透析患者の心房細動 〜 透析後半に起こる原因と対策とは? 〜

透析中や透析後半に心房細動(AF, Atrial Fibrillation) を発症する患者がいることは、透析医療の現場でもよく見られる現象です。

「除水が進むことで血液量が減り、心臓に負担がかかるため」と説明することが多いですが、実際には それだけが原因ではなく、複数の要因が絡み合っています

そこで今回は、透析中に心房細動が発生する主な原因と対策 について、わかりやすくまとめました。


心房細動が起こる主な原因とは?

① 除水による循環血漿量の減少

透析後半になると、水分が除去されることで血圧が低下し、心臓に負担がかかる ことがあります。
特に左心房の内圧が急に変動すると、心房の興奮が異常をきたし、心房細動が発症しやすくなります

対策

  • 急激な除水(UF rate > 10mL/kg/hr)を避ける

  • 透析前の体重増加を適切に管理する(ドライウェイトの調整)


② カリウム・カルシウム・マグネシウムの変動

透析では 血液中の電解質(K, Ca, Mg)が急激に変化 することがあり、不整脈の原因になります。

  • カリウム(K)が急に低下 すると、心筋が異常興奮しやすくなる。

  • カルシウム(Ca)が低すぎると、心筋の伝導が乱れる

  • マグネシウム(Mg)が低くなると、心房の安定性が損なわれる

対策

  • 透析液のK, Ca, Mg濃度を適正に設定する

  • 透析前のカリウム値が高い患者は、透析中の急激な変動を避ける工夫をする


③ 交感神経の過剰な刺激

透析によって血圧が変動すると、交感神経が過剰に反応し、心拍数が上昇しやすくなります
また、透析による炎症反応(IL-6、TNF-αの増加)も交感神経を刺激する要因になります。

対策

  • 除水速度を適切に管理し、血圧の急激な低下を防ぐ

  • 過度なストレスを避け、リラックスできる環境を作る


④ 心臓の構造的な変化(リモデリング)

透析患者では 心房の線維化や拡大(左房拡大, LAE) が進んでいることが多く、
その影響で 心房内の電気的異常が起こりやすくなる ことがあります。

対策

  • 心エコーで心房のサイズや機能を定期的に評価する

  • 心房負荷を軽減するために、血圧・体液管理を徹底する


⑤ 既存の心疾患(冠動脈疾患・心不全・弁膜症)

透析患者は心疾患を合併している割合が高いため、
透析中の血圧低下や除水による影響で 既存の心疾患が悪化し、不整脈が誘発される ことがあります。

対策

  • 心電図モニタリングを行い、異常があれば早めに循環器医と連携する

  • 必要に応じて抗不整脈薬や抗凝固療法を検討する


まとめ:透析中の心房細動を防ぐためにできること

💡 心房細動を予防するために、次のポイントを意識しましょう!

急激な除水を避ける(適正なUF rate設定)
カリウム・カルシウム・マグネシウムのバランスを管理
交感神経を刺激しすぎない工夫(血圧変動の抑制)
心房のリモデリングを進行させないために、血圧・体液管理を徹底
既存の心疾患が影響している可能性があるため、循環器と連携する

透析患者の心房細動は「一つの要因」だけでなく、複数の因子が組み合わさって発生する ため、
包括的に管理していくことが大切です。

透析医療の現場では、患者ごとにリスクを評価しながら、最適な透析条件を設定することが求められます。
透析を受ける方が 少しでも快適に過ごせるよう、医療スタッフができるサポート を続けていきましょう!

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Yusuke
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