記事・ニュースから特許を特定する時、最初に確認するとよいことは?
こんにちは!特許調査の仕事をしてます、酒井といいます。この記事は「ネットの記事やニュースを見て『具体的にはどんな技術なのかな?』『特許出ているのかな?』と思った時は、真っ先に会社名を特定すると調べやすいですよ」という話題を書きます。
結論=会社名を調べる を書いてしまったので
後はのんびりいきますね 笑
今日の例題は2つ。基本編の「痛くないマット」と
応用編「ナショナルチーム御用達のボート」です。
例題1:転んでも痛くないマット
最初の例題はTwitterで流れてきたこちらです。
このマット、転んだ時だけ柔らかくなるんですって!
確かに、常時柔らかかったら かえって歩きにくく・転びやすくなりそうですよね・・・
日テレニュースでも取り上げられていました。
この特許を調べる時、
いきなり特許データベースに、画像中の商品名 “ころやわ“ を入れても
該当の特許は、まず出てきません。
(商標のデータベースで調べ、会社名を特定するのはアリかもしれません)
“ころやわ“ の場合、
特許出願の有無を確認・特定する手順は
1)商品名「ころやわ」でネット検索
2)企業サイトから、販売元の会社名を特定
3-1)会社名(出願人名)で特許検索
3ー2)企業サイト内で 特許に関連する記載を探す
となります。3-1)と3-2)はどちらが先でも構いません。
このケースでは、ネット検索→企業サイト内の確認で
「社名=株式会社 Magic Shields」が特定できます。
・会社名(出願人名)で特許検索 を試す
2021/07/29時点で、「マジックシールズ」「Magic (近傍) Shields」の
いずれのパターンでも日本特許は出てこなくて
・企業サイト内で 特許に関連する記載を探す
こちらの方法だと、製品情報のページ内に出願番号がありました。
一般的には「製品情報」「技術情報」などのページに記載される事が多いです。
既に公開特許があれば、J-PlatPat等で探すのが早いし
企業サイトに出願番号が必ず載っているか?というと、
正直、掲載していないケースの方が多い印象です。
どちらで先に見つかるか?は運次第なのかもしれません。
今回、特願2019-217550は公開前のようで、内容は見れなかったのですが(2021/07/29時点)
こちらの”ころやわ”、以前ascii.jpでも紹介されており・・・
車両衝突時の衝撃吸収技術を応用しているそうです。
余計に公開公報、見たくなってしまいました・・・!
続いての例題です
例題2:日本人は知らない!?「手こぎボート」のトップメーカー
私、この前からオリンピックの「ボート競技イタリア代表」を
全力応援しています。
とはいえ、マイナー競技でテレビ放送は期待できないし、
なんなら競技日程もよくわからないしで、
日程確認のためにInstagramを駆使していたところ
昨日から私のタイムラインに Filippi Boatsの広告 が
表示され始めました! 笑
Filippi Boats、私は全然知らなかったのですが、
イタリアの造船所で、
どうやら各国のナショナルチーム御用達らしいのです。
手こぎボート界のフェラーリみたいな感じ?(←そうかな?)
下記はFilippiの投稿です。
左から「金・銀・銅」で、縦に並んでいるのは 各競技種目。
くっきり表示は 「Filippiのボートを使っているチーム」
・・・って事らしいのです。Filippi率高いですよねー!
ところで手こぎボートって、特許出願されているんでしょうか?
見かけはこんな↓感じで、わりと現代的ですけどね・・・
もう1回、”ころやわ”と同様の手順で検索してみます。
1)ブランド名「Filippi Boats」でネット検索
2)企業サイトから、販売元の会社名を特定
3-1)会社名(出願人名)で特許検索
3ー2)企業サイト内で 特許に関連する記載を探す
・企業名の特定
Instagram等では ”Flilippi Boats” と名乗っている彼ら
これ見ちゃうと
Espacenetでいきなり「Filippi Boats」と検索したくなりますよね?
それでは、どんっ!
