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そういえば持ってる側の人間だった
ある日、新宿三丁目駅から新宿紀伊国屋書店に向かって歩いていると、信号機付きの横断歩道で、タクシーが横断歩道の白線に半分以上乗った状態でお客さんを降ろしていた。信号はまだ赤だった。
あ、なんで紀伊国屋に行くのに新宿駅じゃなくて、わざわざ新宿三丁目駅を使ってるのかと疑問に思ったあなた、なかなか鋭い。でもね、これには深いわけなんてもちろんなくて、ただ、新宿三丁目駅を降りてから、紀伊国屋に行こうと思いついただけでございまして。
つまり……
紀伊国屋に行こう!➡新宿三丁目駅で降りるぞー➡あれ、新宿駅で降りた方が良くね。ミスったー
ではなく、、、
新宿三丁目駅で降りたぞー➡あ、そうだ紀伊国屋にでも行こう➡だとしたら、新宿駅で降りるべきだったかー
だというわけです
まあ、正直、どっちから行こうが、さほど変わんない気がします。
話を戻します。
ともかく、タクシーが歩行者の通行を妨げるような場所で停車していて、でもタクシー運転手はベテランのおじいちゃんドライバーで、その表情には罪悪感の、ざの字はあったけど、いの字は無くて、私が勝手に違反だと思っているだけで、法律上は認められている停車なのか?とも思ったりして。
そんなこんなでモヤモヤしていると、信号が青に変わる。タクシーはまだ横断歩道を塞いでる。しかたなく、タクシーを避けるように渡ろうとした次の瞬間、私の前を歩くおっちゃんがタクシーの車体に一発のジャブをお見舞い。ストレートでも、フックでも、アッパーでもなくてホッとする。
おっちゃん、やりすぎだよ。でもありがとね、私はこのタクシーの行為が本当に違反かどうか分からなかったから。おっちゃんのおかげで、自信を持ってあのタクシーが違反だと言えるよ。
ん?でも、よくよく考えたら、あのおっちゃんが正しいとは限らないんじゃないか?あのおっちゃんは正しい交通ルールを知らないかもしれないし、ただ、自分のストレスをタクシーにぶつけただけかもしれないよね。
そのとき、私のズボンの右ポケットに入っていた財布から声がした、気がした。財布を開けて、声の主を探す。すると、そこには私の運転免許証が入っていた。
そうだ、そういえば私は運転免許証を持っている側の人間だった。私は自信を持ってタクシーを違反だと言い切ることが出来る。おっちゃん、疑って悪かったよ。
タクシーのじいちゃん、交通ルールは守ろうぜ。
まだ、一回も運転したことのない、ペーパードライバーより