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ギネスビールの不思議な泡と特許の話

こんにちは!特許調査の仕事をしてます、酒井といいます。この記事は「ギネスの缶ビールに入っている、プラスチックの球にまつわる特許の話」について書きます。

アイルランドの「ギネスビール」

「ギネスビールの泡」とは何か?
百聞は一見に如かず。Youtubeの映像を貼りますね。
開始から30秒付近、テーブルにグラスを置いた後くらいから、
グラスの下の方から、細かい泡がどんどん上がっていく様子が見えます。
見たことない方は、ぜひ再生してみてください。

なぜギネスビールか?というと・・・

先日「3月17日は聖パトリックの日」だということで、
近場のお店で「ギネスビールフェア」をしておりました。
つられてギネスビール買ってきたら、泡の出方が面白かった・・・!
ということで、この記事を書いています。

(ちなみに聖パトリックの日は、アイルランドの祝日。
 ギネスビールはアイルランドの代表的なビールです。)

自分はギネスビールの泡の事、知らなかったので
「こんなのあるんだ!」と新鮮に感じたのですが
この「泡の秘密」は昔から 缶の中に仕込まれていたのだそう。
ネットにもいくつか記事が上がっています。

秘密は「フローティングウィジェット」

https://kakakumag.com/food/?id=14709

缶の中に「フローティング・ウィジェット」という、
窒素ガスを封入した、プラスチックのボールが入っています。
見た目は小さめのピンポン球のような感じです。

缶を開けるのと同時に、カプセルに封入されている窒素が放出されて、
約300万という無数の泡を生成するというものだそうです。
「いかにも特許がありそう・・・」と思いましたら。

日本特許は「特許第3,957,382号」

こちらの特許事務所のブログでは、特許番号も記載されていました。
(さすがです!)

クリーミーな泡の秘密

上記ブログから、抜粋させて頂きます。

IPDLで検索したところ、この技術に対応すると思われる特許を見つけました。その特許公報(特許第3,957,382号公報、「発泡性飲料のためのパッケージ及びパッケージ方法」)によれば、缶ビールの製造時、まず、蓋をしていない缶にビールを入れ、ウィジェットを浮かべ、少量の液体窒素を滴下するようです。
    (中略)
ギネスのウィジェット入り缶ビールが大ヒットしたため、アイルランド周辺の国では他社が次々と同様の技術を導入するに至っています。ギネス社は、この技術の開発に掛かった500万ポンド(約10億円!)を他社からの特許ライセンス料であっという間に回収してしまったそうです。

https://www.hattori.asia/blog/post_101/

確かに・・・あの泡立ちは、なんだか魅力的。
ライセンス料を支払ってでも技術導入したくなるの、わかる気がします😘

ところで、上記ブログで紹介されていた「特許第3,957,382号」。
優先権主張日が1997年1月8日、とのこと。
つまり、20年以上前に発明されていたのは間違いないのですが・・・

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-3957382/ED7D35A79DAB3903D31B7D72B3592C609EB074E42089D251A57DEAC1F441370B/15/ja

基本特許が気になる!

やっぱりの仕事柄で
「この特許(のファミリー)が基本特許なのかな?」
「他に基本特許があるとしたら、いつ頃の発明なんだろう?」
という疑問がわいてきました。

で。調べてみました。

最初は1969年。ボール型ではなかったらしい。

最初の特許と考えられるのは1969年の出願。GB1266351です。

https://worldwide.espacenet.com/patent/search?q=pn%3DGB1266351A

「補助区画11内の加圧されたガスがジェットオリフィス13を通って飲料に排出される。」とあります。
容器に区画を設けてガスを閉じ込めてあったようです。

現在の形(フローティングウィジェット)に近づいたのは1985年頃

補助区画ではなく、缶の中にガスを封入したボールが浮遊する形になったのは1985年頃。US4832968です。

https://worldwide.espacenet.com/patent/search?q=pn%3DUS4832968A

人気が出た頃(1992-93)に世界中に出願?

ギネス社、昔から色々な飲料容器の出願をしていたみたい・・・?ということで、「出願国 × 出願日」をプロットしてみました。
検索条件は「ギネス社 × 飲料 × (容器(B65D)+ガス)」です。

APP = (GUINNESS* or GUINESS*) and (clas=B65D or word=gas) and word=(beer* or bevarage*)

グラフはかなり特徴的で、
1992年、1993年に世界中に出願をしている一方、
それ以外の時期は古くはGB(イギリス)、最近はEP出願が中心で、
他の国への出願は散発的です。

おそらく、各国に出願する少し前、
1980年代後半に フローティングウィジェットの人気が出て、
他社へのライセンス等も検討する中で
世界中への特許出願を行ったのではないか・・・?と想像されます。

さいごに

ギネスビール、黒ビールなので、ちょっと好みが分かれそうですが、
苦手でなかったら一缶手に入れてみてもいいかもですね^^
グラスに注いで泡の様子を観察したり、
飲み終わったら缶切りで開けて、ウィジェットを取り出したりと
色々楽しめそうです。



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