日本刀を抜いて、の夢(2022.12.2)
自宅。
何がきっかけか分からないが、父が暴れ出した。普段からかんしゃくを起こしやすい人だったが、今夜は様子が違う。暴れぶりが激しすぎる。
身の危険を感じたので、妻を連れて外に逃げ出した。すると父は、あろうことか、日本刀を抜いて追いかけてきた。
今夜は地域の祭りで、夜でも外を歩いている人が多い。他人を傷つけでもしたら大変なことである。横溝正史の小説が現実になるようなことは、あってはならない。
妻には、なるべく遠くに逃げるように言い付け、僕は父を見失わないように、かつ、見つからないように距離を保ちつつ、何か武器になりそうな物を探した。
路上に長さ1メートル、太さ1センチほどの棒が積んであった。金属製ではあるが、一本ではすぐに曲がってしまう。だが、束にすれば刀に対抗できるかもしれない。もっと良い武器が探し出せるかどうかも分からないし、とりあえず一握り、五、六本、持って行くことに。
二股が上下に分かれて、父は上の道を水平に進み、僕は下り坂を降りていた。見上げると、怖れていた通りの状況。父が通行人に斬りかかっている。悲鳴が晴れた夜空に響いた。逃げ惑う人たち。
上の道とは段差が三メートルほどあったが、回り道をせず一秒でも早く父を止めなければと気がはやる。芝生の張られた垂直に近い急斜面の、ところどころに植わっている低木を手掛かり足掛かりにして登ることにした。
父に呼びかけながら登っていると、ガードレールのほうに寄ってきた。身を乗り出して僕を見つけると、殺気立って刀を向けてきた。僕は持っていた棒で刀を持つ父の腕を打ち付けた。
父は刀を落とすとともに、体勢を崩してガードレールを乗り越え、下の道に墜落した。打ち所が悪かったのか、ぴくりとも動かなくなった。呼吸をしていないようだ。即死か。
警察に連絡しようと思ったが、あわてて家を出たので、携帯電話も何も持っていない。ついでに言えば、靴もはいていなかった。
近くにスーツ姿のおじさんが、ふたりいた。両方の顔を見ながら、携帯電話を持っていないかと聞いてみた。僕が言い終わらないうちに、片方のおじさんが携帯電話を取り出し、通報を始めた。わたしがしますから、と言うように、僕に向かって無言で数回うなずきながら。
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