それはいつかの青春の
読みました。『スタンド・バイ・ミー』(スティーブン・キング、新潮文庫)。
途中の、知らないカタカナの固有名詞が立て続けに出てくるあたりで「これだ、これだよ、これが外国小説の苦手なところなんだ」とクラクラしたりとか、「○○なのさ」みたいなアメリカ文学特有(だと私は思っているが私だけだろう)の訳に気持ちが置いて行かれそうになったが、いや、でもやっぱりいい小説なのだと思う。
思う、とぼんやりした表現になってしまうのは、細部とか構造とかまで深く読み込めていないからなのだけれど(というかそもそもあらすじとか書くの苦手)、自分を取り巻く過酷な環境やままならない現実と向き合う子供たちの姿は、時に胸をしめつける。
傷つかないまま大人になんてなれないのだから、誰にだって胸にしまい込んだ痛みというのがあるだろう。貧しさ故に感じた惨めさ。不仲の両親への子供なりの気遣い。大人の怒りの矛先になりがちな無力な自分への苛立ち。やり場のない黒い感情をつい無関係な友人にぶつけてしまったこと。など。作品世界に没入するほどに閉じ込めていたはずの記憶が顔をのぞかせる。
子供は弱い。赤ん坊は自分の身を守るために可愛く出来ているという話をかつてどこかで読んだ気がするが、赤ん坊期を脱した子供は、時に日常を守るために理不尽に耐えたり、闘ったりしなくてはいけない。彼らの青春はビリビリとどこまでも刺激的で、羨ましくはないのになぜかとても眩しくみえる。
あまり関係はないけど、夜の場面を読んでいたらデヴィッド・リンチの『ストレイト・ストーリー』が観たくなった。焚き火を囲んで語り合う、というシーンはなぜいつまでも心に残るんだろう。
次はもっと短い作品にしようと思っている。楽をしたい、というわけではない、と言ったら嘘になるかもしれないが、短編が好き、ということもある。これは本当だ。ということで、次はずっと気になっていた作家、イーユン・リーの短編を読みます。「GRANTA JAPAN with 早稲田文学 03」所収の『夢から夢へ』。さあ、予告したぞ。もう逃げられない。