1000件以上ヒットしていますが、
発明の名称をよく見ると「調理用オーブン」だったりするし、
出願人名も「フィリッピ フィリッポ」とか「フィリッピ エミリアーノ」とか。残念ながらこれ、ハズレっぽいです。
ということで、最初はやっぱり「企業名を確認」がオススメです。
急がば回れ。
ページ最下部のフッタから「FILIPPI LIDO S R L」を確認して・・・
・(ふたたび)会社名で特許検索 を試す
Espacenetにて
出願人=FILIPPI LIDO でもいいし
FILIPPI(近傍)LIDO と検索してもよいです。
(この例だと、両者は同じ結果になります)
2件の特許が関連ありそうです。
ナショナルチームで使われまくっているのに
特許2件!? って、少なすぎる印象なのですが・・・?
・ホントに2件だけなのか、周辺を見てみよう
ホントに2件だけなのか、ちょっと怪しいな?と思う時は
周辺状況も確認するとよいです。
たとえば「会社で説明しなきゃ・・・」という時、
単に「フィリッピボート、特許は2件だけです」って言ったら
「ホントに!?トップメーカーなのに?」って突っ込まれそうですよね。
でも「今どき、手こぎボートの出願自体がすごーーく少ないんです」
と説明できたら「そっか。そうだよね。」と納得感がアップしそうです。
今回は
競技用手こぎボートと
競技用には限らない「人力で進む船」を見たいと思います。
こちらのクエリー(検索式)を流してみると・・・
cl = "B63H16" OR cl = "B63B34/30"
あ・・・(汗)
全部で約7600件。
これ、会社で説明すると「フィリッピボート、2件です」って言ったら
疑われそうなやつですね!😂😂😂 ←笑ってる場合ではない
・統計情報も見てみよう(Espacenet)
とはいえ、今どきの特許情報のこと。
7600件の中には、大量の中国出願が含まれる可能性も考えられます。
また、Espacenetは欧米の古い公報がかなり入っているので
「大昔はたくさん出願されていたけれど・・・?」
という可能性もありそうです。
出願国の統計
「中国が大量」って事はなかったけれど、米国出願が多いのですね!
また「出願人の所在国」をとると、
アメリカ、ドイツ、フランスが上位になっています。
フィリッピボートはイタリアにあるので、
所在国=イタリア で見ると、102件程度です。
これだと少しは(?)
「フィリッピボート、出願2件でも不思議じゃないかな」という印象になってきます。
統計からAPPLY機能を使ってみよう
先ほどの統計で、棒グラフの「IT(イタリア)」の所をクリックすると、バーの色が赤く変わり、グラフ下の「APPLY(フィルタ条件に加える)」「Exclude(除外条件にする)」が使えるようになります。
今回は「出願人所在国=イタリア」をAPPLYしました。
該当は58件に減ります。(2021/07/29時点)
更に、公報発行日で集計してみると下記のように。
赤い線/赤い数字が「年間の公報発行件数」です。
年間3件とか、ゼロの年もあるとか・・・そんな感じなんですね。
ネット時代ならでは?のおまけ 「Googleマップ」
特許検索とは全然関係ないんですけど
私、たまに対象企業の様子をGoogleマップで見たりします。
もしかして、フィリッピボートも「紅の豚」の飛行機工場みたいになってるかもしれませんし・・・?
トスカーナの海沿い。それほど都会じゃなさそうな場所で・・・
あった!
「紅の豚」の工場、って、あながち間違いじゃないかも・・・
なんなら工場の裏手は、めっちゃ雑草が生い茂ってましたよw ←見てきた
まとめ
後半はすっかり「息抜き記事」となり、失礼いたしました。
・ネットの記事やニュースを見て『具体的にはどんな技術なのかな?』『特許出ているのかな?』と思った時は、真っ先に会社名を特定すると調べやすい
・特許が出てこない、もしくは「予想より全然少ない」場合は、
それが妥当なのかどうか、判断材料も準備できるとベターです
というお話でした。
では!
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