ディズニー映画全部見る5・バンビ

バンビ/Bannbi(1942・70分)

 ダンボに続く5作目はバンビです。小ジカの男の子が主人公。原作はオーストリアの児童文学「バンビ・林の中の暮らし」です。ディズニーのバンビが手塚治虫に影響を与え、ジャングル大帝レオが生まれたのは有名な話ですね。更にディズニーもジャングル大帝の影響を受けてライオンキングが生まれました。循環する創作意欲の輪。サークルオブライフ。

 バンビと言えばイタリア語で子供を意味する言葉であり、恐らく原作のバンビもそこから名付けられたと思いますが、ディズニーの印象が強くバンビ=小ジカというイメージの人も多いでしょう。

 バンビのアトラクションはありませんが、主人公バンビの友達であるウサギのとんすけとその彼女ミス・バニーの着ぐるみには会う事ができます。バンビは知らなくても、ミス・バニーを見た事がある人は多いのではないでしょうか。イースターの時期には何かしらグッズが出ている人気者です。

 さて、あらすじです。ある朝深い森の奥、小鳥たちが騒ぎ出しました。森の王子バンビが生まれたのです。森の動物達も祝福に駆け付けます。翌日からさっそくバンビは母親と共に森の中を散策します。うさぎの男の子とんすけ、スカンクの男の子フラワーとも友達になりました。晴れの日、雨の日、森が見せる様々な表情をバンビは学んでいきます。

 ある日、バンビの母はバンビを草原に連れ出します。バンビは母に尋ねます。何故今まで草原に連れて行ってくれなかったの? 母は答えます。まだ小さかったからよ、と。森と違って草原には身を隠す木も繁みもありません。狩りに来た人間に見つかったら撃たれて終わりです。生まれて初めて見る草原に興奮して飛び出すバンビをママがたしなめます。

 安全を確認しながら先導するママの後ろをついて良くバンビ。草原でバンビは初めて自分たち親子以外のシカと出会いました。バンビママの友達の雌ジカとその娘のファリーンです。ファリーンと草原を駆け回るバンビ。やがて雄ジカの集団とも遭遇します。他の生き物を意に介さず草原を我がものと飛び回る雄ジカ達ですが、急に立ち止まり皆一様に同じ方向を見つめました。視線の先には立派な角と体躯を持つ一匹の雄ジカ。孤高のシカは縮こまるバンビを一瞥すると草原を悠々と横切って森の奥に去っていきました。

 バンビは母親に尋ねます。「何故みんな立ち止まったの?」「みんなあの方を尊敬しているからよ。森中のシカは誰もあの方の半分も生きていない。とても勇敢でとても賢い。だからみんなあの方を森の王様と呼ぶの」

 バンビが王子様と呼ばれるのは森の王の息子だったからなのでした。父について思いを巡らせるも束の間、鳥達が騒ぎ出します。人間がやってきたのです。皆、一目散に草原から逃げ出しますが今日が初めての草原であるバンビは勝手がわからず混乱します。母ともはぐれ戸惑うバンビを森の王が草原の出口まで導きます。親子を追うように響く銃声。辛くもバンビは凶弾から逃れたのでした。

 やがて森は紅葉、そして冬を迎えます。この落ち葉が舞い散るシーン、ファンタジアのくるみ割り人形を思い起こさせます。バンビが迎える初めての冬。友達のとんすけと凍った池でスケートです。もう一人の友達フラワーも誘おうとした二人ですが、春まで冬眠するのだと断られてしまいました。バンビ達も冬を楽しんでいられるのはほんの僅かな間だけ。吹雪が続けば食べ物を探すのも一苦労です。でもそれも一時の事。いずれ春はやってきます。

 新芽を探しに久しぶりに草原を訪れたバンビとママ。夢中になって草を食べるバンビですがママは異変に気付きます。人間に狙われていると。早く逃げて、走って、振り返らないで! 母の必死の言葉にバンビも振り返らずに走ります。そして銃声。いつものねぐらに辿り着いた時、バンビは母がいない事に気付きました。必死にママを探すバンビ。やがてバンビの前に森の王が現れます。王は静かに諭します。ママはもうお前のそばにはいないと。母の死を悟り涙を流すバンビ。母を失ったバンビに今度は森の王が寄り添うのでした。

