浪人風の男 夢日記2023.6.24
とある寒村。
多くない村民の大半が、一軒の家に集まっていた。
村の長老が病に臥せっている。いつお迎えが来てもおかしくない老人なので、村民も寿命が尽きること自体は受け入れているのだが。
しかし、普通の病気ではないのだ。見たこともない症状の奇病である。村人たちの懸念といえば、こんなわけの分からない病気で死なすのは忍びない、ということだった。
そこへ、ひとりの男が現れる。歳の頃は30代半ば、着流しに刀を差した浪人風の男。
ちょいとごめんよ、と家に入ってきて、長老のそばへ。すらりと刀を抜くと、長老の首元をちょんちょんと数回、つついた。
いきなりのことで判断が遅れたが、見ず知らずの男が長老に刀を向けているのだ、とんでもない暴挙である。周りの者が男を羽交締めにし屋外へ連れ出す。
男を囲んで詰問するが、彼は悪びれもせず、さりとて抵抗して暴れたりもせず、ひょうひょうとした面持ちで、まあまあ落ち着いて、などと言う。
長老宅から何か獣の吠えるような声がした。一同、そちらに目を向ける。怪物だ。普通の人の倍ほどの大きさで、家を壊しながら出てくる。長老の着ていたのと同じ柄の布が化け物の体にまとわりついていた。瀕死の老人が巨大な得体の知れないものに変わってしまったというのか。
浪人風の男が、ふうっと風が吹くように取り囲んでいた村人たちをすり抜けて、走ってはいないのに物凄い速さで怪物に近付き、右胸の辺りを刀で貫いた。
そいじゃあっしはこれで、と、やはり感情のたかぶりをまったく見せず、刀を鞘におさめると、男はすたすた去っていった。まるで勘定を済ませて茶店を出ていくような気軽さであった。
気がつけば、怪物が倒れたはずのところに、長老が穏やかな顔で寝ていた。死んではいない。苦しげな様子も無く、病は治ってしまったようだ。
しばらくの間、呆気に取られた後、ようやく、彼のお陰で長老が助かったのかもしれないと、皆が思い至りはじめた。