ディズニー映画全部見る4・ダンボ
ダンボ/Dumbo(1941・63分)
連載4回目はダンボです。ディズニー映画には珍しく原作の無いオリジナル作品で大きな耳が特徴の主人公の名前がそのままタイトルになっています。子供の頃、「注意してよく聞いて」の意で「耳をダンボにして」なんて言われた事がある人もいるんじゃないでしょうか。2019年にはティム・バートンによって実写映画化もされました。ディズニーランドにもアトラクションがありますね。子供に人気で晴れの日はいつも混んでいる印象。
さてあらすじです。まだ遊園地という娯楽がない頃、サーカスの団員や動物達を乗せて汽車が街から街へと走っていた時代。サーカスのゾウ、ジャンボの元にコウノトリに運ばれて可愛い赤ちゃんゾウがやってきました。ジャンボは息子をジャンボ・ジュニアと名付けますが、赤ちゃんは大きい耳を奇妙に思ったゾウ仲間からダンボと呼ばれてしまいます。それでもジャンボにとって可愛い息子である事に変わりはありません。ジャンボはジャンボ・ジュニア改めダンボを慈しみます。
次の街に到着したサーカス一座は早速テントを立てます。このシーン、作業に従事するのはアフリカ系の人たちばかりで当時の差別・階級問題が伺い知れます。翌日から早速ダンボも「大きな耳の奇妙な赤ちゃんゾウ」としてサーカス団の一員としてデビューするのですが、観客の悪ガキに耳を引っ張られたりと手荒に扱われてしまいます。怒ったジャンボは悪ガキのお尻を鼻で引っぱたいて懲らしめますが、客に暴力をふるった事を団長に咎められ、危険な暴れ象として懲罰用の檻に閉じ込められてしまいます。
まだ赤ちゃんなのに母と引き離されてしまったダンボ。他のゾウ達にも爪弾きにされ、ひとりぼっちになってしまいます。そんなダンボを気の毒に思ったサーカスのネズミ、ティモシー・マウスは自分がダンボの面倒を見ようと決心します。大きな耳は堂々として素敵だ、君はスターになれるとダンボを励ますティモシー。人気者になればジャンボを檻から出せるかも。ダンボ。をプロデュースが始まります。
眠る団長の耳元で囁くティモシー。ゾウでピラミッドを作ろう、そのてっぺんにはダンボを。目覚めた団長はそのアイデアをすっかり自分のものと思い込み、翌日の公演で早速実演します(リハーサルしろよ)。ゾウ7頭によるピラミッドまでは成功したものの、ダンボはジャンプ台まで走る途中、自分の耳を踏んで転んでしまいます。その拍子にゾウ達が乗ったボールにぶつかり、ゾウピラミッドは総崩れです。ダンボに芸は無理と判断した団長はダンボをピエロにする事に決めたのでした。
火事が起きた家に取り残された赤ちゃんの役を演じるダンボ。消防士に扮したピエロ達が消火しようとして失敗の繰り返しで笑いを取ります。火の勢いが増し、いよいよ危なくなったところでダンボはタライに突き落とされ、火事の現場から脱出(?)してショーは成功。観客にはウケましたが、笑い者にされてダンボは意気消沈です。
落ち込むダンボを励ましつつ、お母さんの檻を見つけたから会いに行こうと声を掛けるティモシー。元気を出したダンボはジャンボの元へ向かいます。鉄格子から見える小さな鼻に気付くジャンボ。すぐに駆け寄ろうとしますが、足枷が邪魔をしてダンボの顔を見る事は叶いません。それでもジャンボは長い鼻を伸ばしてダンボの頭を撫でます。鼻でダンボを抱き上げ、ブランコのようにあやすジャンボ。ここで流れる名曲「ベイビー・マイン」。サーカスの様々な動物達が親子並んで眠る姿が映し出されます。マザコンは号泣必死です。ティモシーも思わず涙。しかしいつまでも一緒にはいられません。自分の厩舎に戻るダンボですが、母と別れた寂しさから涙が止まりません。
水でも飲んで落ち着きなよ、と樽までダンボを連れていくティモシーですが中にはお酒が入っていたのでした。酔っぱらってピンクのゾウの幻覚を見てしまうダンボとティモシー。プーさんの「ズオウとヒイタチ」とあわせてトラウマシーンとして有名な曲です。お酒による幻覚というのは表向きで本当はLSDの幻覚だろうというのがディズニーファンの間での定説です。幻覚系のドラッグを一度でもやった事がある人はディズニー映画はLSDそのものと口を揃えて言うそうですが、実際、薬物中毒者の描く絵として教科書に載る図にそっくりなんですよね……。
