Espacenetの出願人名と社名変更。データは更新されるのかされないのか?問題
こんにちは!特許調査の仕事をしてます、酒井といいます。
企業合併や社名変更があった場合、検索用データは更新されるのか?それとも更新されないのか。「必ずこうなる」という指針はないので、悩ましいところですよね。
この記事のタイトルにある「Espacenet」の場合は・・・
ズバリ! 更新されたり、されなかったりします。(えー・・・)
さらに
登録特許は出願人名(権利者名)が更新されにくい傾向もみられます。
そのような場合は「合併前の社名とか旧社名、思い当たる名前は全部入力してみる」のがセオリーです。(Espacenetだけでなく、どんな風に社名が収録されているのか?が不明な場合は、どの特許データベースでもこの方法がおすすめです。)
なんだか、銀行の届出印がどれだったのか?イマイチわからなくなって
「ええい!どれか1個は正解でしょうし!」
と、家にあるハンコ、ぜーんぶ持って窓口に行く人みたいですよね😅
(幸い、私はやったことないですけど。)
ここから2つの会社について、検索を行います。
最初の会社は日本出願率が高く、
次の会社は外国出願率が高いです。
どうぞお付き合いください。
日本出願が多い:三菱マヒンドラ農機
マヒンドラ。
出先で初めて目にした時は
「マヒンドラって!!?!?何そのインド風味!」
「バーフバリみがすごいんですけど!?」
と、内心騒然!ってなりました。
自分が見かけたのは、この「コイン精米機」🍙なんですけどね?
ちなみにこれ、ドンキの駐車場横で見ました。
以前はISEKIの精米機だったらしいのですが ↓
その頃はあまり気に留めていなくて・・・
最近看板が新しくなっており、何気なく見たら名前が「マヒンドラ」。
かなり、インパクトがありました。
・・・話を戻します。
三菱マヒンドラ農機の旧社名は「三菱農機株式会社」。
英文表記では
MITSUBISHI AGRICULTURAL MACHINERY から
MITSUBISHI MAHINDRA AGRICULTURAL MACHINERY です。
検索結果は
(新社名のみ)641件
(新+旧社名)1225件 (2022/03/10時点)
と、約半分が新社名に更新されています。
GPIで集計してみます。 (GPI≓Espacenetの上位互換的なものです)
こちらは 出願人 × 出願日 です。(クリックで大きくなります)
比較的古い出願は旧社名のまま。
近年の出願は新社名に変わっています。
ちなみに、J-PlatPatの経過情報を見たところ、
日本のデータは古い出願に関しても「表示変更登録申請書(氏名)」が出されており、新社名に置き換わっています。
ですので、下記はあくまでも推測ですが
・日本で審査経過に動きがあると、
Espacenet(のINPADOCステータスデータ)にも情報反映
・古い出願はステータス変化しないので、Espacenetに反映されない
という事なのかな? と思いました。
また、次に出てくる「富士フイルム富山化学」と大きく異なるポイントとして「出願先」が挙げられます。
下記は「出願人×出願先(発行庁)」のグラフです。
三菱農機/三菱マヒンドラ農機の場合、出願先は「ほぼ日本のみ」です。(このグラフの特徴、しばらくの間だけ覚えていてくださいね)
外国出願も多数:富士フイルム富山化学
上記と同様に「富士フイルム富山化学」を検索しました。
英文表記では
TOYAMA CHEMICAL から
FUJIFILM TOYAMA CHEMICAL です。
検索結果は
(新社名のみ)99件
(新+旧社名)1225件 (2022/03/10時点)
と、Espacenet×新社名で検索できるのは10%未満です。
再びGPIで 「出願人×出願国(発行庁)」を調べます。横軸が出願国です。
先ほどの三菱マヒンドラのグラフ、思い浮かべてください^^
出願先がかなり違っていますよね。
富士フイルム富山化学は、幅広く外国出願を行っているのが特徴。
そして「新社名で検索できるデータ」はUS,EP,WOが目立ちます。
その共通項は「INPADOCのステータス情報が豊富な国」という点です。
やはり、出願人データを書き換えるタイミングは、リーガルステータス更新時なのではないか、と思われます。
富士フイルム富山化学についても、三菱マヒンドラ農機と同様に
出願人×出願時期を確認しました。
出願国の情報と合わせて考えると
「出願人情報が更新されているのは、2011年以降出願分のUS,EP,WO」
となります。
まとめ
Espacenet の場合、合併・社名変更後に
出願人情報が更新される可能性が高いのは
・最近の出願 (≓経過情報に動きが発生しやすい)
かつ
・US,EP,WOなどの主要国 (≓ INPADOCの収録情報が多い)
という条件に当てはまる場合、と言えそうです。
注意したい点として
権利化以降は経過情報の動きが少なくなるので、
新社名が反映されにくい。
つまり
登録特許は新社名では探しにくい場合が多々ある。
という事がありそうだな、と思いました。