#03 Classmate株式会社
世界的なパンデミックから2年。
少しずつ行動制限が緩和され、長い間行けなかった海外へも少しずつ行けるようになってきています。
この2年、私たちはもちろん、子どもたちもなかなか思うように行動できず、本来学べることが学びにくい状況の中にいました。
子どもたちの学びを止めてはいけない。
そのような思いで、パンデミックの最中「海外留学」を実現した企業があります。
Classmate株式会社は、メタバース空間に学校を作り、その中で海外留学を行うことで、英語学習はもちろんのこと、国際交流・異文化コミュニケーションをより手軽に身近なものにしました。
新しい時代の海外留学とは?
そして、子どもたちの未来のためにできることとは?
代表取締役の井坂浩章さんにお伺いしました。
パンデミックでも 安心安全に海外留学を
Classmate株式会社はパンデミック中の2021年5月に設立した比較的新しい企業です。
弊社は、コロナ禍で海外留学に行けない、留学費用が高額で留学できないなど、なかなか留学できない学生の方向けに、2Dと3Dのメタバース空間にバーチャル教室を作り、その中で留学を体験できるプログラムを作っています。
プログラムは大きく分けて3つありまして、
1つはマンツーマンでフィリピンの先生と英語で話す練習をする授業です。いわゆるオンライン英会話です。
2つ目はフィリピンの提携校の中・高・大学と連携して、日本の小・中・高・大学生とバーチャル空間で国際交流するプログラムです。
最後に、ライブスタディーツアー。通常フィリピンに留学に行くとスタディーツアーという形でフィリピンの町を散策できて、いろいろなものを見ながら英語を使ってコミュニケーションをとります。それをバーチャル上でライブスタディーツアーとして、現地と中継をつなぐことで、実際にリアルタイムで現地を見て、現地の人、例えばストリートフードを売っている人に質問してみたり、擬似体験できるようなサービスを提供しています。
自身の留学経験から、留学をもっと身近なものに
私自身、出身は堺なのですが、大学時代から留学していて、約3年海外留学をしていました。
旅行でも25カ国以上を旅して、16年くらい海外生活をしていますが、その中で今から20年ほど前の2002年、中米のグアテマラでスペイン語留学をしました。
それまでは3年間ニュージーランド・オーストラリア・アメリカと留学していて、今度はスペイン語を勉強したいと思った時に、スペイン語を学ぶのはスペインだという思い込みがあったのですが、たまたま留学先のサンフランシスコの書店で出会った本に「中米のグアテマラが世界で最も安くスペイン語をマンツーマンで学べる」と書いてありまして、そこからネットで調べてグアテマラに行きました。
そして、グアテマラでスペイン語をマンツーマンで勉強したら、片言ですが2週間でマヤの遺跡を旅できるくらいのスペイン語は身につきました。
それがとても画期的で。それまでアメリカなどでは1人の先生に対して20人の生徒でグループレッスンだったので、ほとんど先生の話を聞いているだけのような授業でした。
でも、マンツーマンだと言語を話す時間がたっぷりある。普通はマンツーマンとなると費用が高いのですが、グアテマラは発展途上国なので費用も安くレッスンを受けることができました。
また、途上国の人たちはみなさん目がキラキラ輝いていて、夢をいっぱい持っているんです。
グアテマラ人のお家にホームステイした時も、子どもたちがサッカー選手になりたいとか、お医者さんになりたいとか話してくれて。
日本に帰ってくると、子どもたちはあまり目標がなかったりするという状況を見て、すごく対照的に思えました。
その経験から私はスペイン語でしたが、英語で同じように勉強することはできないか、そのキラキラと輝いている途上国の人たちと交流できるようなシステムはないかと考えた時に、そのようなサービスはまだありませんでした。
そこから英語を安価でマンツーマンで学べる場所を探そうと、アジアを数カ国回ってリサーチしていったんです。
