「千夜、一夜」
2022年10月某日鑑賞
「千夜、一夜」
監督:久保田直
脚本:青木研次
災害時に公衆電話を使おうとしても、
若い人は使い方が分からないと聞いて、
そっか!年月ってそういうものか!
と驚いた事を思い出す。
あの衝撃のニュース映像から20年も経てば、
飛行機のタラップから降りてくる拉致被害者の映像、
あの一連のニュースをうっすらしか知らない世代が多くなっているのだし、
佐渡島といえば #曽我ひとみ さん、
と思い起こすのは中高年ばかりになってしまったのだろう。
HPやチラシでも、監督コメントでも著名人のコメントでも、
何故これほど徹底的に #拉致問題 に言及していないのか、
敢えてのことなのか、
何か大人の事情なのか、
監督がこれを拉致問題と切り離した物語として作っているとは言わせない。
佐渡島が舞台であり、
最初から浜辺にはハングルの書かれた漂着物があり、
全編を通じてこれでもかと拉致のかげを登場させる。
小泉政権下にタラップから降りて来た5人、
そし1年以上経って子供達と再開した蓮池さんと曽我さん。
曽我さんが夫ジェンキンスさんとハグとキスを交わした時、
私達日本人は驚きはしなかったか。
日本の離島で生まれた真面目そうな女性が、
どんな視線もかなぐり捨て欧米人の様に情熱的な行動をした姿に、
当事者達の人生に何が起こったのか混乱しはしなかったか。
曽我さんは拉致に遭う前「病院に勤めていた」という。
そして未だに佐渡に住み、一緒に拉致された母親ミヨシさんと再会できていない「待つ人」だ。
拉致される日、
#蓮池薫 さんは家を出る時「ちょっと出てくる、すぐ帰る」と言ったそうだ。
これでもかとエピソードを映画に盛り込んでいる。
主人公の登美子、それと #尾野真千子 演じる奈美にしてみれば、
拉致なのか死なのか逃亡なのか、
様々な可能性を思わない訳にいかず、
どれか一つの可能性が現実であっても、
どれであっても過酷な人生だ。
#ダンカン 演じる春男の母親役が、
久しぶりに観た #白石加代子 !
相変わらずなんという迫力か。
大木の根っこの様な重力を感じる。
可哀想な息子を助けろとその母親は言う。
春男は「面倒見させてくれよ」と懇願する、
春男の友人まで圧力をかけてくる、
お前らいいかげんにしろよ、
ふざけんな、オモチャじゃねえんだ、
と登美子が思ったかどうか知らないが、私は思った。
「タラの餌にでも」とはなんと優しい語彙の選択。
田中裕子かわいいかよw(かわいいです)
これに折れたら、
登美子は自分の人生から「拉致」される様なものだ。
女は拉致された様に生きることを強いられる、(ふしがある)、
男に面倒なんて見させてたまるか。
登美子は登美子をずっと生きて欲しいのだがと思いながら観た。
クライマックスとなるシーンの中で思ったのは、
これは実在の拉致被害者家族に捧げるには余りにも過酷な映画だった。
監督はそこを遠慮したのか?
大人の社会の圧力のせいじゃないことを祈る。
これは実在の当事者宛てではなく、
「お可哀想に」と言ったきり無関心を貫いた私達に矢を刺すための作品なんじゃないだろうか。
先日、最近話題の #有田芳生 さんが拉致問題についての新しい著書を出された
のだけど、全然注目が集まらないと嘆いていた。
これまでのチャンスを黙殺して来た罪深き日本政府への意見も聞いた。
それはまた別の日に、
読んだらレビュー書くかもしれないです。
佐渡島の美しさ、
海の向こうを眺めてくらす土地、
#佐渡おけさ で浮かび上がる土の匂い。
とても素敵な、奥深くて美しい、
テーマがなんであれ人間の情念の根源に触れる様な、
素晴らしい映画でした。
#田島令子 が演じてた登美子の友人役、さりげなく良かったなぁ、
ホンサンスもそうだけど、
あんまり喫煙シーンをエモく使うのやめて下さいよ、
お婆ちゃんになったらまた吸っちゃおうかなぁなんて思っちゃう。
でも、トシ食ったら火の元は要注意だから、
やめときます!🚬😇
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