お酒の夢から覚めたダンボとティモシー。起きると何故かカラスの集団に絡まれます。寝起きで機嫌の悪いティモシーはカラスが地面まで何しに来た、とっとと木の上に帰れと言いますが、カラス達にここが木の上だと笑われてしまいます。え? 木の上? 本当だ! しかも結構高い。パニックを起こしたダンボは木から落ちてしまい、またもカラスは大笑い。
サーカスに戻るティモシーですがどうも腑に落ちない。木の上にいたという事は木に登らなくてはならない。ゾウに木登りができるのか? ティモシーの独り言にカラスが茶々を入れます。鳥みたいに飛んだんでしょと。そうだ! ダンボ、君は飛べるんだ! 世紀の大スター、世界の七不思議、空飛ぶゾウ。これでもうピエロとして笑われずに済むとティモシーは大喜び。
そんなわけあるかと揶揄うカラス達にティモシーは大激怒。生まれつき耳が大きいというだけで笑い者にされ、幼くして母と引き離されたこの子を見て可哀想だと思わないのかとぶち上げます。それを聞いたカラス達の目に涙。良い奴らです。リーダー格のカラスが自分の羽根を引っこ抜き、これは魔法の羽根、これがあれば空を飛べると嘯きます。意図を察したティモシーもこれで飛ぶ練習をしようとダンボを唆します。だって自分で空を飛んで木に登ったんだろうしね。ダンボがその気になれば何でもいいのです。魔法の羽根を握りしめ、羽ばたくダンボ。見事その体は鳥のように浮きました。これでスターは間違いなし。次のショーでサーカスの奴らに一杯食わせてやろうとティモシーとカラスはノリノリです。
ショーが始まり、前回と同じく燃える家に取り残されるダンボ。でも今回はタライに突っ込まなくてもいい。だって飛べるしね。タライに突っ込むフリをして滑空!の途中で風圧のあまりダンボは魔法の羽根を落としてしまいます。どうしよう!あれがなきゃ飛べないと動揺するダンボにティモシーは叫びます。魔法の羽根なんて嘘だ、あんなものが無くても君は飛べる!耳を広げろ!
タライに飛び込む寸前のところで見事ダンボは舞い上がります。急降下も宙返りもお手の物。意地悪なサーカス団の面々に若干の仕返しをしつつ、ダンボは奇跡の空飛ぶゾウとして華々しくデビューを飾ります。新聞もダンボの活躍を伝えます。耳に百万ドルの保険、飛行記録の更新、ハリウッドとの契約……。最初に保険の話が出てくるところがアメリカっぽいですね。一躍スターになったダンボ。ジャンボも檻から解放でき、ダンボとの専用車両まで用意されます。軽々と宙を舞うダンボですが、一番好きなのはお母さんに抱っこされる事。まだ赤ちゃんだものね。ダンボとジャンボを乗せた汽車はカラスに見送られ、また次の街に向かいます。めでたしめでたし。
子供の頃に見た時はダンボ可愛い、ピンクのゾウが不思議で楽しい、ダンボ飛べたね良かったねと単純な感想を抱いていたのですが、大人になってから見ると生まれつきの外見を揶揄されるダンボが気の毒で、ピンクのゾウはどう見ても薬物による幻覚なのが生々しく、最後はコンプレックスだった特徴を活かして活躍するのが嬉しくて、見る時によって違った感想になるのが味わい深いです。
関連作品
・実写版ダンボ(2019)
ティム・バートン監督作品。ダンボたち動物はCG。耳のせいで揶揄われ、母と引き離され、でも空を飛んでスターにという大骨は一緒だが過程はがっつりオリジナル。ティモシーがダンボのマネージャーとして登場しない代わりにサーカスの団員のゾウ飼育係の親子がダンボの面倒を見る。移動サーカスはもう古い、時代は遊園地とウォルト・ディズニーを模した悪役と彼の経営する明らかにディズニーランドがモデルの遊園地が出てくる。ディズニー映画であるにもかかわらずウォルト・ディズニーを批判する意欲作。サーカスの独特の雰囲気がザ・バートン。実写化されたディズニー映画って大体微妙なんですが、これは面白いです。
以上、ダンボについてでした。次はバンビについて書きます!
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