アメリカ留学時代にフィリピン人のお家にホームステイしていたこともあり、フィリピンの人は英語が堪能で、優しいということは知っていましたが、そのフィリピン人の友達から、フィリピンはおすすめしないと止められていたこともあり、ASEANの国、シンガポール・マレーシア・バリ島などを回りました。
しかし、なかなか良い土地が見つからない中、フィリピン人の友達が「セブだったら行ってみてもいいと思うよ」と言ってくれて、セブに行ってみたんです。
バックパック背負って、誰も知り合いのいないフィリピンの空港に一人で立って、学校作るぞ!と。現地の学校に飛び込み訪問して、校長先生に交渉して、英語の授業を見学させていただきました。
すると、英語の先生の発音が綺麗で、人は優しくて、ここしかないと思って2008年にフィリピンに学校を作ることを決めました。
そこから、現地のパートナーが必要なので、探して、2009年に運よくパートナーと出会え、2010年に学校を設立し、フィリピン留学を立ち上げました。
当時、Twitter中心に営業活動を始めて、少しずつ生徒が集まってきました。私たちの生徒さんはマンツーマンで英語を話す練習をするので、スピーキングテストの成績がすごく上がったんです。そして何より費用が安価です。
そうすると、費用対効果が良くて、さらにフィリピン人と出会って、フィリピン人が優しいことを知ってくれて、どんどん口コミで広がって。
自分がグアテマラで経験したことをみなさんがフィリピンで経験してくれて、いいサービスだと思ってくれたんです。
パンデミックの中、できることは何か
2010年から生徒も増えて、2020年3月までフィリピンで留学の学校を運営していました。
そこに突如パンデミックが発生して、フィリピンでは国の政策ですべてのサービス運営が禁止されました。
当時働いてくれていた先生やスタッフが100人以上いて、いきなり仕事ができないという状況になったものですから、そこから仲間とどうしようか相談し、実際に留学するのが難しければ、バーチャルで留学できないかということを考えて、一緒にプログラムを作ったのが始まりでした。
当時はメタバースというキーワードすらなくて、香港のベンチャー企業がバーチャル空間を使ったサービスをしていたので、それでバーチャル留学してみようと実験的に始めました。
当初は一時凌ぎで、先生たちの仕事をなんとかしたい、雇用を維持したいという思いで行っていたのですが、同じように留学したいけどパンデミックでできないという状況に陥っておられた学校の方々の需要と合いまして、どんどん広がっていったのでこれは正式に事業化すべきだと思い、昨年設立となりました。
今もまだコロナ禍で安全安心に留学するというのはなかなか難しく、特に教育という場面では難しい状況です。さらにインフレや円安が進んで、費用も高くなってきています。
しかし、それを理由に学生たちの学びが2年間止められてしまっているという状況なので、バーチャル留学を通じて、国際交流・異文化交流する機会を失わないでほしいと思っています。
日本に帰ってきて、さらに大きな問題も感じました。
学校教育として学校経由で留学できる生徒の少なさです。
原因は費用であったり、距離・環境の不安などです。フィリピン留学を作ったことで、欧米への留学に比べ費用は大体半分くらいにはなったと思います。それでも単純に教育の費用だけでなく、航空券、海外保険を含め、いろいろな費用がかかってきます。
それであれば、現地留学よりさらにハードルの低いメタバース空間から、安全安心に安価で留学できる仕組みがあれば、そこから自信を持った生徒がフィリピンに実際に行ってみようという後押しになるかもしれない。そう考えています。
現地留学のパイオニアだからこそできること
従来の英会話は基本的に英語学習のみに特化していて、それがオンラインかオフラインかの違いですが、前述の通り、我々Classmateはオンラインで費用を抑えつつ、英会話だけでなく異文化理解であったり、国際交流がライブでできるところが大きな特徴です。
当時、メタバースを使って学校向けに提供する企業はほぼなかったと思います。
そして、以前よりフィリピンに留学に来てくれていた学校から、コロナ禍になって留学に行けなくなったけれど、どうしたら良いかと相談がありまして、メタバースを活用したオンライン留学はいかがでしょうか?
