フォロワー7,000人のインスタグラマーはどれくらいおいしい思いができるのか?
本業としてファッションテックの会社を経営している一環で、ドメイン知識を深めるためにInstagramを頑張っている。
2021年4月の時点では完全に個人アカウントで400人くらいのフォロワーだったものが、テコ入れを始めて現在では7,000人を超えている。
Instagram: @satoshi_sakai
どうやってフォロワーを増やしたのかは別途記事にしても良いけど、基本的には艸谷真由さんの本に書かれていたことを忠実に実践しただけなので気になる方はそちらを参照してほしい。
「フォロワーを買う」と言われるような行為は一切していない。
周囲のファッション業界の友人からは「男だったら3,000超えたらインスタグラマーだよ」という言葉をもらっているのでインスタグラマーを名乗ることにしている。
さて、皆さん気になるのは「インスタグラマーは楽して儲けられるのか」とか「良い思いができるのか」とかいった特権事情なのではないだろうか。
僕はインスタグラマーが本業ではないし仮に干されることになっても困らないので、今日は色々とあけっぴろげにしたためよう。
インスタグラマーから見た「お仕事」のフロー
インスタグラマーが損か得か。
それを語るには、インスタグラマーのワークフローを避けては通れない。長くなる。この「長くなること」がポイントなので忍耐強くななめ読みしてほしい。
1. 仕事を探す
企業からお仕事依頼のDMをいただくこともあるものの、選り好みしようと思ったら仲介サイトを頼ることになる。
Woomy, Cast Me!, SPIRIT, Find Modelなど。企業が案件を掲載して、登録インスタグラマーがそれに応募するプラットフォームを担っている。
仲介サイトにそれぞれ登録審査があるが、1,000フォロワーくらいあれば大抵通る。
これら仲介サイトそれぞれに様々な案件が掲載されている。案件ごとに「50,000フォロワー以上限定」「女性限定」等の指定があり、男性向けの案件が明らかに少ないことにすぐ気づく。
そんな中から応募したい案件を探す様子は、学生の頃に登録していた日雇いバイトサイトを眺めているのにも似ている。
ざっくりと分けて、商品の紹介・飲食店の紹介・ホテルの紹介が案件として並ぶ。
2. 応募する
良い案件が見つかったら応募する。応募する際に意気込みを添えたり、「3回以上ストーリーズに投稿します」のようなコミットをしたりする。
フォロワーがそこまで多いわけではない僕は、ここでちゃんとコミットすることで採用率を上げる必要がある。
3. 採用を待つ
応募後すぐに採用の連絡があることもあれば、応募日締切後まで待つこともある。
各仲介サイトにメッセ機能があって、採用されたらそこで企業担当者とコミュニケーションする。
7,000そこそこだと採用されないことも多い。
4. 商品を選ぶ・受け取る
例えばTシャツのギフティング案件であれば、色やサイズを選んで伝えるようなコミュニケーションが発生する。数日で商品が届けられるのでそれを受け取り、受け取った旨の連絡も入れる。
ホテルであればここで日程や部屋などの調整をする。
5. 写真を撮る
届いた商品を身に着けて撮影する。このとき、スタイリングを考えて、服を着て、撮影するということをする。
このとき「3回投稿します」という約束をしていると、スタイリングを3つ考えて、撮って着替えてを繰り返すことになる。
僕はオフィスの壁一面を簡易撮影スペースにしているので、服をバックパックに詰めて持っていきまとめ撮りしている。
6. 写真を編集する
撮ったスナップは明るさやコントラストを調整してトリミングする。必要に応じてテキストを載っける。人によっては肌をつるつるにしたり目を大きくしたりウエストを細くしたりしている。僕はしていないが、5-6枚撮って良いものを選定するくらいのことはしている。
以下のスナップはヴィンテージショップ『ValuE+91』さんにいただいたLoeweのクラッチをPRするためのもの。
着替えて、撮って、編集する手間に思いを巡らせてほしい。
(ショップ自体本当に素敵なところ。だから案件を引き受けたいと思った。ぜひ覗いてみてほしい。)
7. 投稿内容を事前確認する
指定のハッシュタグやメンションを折り込んで本文を作成して、仲介サイトの管理画面で企業に事前確認をお願いする。
今のところ差し戻しが入ったことはない。
8. 投稿(予約)する
インスタで投稿するのにも実は大変な手間がかかる。
というのも、僕も含めて多くのインスタグラマーは自分のタイムラインが「3×nマス」の連続としてプレゼンテーションとなるよう、趣向を凝らしている。
投稿期日も決まっている中で、どのタイミングでどのように差し込んでタイムライン全体のバランスをキープするか。設計に意外と時間を取られる。
Instagram: @satoshi_sakai
9. 結果報告する
投稿後、1週間後くらいに投稿URLやインプレッション数、LIKE数などをまとめて報告する。
このとき管理画面のキャプチャ画像が求められることもある。
報告後、承認の連絡を経て晴れて完了となる。
「お仕事」の完遂はすごく大変
フローを分解して見ていただければ察しがつくかと思うが、めちゃくちゃ手間がかかる。面倒くさい。
これでどれくらいの報酬が得られるかというと、実は1円ももらえない。
商品やサービスは無料で提供していただける。「加えて現金報酬も」となると、今や7,000フォロワーそこそこだと適わない。
ストーリーズにリンクを設置できる10,000フォロワーが最低ラインになってくるかと思う。
「数千円〜数万円の商品やサービスを提供してもらえることがある。ただし大変な手間がかかる」
これが現実であって、「そんなにおいしい思いはできない」という結論に僕は行き着いている。
インスタグラマーが、自己承認欲求の象徴としてネガティブな文脈で語られることが多い。
けれど、僕が出会った彼ら彼女らの多くは何か目標を持っていて、その目標を達成するためのファンの基盤を築くプロセスとして取り組んでいる。
現実問題として、かかる労力の割に、目先のメリットは大してない。
LIKEの数が10か100かはともかく、100か1,000かという段階になってくると承認欲求が満たされる度合いに大差はない。
現実を知った読者の皆さまにはぜひ、チョロくない、おいしくないことに取り組んでいるインスタグラマーを見る目に、労いを添えていただけると幸いである。
「お仕事」の外側
分かりやすい実益につながる「お仕事」だけがインスタグラマーのメリットではもちろんない。
好きなアーティストの展示会に足を運んで、写真を撮って、ストーリーズにアップしたら24時間で数百人が見てくれる。
そうやって自分が好きなものに勝手に貢献できることを僕は今のところ一番のメリットに感じている。
この記事を読んでインスタグラマーになることに興味を持てた物好きは、チョロくない、おいしくないことに取り組んでみてはいかがだろうか。
僕がフォロワーを増やす上で実践していることのほとんどが、艸谷さんの本に書いてある。
数万フォロワーになったらこの続編を書きたいと思っているので、ぜひInstagram( @satoshi_sakai )をフォローしてご期待いただきたい。