 重苦しい冬から一変、陽気な春が訪れます。春は恋の季節。森のあちこちでつがいができています。冬を乗り越え、たくましい雄ジカに成長したバンビ。友達のとんすけもフラワーも大人になっていました。久しぶりの同窓会です。このシーン成人式の同窓会でやんちゃする若者っぽいです。

 浮かれ騒ぐ小鳥たちに興味津々の3匹。何であんな風になっちゃってるんだ? 物知りふくろうがあれは浮かれ頭だよと答えます。この時期、メスに出会ってしまうとオスは我を忘れてしまうんだと。「すごーい」「やだな」「怖いね」自分は絶対にそんな風にならないと思春期男子のような宣言をそれぞれする3匹(フラグ)。可愛い雌スカンクと出会ったフラワー、速攻で脱落します。バンビととんすけに咎められてもにやけた笑みで肩をすくめて彼女について行ってしまいました(即オチ2コマ)。残った2匹で森を進むも、セクシーなうさぎに誘惑されてとんすけも陥落。最後の1匹バンビも幼馴染のファリーンと再会し、浮かれ頭となってしまうのでした。

 ファリーンと夢心地で森を駆けるも幸せは長くは続きません。春が恋の季節であるならメスを巡る戦いも当然存在する。ファリーンを目当てにやってきた雄ジカとバンビは激しく戦います。ライバルの雄ジカを投げ飛ばし、見事バンビはファリーンとつがいになったのでした。

 ファリーンとの暮らしを楽しむのも束の間、バンビは異変に気付きます。父である森の王も異変を察知していました。また人間がやってきた。それも大勢。父はバンビと逃げようとしますが、ファリーンを思い出したバンビは彼女を探しに森の奥へ戻ります。崖の上、猟犬に追い詰められたファリーンを発見するバンビ。猟犬の群れを追い払ったはいいものの、足を撃たれて負傷したバンビは疲れて気絶してしまいます。そこに迫る火の手。山火事です。火の不始末には気を付けよう。

 バンビの元にはいつの間にか森の王がいました。森の王はいつもどこかで息子のバンビを見守ってくれているのです。「立てバンビ、走れ」父に励まされ、バンビは辛くも火事から逃れたのでした。

 季節は巡って再び春へ。新しいシカの子供が生まれました。バンビの子供です。バンビは子供の誕生を遠くから見届けた後、父と共に森の奥に去っていくのでした。おしまい。

 バンビの魅力は何と言ってもとびきり美しい自然の描写だと思います。80年前のセル画アニメというのが信じられないですね。ディズニースタジオが数十年にわたり長編アニメ映画の覇権であった事を感じさせてくれる作品です。一匹の生き物にフォーカスして誕生から次世代を生むまでを見届ける、動物ドキュメンタリー番組と同じ構成なのも良いですね。

原作との違い

 原作のバンビはノロジカですが、ディズニーのバンビはアカシカです。前者はヨーロッパに多く、後者はアメリカに多く生息しています。アメリカでのアニメ化のためにローカライズしたのでしょうね。物語はほぼ原作通りに進みます。

 原作ではファリーンに兄弟がおり、彼は人間に捕まってしまうのですが、飼い慣らされて野生を忘れた頃、森に戻ってきます。人間への警戒心をすっかり失った彼は狩猟にやってきた人間に挨拶のため近付き、撃たれて死んでしまうという悲しい最期を迎えます。映画では重すぎるのか、兄弟の存在ごとばっさりカットされています。

関連作品

・バンビ2 森のプリンス(2006)

 続編ではなくスピンオフ。バンビが母を亡くした後、父と共に暮らす過程を描く。ぶっちゃけお父さんが主人公の子育て奮闘記。幼いバンビには母親が必要。やはり再婚するべきか?と男やもめの生々しい悩みが描かれます。

以上、バンビについてでした。次はラテンアメリカの旅について書きます!

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