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仕事には直結しないけどメタ読みしてるもの - INFOSTA情報共有セミナーから

こんにちは! 特許調査の仕事をしてます、酒井と申します。今日は、先週金曜日(2023-10-20)に参加した「INFOSTA情報共有セミナー」について書きます。今回は話題提供をさせて頂きました。下記は関連NOTEです。

上記関連NOTEでも紹介している通り、
INFOSTA情報共有セミナーは毎週金曜日 × 全5回開催 の連続イベントです。

初回・酒井は「知財系/産業系」の仕事ですが
2~4回目は大学URAの方々、最終回が図書館情報系の方、と
普段の仕事はバラバラです。

参加者の方も同様で、おそらく大学・図書館・企業・・・と色々な職種の方が来て下さっているんじゃないかな?と予想しまして
当日は「知財系サーチャーの仕事について話題提供しよう」と
以下のようなスライドを準備しました。


話題提供:知財系サーチャーと情報業務

「企業知財のしごと」と情報業務

まず、大学や図書館等で情報業務をされていると
「企業知財の仕事、役割分担」って、知る機会が少ないかも・・・?
と準備したのが上記スライドです。

企業によってカテゴリー分けや業務内容も異なると思いますが
自分の所属していた知財部門は上記のような業務内容がありました。

私自身は、入社時は出願権利化の部門にいまして、その後情報業務(サーチ)に移りました。サーチの仕事に変わっても、毎日技術内容に触れ、公報を見る点では「技術の仕事」という感覚だったので、初めのうち「情報系業務は管理系に分類されている」のがなんだか不思議でした。このあたりは所属企業によってカテゴライズが違うかもしれません。

社会の変化と知財情報業務

企業知財業務って、基本的には「各企業の戦略・方針」に基づいて動きます。けれどマクロな視点で見ると、どうしても”時代の影響”を受けますよね・・・という話題提供です。

たとえば歴史的に有名な「キルビー特許訴訟」
日本企業に勢いがあり、とりわけ半導体メーカーが隆盛をきわめた80年代の時代背景に米国のプロパテント政策が重なった、と見ることもできます。

翻って現在、国内政策を見ると
大学とスタートアップの知財エコシステムが打ち出される等の流れもあって
「次の時代のための産業振興の種まき」を感じさせるこのごろです。

生成AI、ChatGPT等も話題を集めていますが、ユーザーは「肉体を持った人間」であるわけで・・・今後 スタートアップ等による社会実装を進めるには「人間が利用できる形」、つまりデータの扱いだけではなく「目で視認できる」とか「手で持って利用できる」「乗り物としての利用」など「物体+AI」の形を取る事になるのだろうな、と思います。
ということで、個人的にも「大学、スタートアップ」「AI+社会実装」周辺の動きに注目していきたいと思っています。

このような「時代の流れ」(時間軸)に加えて
「情報のレイヤー」(階層)的な視点も必要なのかな、と思っていまして

情報のレイヤーと知財情報業務

日常的なサーチ業務って「個別の技術」とか「個別技術+企業戦略、商品戦略」の階層を扱うケースが多いです。

ですが、サーチ業務で扱う階層より上流側に、色々な情報レイヤーがあるよね、と思っています。上記の図表だと上3つ、グレーの階層です。

個別技術に関する調査って「技術だけ」にフォーカスした状態でも、
特段問題なくキーワードや分類を選べるし、サーチは成立するんですが
上位階層をまるっと無視した場合、例えば
「カーボンニュートラルを考える上では『代替燃料』が不可欠で
 バイオエタノールなんかも有力候補だと思うけれど
 不思議と特許出願が盛り上がりに欠けるよね」
といった、フワッとした結論に終わるかもしれません。
 (↑上記は「架空の調査」です。実際と違ったらすみません!)

一方、上位レイヤーの情報に目を向けてみると
「バイオエタノールは作りやすい(植物を発酵)メリットがあるけれど
 製造コストが高めな上に、食糧生産と直接競合してしまうし
 熱帯雨林の伐採という問題も引き起こしていて
 持続可能性の点で課題あり、と見られている」
「国内政策は水素、アンモニア、メタネーションなどに注目」
というものがあって・・・
「だから、特許出願もそこまで伸びていないです」という結論になります。

あと・・・
 ・上のレイヤーほど  幅広い分野に影響を及ぼす
 ・上のレイヤーほど 自分たちでは変えられない/変えにくい
という傾向があると思っていて
言い換えると「ゲームのルール」みたいな物だな、と感じます。
オセロのルール自体は変えられないけれど
どの位置にコマを置くかは自分で選択できる、ような感じです。

「斜め読み」を日課にしています

ここからの話は「企業知財」と「調査会社/特許・法律事務所」で
違ってくる部分だと思うんですが・・・

たとえば「企業知財」で、製薬会社に勤務しているとすると
「厚労省が発信する情報」とか「医薬品に関連する論文情報」などを
定期的にウオッチする、といった具合で、
見るべき情報がある程度決まっているのだと思われます。

一方「調査会社/特許・法律事務所」で、顧客の業種が多岐にわたる場合
ある程度、業種を絞らずに情報収集をしていく事になります。

先ほど書きましたように

 ・上のレイヤーほど  幅広い分野に影響を及ぼす
 ・上のレイヤーほど 自分たちでは変えられない/変えにくい

という傾向があるのかな、と思っているので
自分は上のレイヤー寄りで、定期的に情報を眺めるのを日課にしています。

とはいえ、なかなか「しっかり理解するまで読み込む」のはできなくて
「大量にざっと目を通す」「何度も出てくるトピックは重要、と判断する」
という斜め読みです。
(進行の南山さんは「メタ読みですね!」と命名してくださいました)

「上のレイヤー寄り」の情報といえば
まず産業政策、科学技術政策などの情報は「技術開発」に波及する事が多いのでおすすめです。

政策資料以外だと、コンサル・銀行等の出しているレポートも見てます
これは各社いろいろ出しているので、全部網羅するのは多分難しく・・・
好きなスタイルの物を定期的に見るのもいいかも、と思ってます。

自分がよく見てるのは
みずほ銀行の「産業情報」と三井物産戦略研究所の「レポート」です

おわりに

よりよい依頼調査をするのには情報収集が欠かせなくて
我ながら大変そう(笑)ではあるんですが
情報収集を楽しめるのもまた「サーチャーの性癖」なのかもです。

とはいえバランスも大事で
やっぱり「本業は受託調査」です。
限られた時間で、周辺情報の把握に努めるとか
「自分の持ち情報の引き出し」が錆び付かないように、
時々引き出しを開け閉めしてみるのも仕事の一環ですね!

・・・といった話題提供をさせて頂きました。

INFOSTA情報共有セミナーは11/24まで
毎週金曜日・夜19時開演です。

私も次は聴講者で覗きに行く予定です。(特にカーリル吉本さん回!!)
普段の業務分野とは違うサーチのお話、
きっと面白いと思いますので、みなさんもぜひどうぞ。

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