リン(P)が上昇しない透析患者のための食品摂取ノウハウ
透析患者さんにとってリン(P)の管理はカリウムと並んで重要です。リンが高くなると骨や血管に影響を及ぼし、透析治療が安定していても健康を損なうリスクがあります。しかし、リンの摂取を気にするあまり栄養が偏るのもよくありません。本記事では、透析患者さんが安心して食品を摂取しながらリンの管理を行うための具体的な方法を解説します。
透析患者とリン(P)の関係
1. リンの役割
リンは骨や歯の形成に必要な重要なミネラルであり、エネルギー代謝や細胞の維持にも欠かせません。しかし、透析患者さんは腎臓の機能が低下しているため、体内からリンを排出することが難しく、血中リン濃度が上昇しやすくなります。
2. リンが上昇するとどうなる?
血中リン濃度が高い状態(高リン血症)が続くと、以下のような影響が現れます:
骨がもろくなる(腎性骨異栄養症)
血管や心臓にリン酸カルシウムが沈着し、動脈硬化や心疾患を引き起こす
かゆみや倦怠感が強まる
リンをコントロールする食品摂取のポイント
リンはさまざまな食品に含まれているため、完全に摂取を避けることはできません。しかし、以下の工夫を取り入れることで、リンの摂取を抑えつつ栄養バランスを維持することが可能です。
1. リン含有量の少ない食品を選ぶ
食品の中にはリンを多く含むものと少ないものがあります。以下を参考に食品を選びましょう。
リンが少ない食品:
野菜(キャベツ、キュウリ、モヤシなど)
果物(リンゴ、梨、イチゴなど)
米やうどん、白パン
リンが多い食品(注意が必要な食品):
加工食品(ソーセージ、ハム、スナック菓子)
チーズ、牛乳、ヨーグルト
魚卵(イクラ、たらこ)
内臓肉(レバー)
2. リンを抑える調理法
調理の工夫によって食品中のリンを減らすことができます。
茹でる:
食材を茹でることでリンが湯に溶け出し、摂取量を減らせます。茹で汁は捨てましょう。
味付けを工夫する:
チーズやソースの代わりに、リン含有量が少ない調味料(ポン酢、レモン汁など)を使う。
煮物の工夫:
煮汁を飲まず、食材だけを食べることでリンの摂取を抑えられます。
3. 食事量を調整する
リンを多く含む食品は量を減らして摂取します。
例: チーズは1枚ではなく半分にする、牛乳は200mlではなく100mlにする。
タンパク質を摂取するときは、適切な量を守ることが重要です(例:1食あたり肉や魚は50〜70g程度)。
4. 食品添加物に注意
加工食品には、リン酸塩などの食品添加物が多く含まれていることがあります。以下の点に注意しましょう。
加工食品を減らす:
スナック菓子、インスタント食品、清涼飲料水は控えめに。
食品表示を確認する:
「リン酸」や「リン酸塩」が含まれている食品は避ける。
リン吸着薬を活用する
透析患者さんの多くは、リン吸着薬を処方されています。食事の際にリン吸着薬を適切に服用することで、食品中のリンが体内に吸収されるのを防ぐことができます。
リン吸着薬の使い方のポイント
タイミングを守る:
食事中または食後に服用することで効果を最大限に引き出します。
主治医や薬剤師に相談:
副作用が気になる場合や、服用方法について不明点がある場合は、必ず医療スタッフに相談しましょう。
食事全体でリンを抑える工夫
透析患者さんのリン管理は、食品ごとの選択だけでなく、食事全体のバランスを意識することが大切です。
1. カルシウムとのバランス
カルシウムを十分に摂取することでリンの吸収が抑えられます。
牛乳などの代わりに、カルシウムを含むサプリメントや低リンの乳製品を選ぶと良いでしょう。
2. タンパク質との関係
肉や魚、乳製品にはリンが多く含まれますが、タンパク質の重要な供給源でもあります。
適切な量を守りながら、植物性タンパク質(豆腐や納豆など)を組み合わせて摂取すると良いでしょう。
3. 水分摂取の工夫
水分摂取量が制限されている場合でも、湯やスープを利用してリンを減らした食品を摂取する方法が有効です。
管理栄養士のサポートを活用する
食事管理が難しいと感じたら、管理栄養士に相談して、自分に合ったリン管理の方法をアドバイスしてもらいましょう。具体的な献立や食品選びのヒントが得られます。
まとめ
リン管理は透析患者さんの健康維持に欠かせない重要なポイントですが、正しい知識を持ち、工夫することで無理なく続けることができます。以下のポイントを実践しましょう:
リンを多く含む食品を控え、少ない食品を選ぶ
茹でるなどの調理法でリンを減らす
リン吸着薬を適切に活用する
食品添加物に注意し、加工食品を控える
食事は透析生活を快適にする重要な柱です。不安や疑問があれば、医療スタッフや管理栄養士と相談しながら進めていきましょう。それが健康的な透析生活を支える第一歩です。