僕は肉屋だが、動き方がかなり特殊だと思う。それもこれもスタッフが店を切り盛りしてくれてるからできることなのだが。とは言うものの、僕は現場からの叩き上げなので、たとえ数時間でも、肉に触れ、スタッフを指導し、言葉で伝えるようにしている。
昨日は、久しぶりに店長はじめスタッフの仕事を見る時間を作った。僕がチェックするのは、基本にブレがあるかどうかだけ。基本ができていないのに、いつのまにかアレンジが入り、もはや違う形になっていることがよくある。姿勢、包丁の使い方、筋の引き方から繊維の読み方など。
僕のやり方は、武道と同じで型があり、それは19歳のときに教えてもらったそのまま。僕には、肉のいろはを教わった師匠がいる。その師匠の師匠は僕の父親。父親にも師匠がいる。だから、僕の技術はおそらく何百年も受け継がれてきたものだと思う。なので僕がブレた仕事をしてしまうと、流派じゃないけど終わってしまう。
いまの時代、そういった技術を若者に教えるのは難しい。結局は精神論になるし、根性論になる。僕に手取り足取りの指導なんてできないし、やさしさなんか10分が限界だ。
肉屋やレストランで働いている若い子が、僕のnoteを読んでくれているみたいだが、毎日同じことを繰り返すことが近道だし、じつは、同じことをやっていても、少しずつ変化しているのです。例えば、毎日、焼肉用の肉を切っていても、一年後には、スピードが違うはずだし、厚さも均等に切れるはず。それができていないのは「意識」していないから。器用な子ほどその傾向が強い。
てことで、「草喰なかひがし」のジビーフ。前回食べたときがいままでで一番だったけど、今回がいままでで一番でした。基礎を叩き込まれた料理人は、年齢を積み重ねるごとに進化していくんですね。人間も料理も味わい深い。
ありがとうございます!