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<Modular Artist Interview> Karch 前編

今回はモジュラーシンセを使用するアーティストを、自宅に招いてインタビューとライブレコーディングを行うという企画です。
記念すべき第1回目は、カーチさん

(上の動画は以前うちに来られた時に撮らせて頂いたもの↑)

ライブでもSNSでも、ある程度モジュラーシーン触れられている人なら、知らない人はいないと思います。その唯一無二なカーチサウンドの原点に迫るインタビューです。


Sakai(以下S):ではそろそろ始めたいと思います。

Karch(以下K):よろしくお願いします。何かかしこまりますね・・・。
(一同笑)
S:カーチさん、先ほどはライブありがとうございました。

K:ありがとうございました。お疲れ様でした。いやー、でもやっぱりさっきも言ってたけど、ここで良い音でモニターしながらっていうのはほんと勉強になりますね。

S:そう言って頂いて、ありがとうございます。
カーチさんの音楽で、僕が一番聞きたいのは、ランダムなリズムの作り方、リズムだけではなくて音色とかエフェクトの掛け方がとても気になっているんですけど。「ランダム」と言ってもデタラメな感じではなくて、カーチさんの場合、それがとても有機的で独特なグルーヴを生み出しているじゃないですか。そういうのはどういう風に作られているんですか?

K:もともと、Elektronを使っていた時に、その場でパラメーターロックでリアルタイムでリズムを作っていくということをやっていたんですよ。
それでElektronはエフェクトの掛け方もパラメーターロックができたりするから、それをやった時に結構面白いなというのがあって・・・。なるべく操作したものがリアルタイムで反映されるものを使ったりとか、ランダムなCVを使ってパラメーターを動かしたりしてました。

S:Elektronが最初だったんですね?それでランダムの魅力にハマったというか・・・。

K:そうですね。そこがデカかった。Elektronでのパラメーターロックプレイというか。
それが今のモジュラーに影響しているところは結構デカいかなという気がします。

S:じゃあ、Elektronにいってなかったら、もしかして今のモジュラープレイも変わったものになっていたかもしれない?

K:かもしれない・・・。あ、ごめんなさい。Elektronもそうだし、Korgのエレクトライブもですね。

S:エレクトライブ?

K:あれもあの、モーションシーケンスという機能がついてるから、その影響もあるかな。

S:どっちが先とかありますか?

K:エレクトライブの方が先だったけど、即興でパラメーターを変えていくというのはElektronになってからだったかな。

S:エレクトライブは即興でも変えれないんですか?

K:即興でも変えれるけど、その時エレクトライブは勉強中だったから、そういうプレイはあまり・・・。あと、バンドが一時期打ち込みとラウドロックをやろうということになって・・・。

S:あ、バンドをまだやっていた時にエレクトライブを導入していたんですね。

K:そうそう。それでトラックを作ってそれに合わせてギターとボーカルという形だったから・・・。それが打ち込みの最初だったかな。

S:そうだったんですね。僕はバンドを辞めてから打ち込みにいったのかと思ってたんですけど、そうではなかったんですね?

K:そうではなかったですね。一時期それで試してみてたという感じかな。
結局はみんなずっとロックできている人たちだったし、トラックを作るの初めてだったから、中途半端なものしかできなくて・・・。

S:そのトラックはカーチさんが作ってたんですか!?

K:そうそう。作ってたけど、どうしても中途半端な形にしかならないから、みんな何か違うよねというので、なあなあに流れていったという・・・。

S:バンドサウンドの中にエレクトライブを入れるというのは実現しなかったんですね?
K:やってはみたけど上手くいかなかったという感じかな。

S:そこで初めて電子楽器というかグルーヴボックスに触れられたんですね。

K:そうですね。その存在を知ったのがシンセの始まりだったかな。エレクトライブをバンドに導入してみようということになって、そこからシンセってどんなのあるんだろうと思ったら、アナログシンセがあるだとか・・・Elektronはその当時は知らなかったから、色んなものがあるらしいぞと・・・。

S:なるほど。もともとバンドサウンドの中にエレクトライブを導入しようと思ったきっかけは何だったんですか?

K:ドラムがいなくなっちゃったんですよね。その新しいドラマーを探しながら、残ったメンバーと飲み行く途中で楽器屋でぱっとみかけたやつ(エレクトライブ)があって、それにOSCって書いてあったんですが・・・もともとOSCという言葉自体はマッドカプセルマーケッツのアルバム(OSC-DIS)で知っていて、その当時は意味は分からなかったんだけど、エレクトライブ(に表記されていたOSCという文字)を見た時に「(OSCって)シンセのことだったのか!?」ということに気づいて、それで「これがあればマッドカプセルマーケッツみたいなことができるんじゃね?」みたいな感じになって・・・。だからきっかけとしてはそこだったのかなと。

S:なるほど。それでバンドが休止になって、カーチさん一人でやろうという風に決めたんですね。

K:そうです。で、ちょうどその頃にシンセのイベントみたいなのあるのかな?と調べてみたら、リョータさんが主催してる・・・、

S:お、リョータさんが出てきた!
(リョータさんのBLOGはこちら↓)

K:そうそう、リョータさんが大きなきっかけだったんですよね。
それで、リョータさんの「マシンライブワークショップ」というのを見つけて、その当時使ってたAIRAのTR-8とかTB-3とかを持ち込んで、勉強しに行ったという感じです。それで「せっかくだから演奏してみてよ」と言われて、割と好評だったというのが最初かもしれないです。

S:カーチさん、TR-8も持ってたんですね?それはドラムが抜けたからなんですか?

