骨太の方針 ~ 継続と加速、ときに転換。安定した政策遂行のために ~
先月23日に通常国会が閉会しました。最終盤は政治資金規正法案の議論がメディアでしきりに取り上げられていました。
一方で、自民党の国会議員は「骨太の方針」作成にもエネルギーを注いでいました。正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」ですが、長いので「骨太」と呼び、その政権の政策の基本骨格、柱のことです。
ある意味この方針で政権の方向性が決まり、行っていく政策も絞られ、そこに予算づけがなされていくという意味で私たちには大事なとりまとめとなります。
■ 随所に見られる前政権からの踏襲
私は、昨年は情報通信インフラの拡充について、今年は身寄りのない独居者を巡る課題について、座長として骨太の作成に臨みました。今年の中身は先月書かせていただきました(詳細はこちらから)。
今回の骨太について新聞などでも特集が組まれたりしたのでご承知の方もおられるかと思います。全体を見渡して私が感じるのは、菅総理時代に決めた、もしくは内閣官房長官時代から進めてきた政策やその頃に加速したものが多いということです。
当時、官房副長官として、もしくは副大臣や委員長などの役職を通して取り組んだり近くで見ていたこともあり、その流れが主流であることに、政策が着実に進んでいることへの安堵とある種の充実感も覚えます。
■ ますます加速する半導体政策
例えば、投資を通じた資産形成の動きです。
今回、iDeCo(自分が出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度)の拠出上限拡大の検討が注目されていますが、すでに今年1月から始まっている新NISA(少額投資非課税制度)もこの流れです。この「貯蓄から投資へ」の動きは、菅内閣で加速した一つと言えます。
今回、成長産業の育成の目玉として半導体の支援策が打ち出されていますが、これこそ菅内閣がそれまで長期間継続してきた政策を変更して、初めて公費による支援を打ち出したものです。
そして国の支援を打ち出したことによって、台湾のTSMCという会社が熊本にJASMという合弁会社の形で進出してくることが決まりました。現在熊本ではJASM景気とも言われる状況になっており、経済的には九州全体に波及するほどになっているそうです。
昨年、菅前総理と現地視察を行いましたが、産・官・学の連携が人づくりなどの分野でも行われていたり、新しい町ができていく勢いであったり、とにかく多くの刺激と動きがあることを実感してきました。
もちろん課題はありますが、それをも凌ぐと思われる大きなインパクトがあります。社会にとって半導体はますます重要なものになっていきますし、遅れたとは言え、ここで政府が支援に乗り出すことによって何とか間に合えばとも思っています。
■ 市場を支える働き方改革
労働市場変革、働き方改革についても骨太の重要部分の一つですが、これも菅官房長官が自ら進めてきたものです。
人手不足とも関連しますが、労働者一人ひとりの労働生産性を上げて、給与をアップしていかねばならないということです。そのために社会や企業が必要とするスキルを持つ人材の育成も求められ、リ・スキリングのプログラムなどをまとめたプラットフォーム整備が書き込まれましたが、まさに菅官房長官のもと、我々が議論してきた中身です。
■ 両論併記からの脱却はできるか
ただ一つ、私が議論が尽くされていないと感じるのは財政についての話です。とても大事な部分なだけに、専門家と言われる人々の間でも決着が為されていない課題とも言われています。
今回PB(プライマリーバランス)黒字化が盛り込まれたことで注目されましたが、詰めていくと両論併記の形ともいえるわけです。
党内にはMMT理論に近い考え方を基本にするグループと、今までの延長の考え方を基本にするグループと2つあります。
前者は今回政府への提言の中にPBが財政健全化の指標として適切かどうか検討すべし、つまりふさわしくないと主張しています。後者の主張は、このPBを指標として大事なものとし、この黒字化を引き続き目指すべきというものになります。
前者は、国債の発行は次世代への借金を増やすことではなく、現在の通貨供給を増やすことだと考えます。そこで需給ギャップがあるのであれば国債を発行してでも需給ギャップを埋めるべしと主張するわけです。
この主張が正しいのか、党内の税の議論の際に公式に財務省の担当者に問うてみたところ、「間違いではない」と認めました。
財務省は「日本の財政は決して破綻することはない」と国際会議で明言している一方で、国内では「破綻の心配がある」とも言っています。日本の財政のこれからの方針を決める骨太ですから、それをどちらの考え方で貫いていくべきかを決めるべきで、両論併記から抜け出す努力をすべきではないかと感じています。
そしてスタンスを決めた後は、場面によって「国債は次世代の借金だ」と言ったり、「借金ではなく単なる通貨供給だ」と言ったりせず、統一した見解の元に財政運営を進めていってもらいたい、と強く感じます。
どちらにしても率直に考え方を議論する場というのが必要だと考えます。
■ 政策実行力こそが求められる
このように日本のこれからを決める政策は一朝一夕で成し遂げられるものではありません。方針を決め、それをスタートさせ、微調整をしながら継続させることが大事であると同時に、時には先を見据えて転換を図る勇気も必要です。
内政だけでなく国防、外交など、世界の状況を見、協調しながら安定した政策の遂行のために、これからもしっかりと働いてまいります。
※トップの画像は昨年4月にJASMの本社の建設現場でヒアリングしたときのものです(熊本県菊陽町)
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