「護憲運動」のあり方は
「護憲」は「改憲」の対概念だが、「改憲」の動きの変化に対応した「護憲運動」は形成されてきただろうか。自民党は結党以来、9条をはじめとした「明文改憲」を主張してきた。これに対する「改憲阻止の護憲運動」も脈々と続けられてきた。そうした中で歴代の自民党政権は、現実の政治状況と憲法理念との溝を埋めるために憲法解釈による「解釈改憲」を進めてきた。これに対しも憲法学会や「護憲派」からの批判はあったが、憲法を無視してはならないという姿勢(立憲主義)は双方にあった。ところが安倍政権は安保法制において、従来の政府解釈でも認めなかった集団的自衛権行使を可能なものとした。それは従来の改憲運動からの「ある種の進化」であり、これに対する危機感の下での「護憲運動」も盛り上がった。しかし、安倍・菅政権は、さらに憲法で規定された臨時国会の開会を実質的に拒否するという「憲法無視(スルー)」を押し通した。これは明らかに民主主義の根幹である立憲主義を否定するものだ。従ってこれに対抗する運動は、「憲法の文言を変えるな」とか「勝手な解釈をするな」というレベルではなく、従来の政府解釈を支持する人はもとより、改憲に賛成する人を含めた「憲法を無視するな、民主主義・立憲主義を守れ」というものであるべきだと思う。先の総選挙で立憲野党や護憲の市民運動がアピールすべきは「政権交代」ではなく、より広範な人が支持できる「民主主義を守れ」だったのではないだろうか。選挙結果からは「明文改憲」が一段と進む状況となった。来年の参院選に向け「護憲運動」の在り方が問われている。
2021.11.3:日本国憲法公布75周年の日に