とご提案したところ、好評いただき3年連続で使っていただいている学校もあります。
国際交流やライブツアーがすごく学校に人気なんです。
本来、どちらかが現地に行かないと交流できないのに、それがお互いの教室から話せる。
そこで、同時に同じ年代の人と会話ができる。
従来の英会話というのは、ほとんど英語の先生としか話さないのですが、これって正直リアリティが無いと思うのです。
現地にいる方々の英語は、英語の先生と違って綺麗な発音ではなかったり、訛っていたり、ボキャブラリーに差があったりするので。
一般の人と話す経験が非常に大事だと思っています。
そして、同じ年代の学生がバンバン英語で話しかけてくること。
そうすると、日本の生徒も興味を持って、英語学習のモチベーションに繋がるんですね。
現地の学生のように、英語を喋れるようになりたいと言う生徒がいたり、テレビでフィリピンという単語が流れると反応する生徒がいたり。
実際に現地に行くとそのように思ったり、反応したりする生徒はたくさんいるのですが、バーチャルでも同じような反応が出てきたというところが大きな違いですよね。
また、今年の夏休みには、堺市で小・中学生を対象にライブスタディーツアーを開催しました。
現地を中継で繋いで、バーチャル教室に来ていただくと、現地の先生が町に出て案内してくれます。ライブ中継なので、目の前でバスが走っていたり、猫が飛び出してきたり、現地の人にインタビューしたり、いろいろなものを見たり聞いたりしながら英語を話してもらいます。
これが生きたコミュニケーションですよね。本当のリアルな世界。
もちろん、現地留学ではその世界をいっぱい体験できるのですが、バーチャルでもそれができるというところは、実際に現地留学で培った我々の強みですね。
子どもたちのために10年先、20年先を考えた教育を
固定の教室を持たないメタバースの学校をスタートして、これから3つの事業を考えています。
1つは現状のオンライン留学のサービスを継続し、新しい学校にどんどん広めていくことです。
現在は短期の留学だけではなく、通常の英語クラスに組み込んだり、学校の放課後にレッスンを行っています。
また、高校では今年から探究という新たな学科ができました。基礎的な知識や技能を活用して、課題解決に向けて取り組むというような学科です。
この探究と英語を組み合わせて、グローバル探究クラスを提供しています。
このように日々変わっていく教育現場に合わせて、先生方と打ち合わせをして、どういうことを取り入れたいかヒアリングした上で、オーダーメイドでサービスの提供が可能ですので、短期留学だけでなく、いろいろなご要望に合わせて、たくさんの学校に広げていきたいと思っています。
2つ目は、メタバースの先、いつになるかはわからないですが、コロナ禍が落ち着いて安全に現地に行けるようになったら、ASEANへの研修旅行を提供していきたいです。
メタバースで留学する中で、フィリピンに触れ、それによって夏休みや春休みに現地に行きたいと言ってくれる子どもたちもたくさんいます。
そういう子どもたちのために、オンラインとリアルを組み合わせたハイブリット型の留学を提案したいと思っています。
仮に費用がなくて、現地に行くのが難しくオンラインで参加したとしても、別の生徒が現地に行き、そこでライブツアーをつなぐことで、実際の町を見て、中継で友達と一緒に買い物することだってできる。
また、事前に何度かオンラインで現地の学生と繋がった上で夏休みに現地に行くと、迎え入れてくれる生徒たちとも、もう友達のように触れ合うことができる。
このように、バーチャルとリアルを組み合わせて、より円滑に異文化交流できるようなシステムを作っていきたいと思っています。
3つ目は、学校メタバース企画販売です。
もともとフィリピンでリアルの学校を10年間やってきて、今日本の学校を見ると40人ほどの生徒に対して1人の先生が授業をして、机の上には紙。アナログなんですね。
政府はデジタル庁を作ったり、学校のSociety5.0を打ち出したり、デジタルへの移行を推進しています。
でも現場がなかなか対応できていない現状です。
そんな中、我々は実際にリアルな学校からメタバースへデジタルトランスフォーメーションならぬ、バーチャルトランスフォーメーションしたんです。
この仕組みを使って我々と同じような形で学校に使っていただくことができると思っています。
学校向けのメタバース教室ができると、たとえば出席管理や成績管理、レポートなどもバーチャルでできて、学校を休まなければならない時も電話で連絡しなくてもワンタッチで連絡できる。さらにはバーチャルの教室とリアルな教室をシームレスに繋ぎ、なんらかの事情で学校に行けない生徒も家からバーチャル教室に行って授業を受けて、リアルな教室に行けるときは実際に行ってというようにどこにいても同じように授業を受けられる、そういった仕組みを提供していければと考えています。
加えて、今教育現場で先生たちの働き方も非常に問題になっていると思います。
バーチャル教室が可能になると、生徒は多様な教育が受けられるようになり、先生方の負担も分散するので、学校の働き方改革にも繋がると考えています。
本当は、学校は子どもたちのために10年先、20年先の人生を考えた教育をしなければならないのに、まだ昔から変わらない古い教育がずっと続いているように感じます。
我々としては、学校をアップデートするお手伝いもしていけたらと思っています。
Classmate株式会社HP
オンライン留学・オンライン国際交流のClassmate|高校・大学向けプログラム (classmatejp.com)
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