K:えーと、これちょっと話が長くなっちゃうかもしれないけど、要はエレクトライブってトラックを保存してプリセットとして使ってなんぼみたいなところがあるんですけど、その当時にAIRAシリーズが出てきて、即興とかリアルタイムで演奏することに特化したものだったんですけど、俺的にはリアルタイムで即興ロックバンドみたいなことができないかなという感じだったんですよ。で、やりたかったんだけど、メンバー的にはそれはちょっと無理っていう感じになって・・・。でも俺的には既存の曲を作ってありきみたいなスタイルは飽きてきちゃってるところだったんで、それで方向性の違いみたいな感じになったんですよね。その流れでAIRAにどハマりしている時期だったんです。
だから、即興でその場でちゃんと演奏できるようになりたいなという気持ちはありました。

S:カーチさんは、バンドサウンドが根底にありながらも、即興に強い拘りがありますよね。ジャズとかなら分かるんですが、ロックバンドで即興というのはあまり結びつかないというか。
ロックの場合、大抵は自分たちの作った曲をライブでやるのが主で、即興が前提になってはいないですよね?

K:あの〜・・・これ脱線しまくりですよね(笑)
曲作りをメンバーみんなでやろうというバンドにいる機会がすごい多かったんですよ。20代のころにやってた時も30になってやってた時も、その場でメンバーでガッと合わせてワン、ツー、スリーで「ドードードー!」ってやってその時が一番生々しい音楽ができるんですよね。で、「今の超良かったね!」って言って曲にしようぜってなった瞬間にすごいチープになるんですよ。ていうのをずっと考えてて、そしたらもう自分らのスタイルとしてそれをライブでもできるようになりたいと思ったのがきっかけだったかな・・・。今思い出した。今考えてみると不可能だなという風には思うんですけど。理想としてはそうなりたいなというところがあったんで。それがはじまりだったのかな。

S:それはバンドのメンバーの人も同じ考えだったんですか?

K:いや、そこで別れてしまって・・・

S:ちゃんと曲として作ってそれをライブでやりたい、それがほとんどだったということですね。カーチさんだけ即興でやりたいと。

K:やっぱりドンって合わせてやったときのパッションみたいなものが好きだったから・・・。

S:なんかもう崖っぷちみたいな、追い詰められてる感じっていうか(笑)

K:でも純粋に波長があった時のエネルギーみたいなものが確かにあるんだよなという風に感じてはいたんですよね。

S:それが原体験みたいなところなんですかね。それは確かに赤の他人というか、他人とやるのって相当難しいですよね、自分がやりたいと思ってても。

K:そうなんですよね。だからそれを押し付けたのはおれのエゴ(笑)。

S:だから一人でもできる電子楽器でそういうことをやりたいと・・・。

K:そうですね。そうそう。すいません、今思い出しました。話してて(笑)

S:カーチさんが面白いのは、そういう風にまず電子楽器を扱っているというところですよね。でもエレクトライブはプリセット向きのマシンで、AIRAは即興向けのマシンだったと・・・。ということはエレクトライブは後々おさらばしたんですか?

K:おさらばしちゃいましたね・・・。

S:で、ローランドのTRは使ってて、それでリョータさん主催のワークショップに行ったと。

K:そうです。そこでやったらウケが良かった。で、そこのマスターでいらした方からも気に入ってもらえて、そのワークショップじゃないライブイベントにも出させてもらえることになって。活動としては、そっから始まったという感じかな。

S:それは何年前ですか?

K:2016年だから8年くらい前ですかね。だからリョータさんは何気にお世話になってるんですよ。

S:カーチさんのランダムに対する拘りっていうか執念というか、そういうプリセットを使わずにというのは、そういうところから出てきているんですね。
即興で合わせた時のエネルギーみたいなものが、カーチさんにとってはものすごい魅力というか快感だったというか。

K:そうですね。んーでも、最近だと忘れていた話でした(笑)

S:(笑)なるほど、それがカーチさんの原点だったんですね。まずはバンドにいた時にエレクトライブやTRを使い始めて、それからElektronに行ったということですね。

K:そう、そっからが活動の流れでした。ワークショップにもElektron持って来ている人が沢山いたから。

S:昔からいたんですね。

K:Elektronの会みたいになってた(笑)。

S:(笑)なんであんな人気あるんだろうな、Elektron。

K:いや、そうですね確かに。俺的にはその、パラメーターロックの即興性・・・即興でも、 ものすごい音楽っていうか、エネルギーがあるなっていう感じだったから好きだったんですけど。 プリセットありきでもすごい人気でしたね。

S:そうですよね。ある程度曲を仕込んできておいて、それを元に展開していくということもできますもんね。
そういう原体験があって、それに最適なマシーンを探したり使っていく中で、初期の頃はTR-8を使ってたけど、だんだんとElektronの方が良いっていう風になったんですね。

K:なんか、元々のそのTRの即興というか、演奏性も良かったけど、Elektronはまた別のベクトルで楽器だなっていう感じで、その自由さ具合がElektronが好きになったところかな。
シンセを演奏するっていう感じとはまたちょっと違うかもしんないけど、音色を演奏する?何て言ったらいいのかな、なんかその、演奏するっていうところにおいて、 すごい面白い楽器だなっていうところは感じてましたね。

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