命をいただく体験
帯広空港に13時に着いたので、その足でマリヨンヌへ。無理を言って14時に予約させてもらった。40日熟成の十勝若牛が完璧な仕上がりで、小久保シェフが「これからはこの肉だけでいい」というくらい美味しかった。
北海道大樹町で狩猟に同行した。知人は宿泊施設もやっているので、ジオードの門上さんと2人で泊めてもらった。大樹町と言えばロケットが有名だが、宿泊施設から発射台が見える。ロケットには興味がなかったが、実際に見るとわくわくする。
翌朝6時に鹿が罠にかかったというので見に行った。その場で放血させて解体施設に運んだ。すぐに皮を剥いで内臓を出し部位ごとに分割した。処理しているのは、24歳と27歳の女子2名だ。鮮やかな包丁捌きで一瞬にして終わってしまった。
皮を剥ぐまでは、非日常的な光景なので、門上さんはどんな気持ちで見ていたのだろうか、と後で気になった。死んでいるとは言え生々しい。でも、皮を剥いだその瞬間から、いままで生きていた動物という見方が変わる。それは、見慣れた枝肉だからなのか、それとも肉となり、日常的な光景だからなのか。
今度は昼過ぎに、ライフルで仕留めた現場を目の当たりにした。大きな雌鹿だった。まさに「命をいただく」という生から死、循環を体験する。しかし、何度見ても僕は慣れない。ハンターには向いてないな。
料理人は機会があれば体験したほうが良いと思う。精肉店で働いている人は、鹿もそうだが、日々扱っている牛の屠畜を一度は見るべき。体験したからといって何かが変わるということはないが、「知る」ということは大事なことであり、それは体験でしか得られない。
帰りの飛行機の時間が迫ってきたので、帯広空港へ。その前に大樹町の町長に表敬訪問に行こうとアポをとり訪ねることに。黒川町長は、牛のことや畜産の背景をよく知っているので、会話も弾んだ。あとで調べたら同級生だった。
明日で63歳です。免許更新に行かないといけないのだが、そろそろ返納しようかなと思ったり。車を運転しなければ事故をする確率も減るだろうし、維持費もなくなるしね。