがあります。その中で出た呼称の一つに「課外活動」があるのですが、多くの賛同を得るところまで辿り着くことができませんでした。
それが、今回ONEJAPANカンファレンスに参加して話を聞いていて、我々自治体職員によるオフサイトでの活動、自主研はもちろんのこと、地域を盛り上げようとする活動や、広くネットワークづくりに寄与するような活動も、ひっくるめて「有志活動」と呼ぶのが適当だと強く感じました。
その理由は大きく2つ。
1つは、具体的な活動内容は多少の差異があったとしても、官民どちらも組織や社会に対して何かしらの課題意識を持ち、その○○に向けて同じ思いをもった仲間と一緒に動くという意味では共通します。
もう1つ、官民かかわらず、社会人としてONの縛りなく、仲間とともにつながったり、学んだり、事業を立ち上げる活動を全て「有志活動」と同じ呼称とした方が社会認知度が高まると感じたので。
「有志活動」には様々な取り組みがあって、自主研もその一つ。
社会人になったからには、官民かかわらず、有志活動によって自らの資質も高めつつ、組織や社会をより良くしていくのがイケてるよね~
と言いたくなるような社会になることが理想な気がしますが、いかがでしょうか?