元王女 夢日記2023.2.26
大きな岩を囲む平原。
岩の高さは3メートルほど、てっぺんが平らになっていて6畳くらいの広さ。天然のステージの上に、板に等身大の人の輪郭が描かれたものが立ててある。
そこから数十メートル離れたところ、平原と森の境目に、がっしりとした台座に乗った大型のいしゆみが設置されていた。長い金髪の女性が、彼女の背と同じくらいの長さの矢をつがえているのを、少し離れたところから、僕は見ていた。今日だけで何十回目だろうか。なかなか命中せず、的は交換していない。
手伝わずにただ見ているのは、彼女にとって独りでやらなければならないことだからだ。
近いうちに、ここで建国記念の式典が開かれる。何回目かと片手で数えられるほどだった。
しかし、この地域に人が住み始めたのは大昔であり、国名が変わるまでは長い歴史を積み重ねていた。数年前、他国に侵略され、王政は廃された。別の国に造りかえられ、侵略国に属することとなったのである。
彼女は元王女だった。
式典に来賓として招かれる予定の、かつて侵略軍の司令官として王城を焼き払った男、父のかたきを、討つつもりでいるのだ。
生き残った弓兵の僕は請われるままに、いしゆみの指南などしているわけだが。