【京都】イノダコーヒ(2) 旅のはじまりに寄る老舗
イノダはコーヒの専門店だけど、サンドイッチも美味しい。
決して安くはないし、ビーフカツサンドともなれば2000円もするけれど、せっかく来たのなら、ここでケチりたくはない。
旅先で食べ物をケチると、旅費のコストに見合わない旅になってしまう。
美味美味をみすみす見過ごしてしまっては、交通費をドブに捨てるようなものだ。
サンドイッチの上には、カリカリに焼き上げたベーコン。
これが、実にコーヒとよく合う。
わたしがせっせと作成した〔旅のしおり〕を手に、いくつか挙げておいた『行きたいとこ候補』を、友人と相談。
ま、結局は、行くたびに、
「のどかに任せた。京都はあたしより慣れてるんだし」
という結論に落ち着いてしまうけど。
そうなったらもう、わずかに残ったコーヒを飲み干し、
「言ったね。ノークレームってことでいいよね? あと、歴史の蘊蓄もがんがん垂れ流すからね」
ここからはずっと、わたしのターン。
友人Aを歴史世界へ引き摺り回すことになる。
京都へ着いて早々に、イノダで話をまとめると、いざ、出陣。
──京都での旅のはじまりは、かならずイノダだよね。
ふと、そう思い返す。
短い間ではあったけど、京都に住んだことがある。
その間、一度実家へ戻ったけど、普通にJRを使うのは退屈でつまらないと思って、自転車で帰省した。
どうせ帰省するなら、わくわく楽しい手段で行きたいので。
ロードレーサーとかそんな大層なもんじゃなく、いわゆるママチャリで。
格好も、近所へお買い物にでも行くような、日常的でラフな服装で。
ちなみに距離は300Km以上あった。
事前に言うと絶対に親から反対されるので、帰省の交通手段は明かさないでおいた。
そんな無茶で恐れしらずな旅の始まりには、京都駅地下街・ポルタ内のイノダ支店へ立ち寄った。
コーヒとミックスサンドで祝杯を挙げ、ついでに、コーヒー好きな母のために赤い缶入りの〔アラビアの真珠〕というブレンド豆(挽)も買っておく。
これが、地味にけっこうな荷物になったけど……。
当然、実家へ到着した時には疲労困憊でほぼ死にかけてて、その後の三日間を寝たきりで過ごす羽目になった。
三日かけて、へろへろのボロボロな姿で実家へ到着した途端、
「こんな危ないことして、心臓に悪い娘だよ!」
当然のように、親からこっぴどく叱られた。
叱られた後は、買ってきた〔アラビアの真珠〕を一緒に味わった。