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厳しい冬が少し和らぎ、入学や進学の準備をされる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

入学準備というと、昔は一つずつ手書きで持ち物に名前を書いたものです。

近年は便利になり、名前入りのシールを貼るだけで準備ができるような「お名前シール」が増えてきています。

実は持ち物に名前の記入が必要なのは、教育現場に限ったことではありません。

介護現場でも施設入居の際、名前の記入が必要です。

様々なお客さまからのご要望によって、子ども向けのお名前シールを介護現場へ展開できるようにした企業があります。

株式会社クレアフィールドは介護現場に特化した名前シールを制作しています。

 

介護現場における問題とは?

地域のための取り組みとは?

 代表取締役の松田大佑さんにお伺いしました。

 

お名前シールを介護の現場に

株式会社クレアフィールドは2019年に創業しまして、介護向けのお名前シールを販売しています。

当初、別会社で子ども向けのお名前シールを作っていたのですが、お問い合わせの中に介護向けのシールが欲しいというご要望があり、当時そのような事業をあまり見かけることがなかったので、ないのであれば介護専門でやってみようと会社を立ち上げました。

例えば、子ども用のシールはおはじきセットやプラスチックなどに貼る機会が多いのですが、介護用は衣類などの布に名前を書く場面が多いので、そのような介護現場にあった商品を開発・販売しています。

 

印刷会社から介護用シールを開発

元々は株式会社マツダスクリーンという、シルク印刷を専門で行なっている父親が代表の会社で勤務していました。

父親が60歳くらいになった時に、引退するという話が出たのですが、その時に兄と話す中で、兄も私も2代目なので実際に創業をしたことがなく、創業をしてみたいと思い、別に株式会社クレアフォームという会社を立ち上げました。

それが子ども向けのお名前シールを専門に開発・販売している会社です。

その会社で販売する中で、年間200件ほど高齢者の方からお問合せをいただくようになりました。

子ども向けシールは基本的にインターネットで販売していたので、高齢者の方からシールが欲しいが買い方がわからない、クレジットカードは使いたくないから電話で注文を受けてもらえないかなど、そういったお問合せが多々ありました。

そのような状況を受けて、高齢者の方へはやはりインターネット販売は難しいかなということで、高齢者の方に即した商品、そして販売方法に特化した会社を作ろうと考え、株式会社クレアフィールドを立ち上げました。



布に直接貼り付けられるシール

前述の通り、子ども向けのプラスチックに貼るようなお名前シールや、タグに貼れるノンアイロンシールが元々ありまして、それを商品改良して布にある程度貼り付けられるような製品を開発しました。

しかし、介護施設では施設で一気に洗濯して、乾燥機にかけます。

そうすると、なかなか耐えられるシールがなかったので、洗濯・乾燥に強いシールを作ろうと、一から開発することになりました。

粘着剤自体の開発となると、弊社の力だけでは難しいので、あらゆるメーカーに洗濯耐性がある粘着剤の開発を手伝ってくれないかとお声がけをさせていただいたのですが、全てのメーカーに理屈的にできませんと断られてしまいました。

それからも人脈を辿りながら協力者を探している中で、ある研究所が1回やってみましょうと言ってくださって、何十回とテストを繰り返し、試行錯誤して1年半くらいかけて粘着剤を完成させることができました。

基材についても普通のシールはプラスチックでできていて、表面がツルツルしているものが多いですが、弊社は布でできた基材を開発しました。

プラスチックの基材だと、折れ曲がると線や型が入ってしまったりするのが、布の基材だと入りにくいですし、布に貼るにはやはり布が馴染みやすいとなり開発した基材です。

そしてインクや印刷方法も新たに選定して、やっとできたのが「布〜るシール」です。

このシールはJISのC4M法という洗濯・乾燥機テストを受け、完全剥離なしと結果が出ていまして、布に直接貼って、洗濯・乾燥も可能という商品ができました。


ほんの小さなことでみんなが幸せに

電話でご注文いただいた方で、後からお礼の手紙をいただいたことがありました。

その方はご家族が介護施設に入る際に、衣類にマジックで手書きで名前を書いたら、こんな恥ずかしいもの着ていきたくないから介護施設に入らないと言い出してすごく困ってらっしゃったそうなんです。

そんな中、弊社のシールを知っていただいて、使っていただくことで無事に入居してくれたということでした。それが私の中では結構励みになっています。

子ども向けシールは入園入学のとき当たり前に使っているのですが、介護も同じなんですよね。

入居時は絶対名前を書かないといけないので、入園入学と同じように必要です。

でも、入居となった時にお名前シールはまだまだ認知されていないのが現状です。

お名前シールを使ってもらうことで、ご家族や施設が楽になって、入居されるご本人も幸せになれる。

ご家族の方が書いた名前ならまだしも、施設側で代理購入をして名前を書かなければならないときにやはり手書きだと読みにくかったり、あまり綺麗ではなかったり、トラブルになることもあると聞きます。

