クローン病の症状を理解しよう
クローン病は消化管全体に炎症が起こる病気で、その症状は多岐にわたります。この記事では、クローン病の主な症状について、具体的に説明します。
1. 腹痛と消化管症状
クローン病の患者さんが最もよく経験する症状の一つが腹痛です。特に、炎症が起こりやすい回盲部(小腸と大腸の境目付近)での右下腹部の痛みが一般的です。腹痛に加えて、慢性的な下痢や便秘がみられることもあります。
便の形状と種類:ブリストル便形状スケール(Bristol Stool Form Scale)
便の形状は消化器の健康状態を反映し、便の観察は消化器疾患の早期発見に役立つことがあります。そのため、便の形状や種類を理解することは重要です。ブリストル便形状スケール(Bristol Stool Form Scale、BSFS)は、便の形状を7つのタイプに分類した指標で、便の性状を簡単に評価できるツールとして広く使用されています。ここでは、BSFSについて詳しく解説します。
ブリストル便形状スケール(Bristol Stool Form Scale)
ブリストル便形状スケールは、便の形状を以下の7つのタイプに分類しています。それぞれのタイプは、便の硬さや形状、便秘や下痢の状態を示しています。
タイプ 1: コロコロした硬い便
小さな塊状で硬く、個別に分かれた便です。
便秘が疑われる状態で、排便時に痛みを伴うことがあります。
タイプ 2: ソーセージ状で表面が凸凹した便
塊状で硬いですが、タイプ1より少し大きめの形状です。
依然として便秘傾向にあり、便が通過しづらいことがあります。
タイプ 3: ソーセージ状で表面がひび割れている便
比較的正常な形状で、硬さも適度です。
健康な便の範囲内で、排便も比較的容易です。
タイプ 4: ソーセージ状で滑らかで柔らかい便
健康的な便とされる理想的な形状で、バナナ状やソーセージ状です。
通常、便秘も下痢もない状態で、排便がスムーズに行われます。
タイプ 5: 柔らかい塊状の便で、くっつきやすい
柔らかくて少し形が崩れやすい便です。
通常の排便が維持されていますが、食物繊維不足が疑われることもあります。
タイプ 6: 粘土状で不定形な便
ドロドロとした形状で、塊にはならずに軟らかい便です。
軽い下痢の兆候を示すことがあり、排便回数が増えることがあります。
タイプ 7: 水のような液状の便
完全に液体状の便で、下痢の状態です。
消化不良、感染、または他の消化器系疾患のサインとなることがあります。
2. 肛門の症状
クローン病は、肛門周囲の病変が特徴的です。痔瘻(じろう)や肛門周囲膿瘍(のうよう)などの症状が現れることがあります。これらは、肛門から痛みや膿が出るような状態で、炎症が進行すると発生することがあります。
3. 全身症状
クローン病では、消化管の炎症が原因で全身に影響を与えることがあります。主な全身症状としては、以下のものが挙げられます。
発熱
全身の倦怠感
食欲不振
体重減少
特に、腹痛や下痢がない状態でも、これらの症状だけで病院を訪れ、クローン病と診断されるケースもあります。
4. 腸管の狭窄による症状
クローン病が進行すると、腸管が狭くなってしまう「狭窄(きょうさく)」が起こることがあります。これにより、以下のような症状が現れることがあります。
嘔気(吐き気)
腹部の膨満感(お腹が張る感じ)
腸閉塞による腹痛
狭窄が進むと、食べ物や消化液が腸管を通り抜けることが難しくなり、深刻な症状を引き起こすこともあります。
5. 腸管に穴があくことによる症状
クローン病の炎症がさらに進行すると、腸管に穴が開くことがあります。これにより、腹腔内に膿がたまる「腹腔内膿瘍」や、腸と腸、または他の臓器との間に異常な通路ができる「瘻孔(ろうこう)」が形成されることがあります。これらが原因で、強い腹痛や高熱などの症状が出ることがあります。
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