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菅総理による初訪米の成果 ~ 内閣官房副長官が肌で感じた日米関係 ~

今年4月に行われた日米首脳会談は、その後のメディアなどの世論調査などによると概ね評価されているように思われます。
会談そのものが予定時間を大幅に超えて行われ、日米首脳共同声明も発出することができ、日米ともに成功をアピールしたことも大きいと思われます。しかも、今回はバイデン大統領の就任後初の対面での首脳会談というプレミアムも付き、世界が注目していたことは間違いありません。

■ お互いの事情を認識し合う関係性
私個人としても大成功だと思っています。そう考えられる理由は主に3つあります。
一つは、アジア地域をはじめとする地域情勢の認識とその対応について率直な意見を交換し合い、共有し合えたということ。
アメリカはアメリカの立場から、日本を配慮しながらも言いたいことは言い、聞きたいことは聞いてきた一方で、菅総理も日本の認識を主張し、日本の方針を説明しました。ここでは詳述できないのですが、首脳同士で意識と認識のすり合わせができたことは、今後の両国関係においても大変大きなものになるだろうと思います。

■ 「世界の中の日米」という視点での合意
二つ目としては、世界的な課題に対して、具体的な二国間での協力の在り方を決めたということです。
そのうちの一つが「野心・脱炭素化及びクリーンエネルギーに関する日米気候パートナーシップ」の立ち上げです。
日本も菅総理の決断で2050年カーボンニュートラルを宣言しました。世界の大きな潮流となっている脱炭素化の流れの先頭に立ち、流れゆく先を決めていく、つまり、その時の各国間での約束ごとをきめていく。また、その流れを後押しする技術開発や普及などでもリーダーシップをとっていく。この作業を日米で協力して行っていこうというものです。
今後国際社会で重要性を増し、注目される分野になることは間違いない中で、日米両国の存在感を高めていきます。
また「日米競争力・強靭性(コア)パートナーシップ」の合意もその一つと言えます。
通信分野などは実感されることと思いますが、今や科学技術の発展が私たちの生活にも大きく影響を与えています。我々一般の生活までいかずとも、安全保障や医学など各専門分野においてはもっと強力な影響力・優位性を持つこととなります。
このパートナーシップでは、デジタルや科学技術における競争力とイノベーションの推進、コロナ対策、グリーン成長、気候変動などの分野で協力を推進することで一致しています。今後、具体的な成果を期待できる枠組みとなったと思っています。

■ 日米安保を強化する「個人的な信頼関係」
そして今回の会談が成功だったと思う三つ目の理由は、菅総理とバイデン大統領の間で個人的に強固な信頼関係を構築できたことです。実はこれが最も重要だと思っています。
日本の安全保障は、日米安全保障条約を柱に組み立てているというのが現状です。政府の大きな使命である国民の生命を守るという観点からは、好むと好まざるとにかかわらず、この日米安保を確固なものとし、日本の安全を確保していくことが求められます。
今の安全保障の立てつけを根本から変えない限り、アメリカは日本にとって特別な国であり続けるわけであり、その点を軽んじることは国民に対し責任ある政治を行うという観点からはあり得ないと私は思います。
その特別な関係の国のトップと直に話ができる信頼関係が構築できたということは、大変な意義があると私は考えます。

■ 外交は「人間 対 人間」
今回の総理の訪米後に、国会において野党の議員から「コロナ禍でオンライン会議という選択肢はなかったのか」という、訪米を批判する趣旨の質問がなされ、心底びっくりさせられました。
バイデン大統領との初の対面での首脳会談という国際社会へのインパクトの大きさを評価しない点もさることながら、オンラインで対面の時と同様の信頼感が構築できると思っているのか、もしくは、信頼関係そのものさえ不必要と思っているのか、その質問の真意を私は未だ理解できないでいます。
国という大きな責任を背負いながら、外交というものは、やはり外交を担う個人に負うところが大きいですし、結局はそこに集約されるのではないかと感じています。
菅総理は世襲でもなく、派閥の代表という立場でもないなかで、「菅さんなら・・・」と信頼されて総理になったと昨年の総裁選で目の当たりにしました。物事の本質をつかむのは的確、かつ、素早いので、判断・決断も早い。その能力がいかんなく発揮されたのが今回の対面での会談だと思います。
ハリス副大統領との会談でも対面の良さが出ていました。
ハリス副大統領は人の話を聞くときに、しっかりと相手の顔を見つめて丁寧に聞く方であり、会話のやり取りもしっかりと咀嚼してから話をされていました。また、相手を立てながら協力依頼をしてくる様子を含め、個人としての雰囲気がわかるのも直接会えたからではないでしょうか。

■ 安倍外交の成果
今回の訪米で感動することがありました。
首脳会談に陪席していたブリンケン国務長官、サリバン補佐官、キャンベル調整官が、ブルーリボンバッジを身に着けていたのです。
ブルーリボンバッヂとは、北朝鮮拉致問題解決を支援する意思を表明するものです。
これは安倍外交の何よりの成果です。安倍前総理がアピールし続け、トランプ前大統領に拉致問題の存在を認知させたことがバイデン政権にも伝わっているということです。おそらく、アメリカ側は菅総理が安倍政権下で長い間拉致担当大臣を担っていたことも調べていたと思います。これこそ外交の積み上げのひとつの事例ではないでしょうか。本当にうれしかった。
こうした現地での様々な体験や事象を通して菅総理が手応えを感じているというのが、今回の訪米が成功したと私が考える何よりの根拠です。
平時とは異なり、コロナ禍ということで様々な制約がありますが、国益のためには今後も対面での首脳会談のチャンスを増やしてほしいと思います。

時報紙 21年5月号 NO214-1はこちらから。

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