そのようなトラブルを少しでも解消できたらと思っています。

正直、介護向けのシールはあまり売上は伸びていません。

でも、なんとかお客様の困りごとを解消したい、改善のお手伝いがしたいという想いを基本理念において、介護現場に広げていきたいと思っています。


創業間も無くコロナ禍に

元々製造業出身なので介護現場というところが全く未知数の中、どうやって広げていこうかと悩みながらも施設にアプローチする準備をしていたのですが、創業後すぐにコロナ禍になってしまい、アポをとっていた施設も出入り禁止という状態になってしまいました。

そのような状況の中、介護施設に衣類などを持ち込んで出張デパートとして販売されている会社の方と知り合い、介護施設にどうやってアプローチすれば良いかなどのアドバイスをいただきました。

介護は普通の業種とはかなり違っていて、通常企業はどうしても利益を求めますが、介護の現場は利益を求めないんです。

そのような現場でお金を出していただいて商品を購入していただくにはどうすればいいのか、アドバイスを頂きながら改善しています。

インターネットで認知を広めながら、電話でいただいた問合せで少しずつ広げて、この2年ほどはある程度施設でも使っていただき、実績を積んでいます。

ようやくコロナの規制も少しずつ緩和され、やっと先月ごろからアポが取れるようになってきました。ネット販売や電話での直接的な販売と並行して、介護施設で入居時にご案内いただくようなビジネスモデルも作っていくことで、広く知っていただいて気軽に手にとっていただけるようにしていきたいと思っています。


布〜るシールの発展、そしてさらなる商品へ

今後、布〜るシールを広めていくことはもちろんですが、商品としても少しずつ発展させたいと思っています。

シールにお名前と電話番号を入れられるようにしていますが、介護施設では脱走や徘徊するような方も多々いらっしゃるということから、住所などを詳しく載せることも考えました。

しかしこの案では、個人情報の取り扱いや情報量の多さなど、難しい問題がありました。

そこで現在は、お名前の横にQRコードをつけて、そのコードを読み取ると施設の情報が出てきて連絡することができるというシールの開発を進めています。

近頃はアパレルメーカーからもお問い合わせいただくことがあって、服のタグを縫い付ける工程を少しでも減らすために、シールでタグを作れないかというご相談を受けました。

また、布〜るシールのために開発した粘着剤ですが、実際出来上がるとかなり特殊な粘着剤になりまして、フッ素樹脂やポリアセタールなどの難接着の素材に対してもとても粘着強度が高いことがわかりました。

そこで今、この粘着剤を使った裾上げテープなどの両面テープの開発を進めています。

さらに、この両面テープを貼り付けることで、元々洗濯耐性のない素材に洗濯耐性をつけられないか検討したり、まだまだいろいろな可能性があると思っています。

布〜るシール

地域全体をより良くできるように

私自身、堺生まれ堺育ちで事業をしていると自分は知らなかったけれど兄と知り合いだったり、そういったつながりでビジネスが発展することもありますね。

今はS-Cube(さかい新事業創造センター)に入らせていただいているので、企業間の横のつながりもあったり、いろいろな話を聞けて、情報交換ができるというのがいい場所だなと思っています。

例えば、ある時ロボットを作る企業の方に伸びる基盤があるという話を聞いきました。とても興味を持ったので、その基盤を弊社の粘着剤で衣類に貼り付けてバイタルを測定するなど、なにか介護現場で活かせないかといったことを考えていました。

その結果、縁あって伸びる基盤を制作している人が新たに弊社に加わってくれることになって、現在何か商品化できないか検討しています。

いろんな企業がいるからこそ、個々に事業をしているだけでは生まれないような技術が生まれてくるように思います。

そのようにいろいろな角度から介護現場の問題解決に力添えできればと思っています。

 

加えて、弊社自体も業務改善を積極的におこなっています。お名前シールの作成は1個1個オーダーメイドになるのですが、データを一つずつ作っているとすごく時間がかかるので、その部分を自動化するためにRPAを導入し、単純作業を効率化して最終の印刷データまで落とし込むようにしました。

それによって生まれた時間で広告を作ったり、HPを修正したり他の業務にリソースをさけるようにしました。

また、弊社ではお名前シールを印刷した後のカットから梱包までの作業を、就労支援や雇用促進の観点から就労継続支援B型作業所の方にお願いしています。

そこでの作業に関しても、お名前シールに工夫をして、管理番号をシール1枚1枚につけて、梱包の時に1から順番に数字を並べれば梱包できるような仕組みを作り、誰にでも簡単に作業できるようにシステム化しています。

 

介護現場の改善に加え、就労支援、そして新たな雇用の創出など、地域全体で良い方向に進めるように少しでも力になれたらと思っています。


株式会クレアフィールド
株式会社クレアフィールド (creafield.co.jp)


布〜るシールのオンラインショップ
介護用お名前シールのクレアフィールド (creafield.com)

堺市イノベーション公式Instagram
【堺市イノベーション】(@sakai_innovation) • Instagram写真と動画


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