令和4年度 税制改正大綱 決定
12月9日、自民党の令和4年度税制改正大綱が正式決定され、今年の税制調査会での議論も終結しました。翌10日には自公両党合同での与党税制改正大綱となり、これを基に来年の通常国会で税法改正案が審議されて、来年度4月から新しい税制が施行されます。
今年は3度目の自民党の税調幹事として、侃々諤々の議論に参加させていただきました。税とは政治そのものであると言われます。私たちの生きる社会を誰がどう負担して形作っていくのか、様々な利害を調整しながらも、一つの結論を決めていく税調の議論は政治家として大変気が引き締まるものです。
今年の議論で大きな焦点となった項目には「賃上げ税制」「住宅ローン減税」「航空機燃料税の減免」などがありました。
■ 賃上げ税制
すでに安倍内閣以来、給料アップのための税による政策誘導策を私たちは推進してまいりました。今回、岸田内閣が誕生し、そのキャッチフレーズとして「成長と分配」を掲げたのに合わせ、改めて「賃上げ税制」を見直し、深掘りして拡充しました。
法人税減税などの効果もあり、企業の内部留保金は拡大する一方、給料として被雇用者に支払われる額はなかなか増えない現実が続いています。そこで、給料の支払いに新たに充てた増加分に応じて、大企業で最大30%、中小企業で最大40%の税額控除を決定すると同時に、利益が上がっているのに投資も給与額も増やさない企業は、カーボンニュートラル促進税制やDX促進税制などは使えないような罰則的ルールも残しました。
議論の中では「人不足のなか、税制で優遇せずとも今年は3%以上給与を上げて人員確保に走るはずなので、この税制は不要ではないか」「もともと給与を上げられる企業は業績のいい企業であって、賃上げなど難しく、厳しい経営をしている企業や業界こそ税優遇すべき」との声もありました。しかし、今回は政権の姿勢と歩を一にし、そこをアピールする意味も含め、今回の税制としました。当然、実際の動きをチェックしながら常にこの税制も考えていくべきだと思います。
■ 住宅ローン減税の控除期間の拡充
暮らしの基盤となる良質な住宅に多くの国民のみなさまが住めることは、生活の質向上のためにも、セーフティーネット機能強化のためにも重要なことです。住宅ローン減税は国民の住宅取得を長年に亘って支えてきた関心の大変高い重要税制であり、今年で期限を迎えてしまうところ、その延長が議論されてきました。結果、中間層に手厚く住宅取得の支援が出来るような制度に見直された上、延長されることとなりました。
毎年ローン残高の1%を所得税額から控除する制度には、ローン金利よりも高い控除額であるために逆ザヤが生じているという指摘が会計検査院から一昨年になされ、今年の議論で一定の改定をすることが決まっていました。しかし、そもそも逆ザヤ如何にかかわらず、結果としてお得となり、住宅の購入に踏み切る人が増えるのであれば住宅政策として目的は達成されています。
議論の結果、控除率を0.7%にするとともに、控除期間を3年延長し13年とすることになりました。昨年決まった改正を実行しつつも控除期間を延長することで、特に中間層にとっては実質的な減税額はむしろ「拡充」されるケースも増えてまいります。さらに、省エネ性能の高い住宅を促進しカーボンニュートラル実現に資するために、区分を細かくさせていただきました。
優良住宅ほど控除が大きい仕組みとなりますので、より良い住宅を選ぶ人が増えていくような制度になったと思います。併せて、新築住宅に係る固定資産税の減額措置(戸建てなら3年間税額1/2)、リフォーム促進税制等も延長されました。今後も、住宅産業振興を通して国民の暮らしの向上を目指して参ります。
■ 航空機燃料税の減免延長
航空産業もコロナ禍の影響を大きく受けた産業です。訪日外国人観光客数6000万人を目標に観光立国の政策を推進してきた立場としては、航空産業にはここで何としても踏ん張っていただかなくてはいけないと思い応援をさせていただきました。パイロットや客室乗務員、グラウンドハンドリング等は専門的な知識が必要な仕事であり、一度離職してしまうと再び人材を一から集めるのは至難の業です。コロナ禍がある程度落ち着けば、世界的な観光需要は間違いなく戻ってきます。その時に、日本に多くの観光客を呼び込むためには航空産業の存在も欠かせません。
■ 来年度に向けた検討事項
来年度に向けて税制の議論は続いていきます。毎年12月の山場に向け、また勉強を重ねていきたいと思っています。来年度は、金融所得課税の議論が行なわれるでしょうから、多くの人に納得していただけるような結論を目指さなくてはいけないと思いますし、造船産業を支援する税制、カーボンニュートラルを促進する税制、相続の負担を軽減する税制、自動車を巡る税制など論点は引き続き数多くあります。
一度の議論だけで永久に変更しなくていい完璧な税制は出来ません。社会の変化にも対応しつつ、毎年の議論を通して、少しずつ、より良い社会の負担の分かち合い方を模索していければと思います。
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