「It Takes Two」の感想
以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。
2人専用協力プラットフォームアクション
あまり見かけることのない2人専用ゲームとなっている。しかも、対戦ではなく協力プレイが基本となっていて、ゲーム画面まで昨今見なくなった縦分割画面が基本となっている。とことん、2人用にゲーム構造が調整されており、それはフレーバーにも反映されている。
プレイヤーは夫婦をそれぞれ操作することになる。この2人には子供がいるのだが、様々な理由から離婚に向けて話し合いが続いている。離婚がほとんど確定的になった時、子供が涙を流し、それが人形に落ちたことをきっかけに、2人は人形になってしまう。元の姿に戻るために、2人が奮闘する。
ゲームの基幹にはステージ制のプラットフォームアクションが採用されている。足場から足場へと移動していくようなタイプのジャンルで、マリオシリーズなどを思い浮かべると良いだろう。2人は人形の等身のままに、様々なエリアをくぐり抜けていき、困難に立ち向かう中で、お互いを顧みる機会を得る、という大筋になっている。
テーマパークのアトラクションのような
特徴的なのは、各ステージごとに様々なギミックが用意されていることだ。基本的には両プレイヤーには特性が異なるアイテムがもらえ、それを使いながら、先へ先へと進んでいく。
たとえば、ある時は釘と金鎚がもらえる。片方が釘で足場を固定している間に、もう片方が次へと進み、進んだ先でガラス瓶を破壊する、といったようなことを繰り返していくのだ。
このようなアイテムを使ったギミックが中心にはあるのだが、ステージの展開によっては、急に飛行機を操作することになったり、格闘ゲームのようになったり、2Dアクションゲームにようになったり、とゲーム構造自体が部分的に変化するようなバリエーションが提供される。
ステージ内にも干渉可能な物品が置かれていることが多い。その多くはボタンを押すとちょっとした動きをする程度ではあるが、実績の解除に繋がるようなものや、小さなゲームを提供するものもある。
このように、手を変え品を変え、プレイヤーを飽きさせないようなおもてなしが最後まで続いていく。テーマパークで様々なアトラクションをはしごしている時のような楽しさのあるゲームだ。
ボリュームの多さ
人形になってしまうというフレーバーや、協力プレイがメインということもあって、軽いゲームのように感じがちだが、実際のボリュームはかなりある。普通にクリアしても、15時間前後はかかるだろう。
大作と比較してしまえば、少ない方に感じるかもしれないが、プラットフォームアクションはそもそもプレイ時間が短めな作品が多いし、何より基本的に同じプレイヤーと共にこれだけの時間をプレイしなければならないことを考えるとかなりのボリュームであると言える。
最後までプレイした率直な感想としては、もう少し軽くして欲しかったというのが正直なところだ。3分の2程度でも良いのではないか。それならば休日を使って一気呵成に、というのも現実的な数値になる。
これだけのボリュームがあると、1日でクリアすることはかなり難しい。生活時間が近く、共にプレイしてくれる人を探す必要が生まれ、プレイのハードルは一気に高くなっている。
ゲーム内容としても、終盤は流石に飽きを感じる長さだ。
ギミックにはバリエーションを出すための工夫がされているとはいえ、基本的には片方のアイテムを使用し、もう片方が進んだところでそちらのアイテムを使用し、両者が合流する、という大まかな流れは変わらない。ゲームシステム上、似たようなギミックも多く、ここまでのボリュームが必要だったのか、という疑念がある。
ストーリーやフレーバーに癖がある
多くの場合はほとんど問題にはならないだろうが、少し難がある。
まず、ストーリーは一本調子で、大きな驚きが生まれることはない。その割に主人公たちは自身の目的のために(終盤にかけての成長を強調するためだと思うが)かなり容赦のないことをしていて、フォローも少ない。本当にこんなことまでしなくてはいけないのか、と思いながら心理的な抵抗のあることをしなければいけないのだ。一本道なので、それを避けるすべもない。最終的な着地点も、王道の大団円という感じではない。
全体としてブラックジョーク的だ。主人公は人形であるとは言え、ノコギリで切られ、釘で串刺しにされてしまう。忌避感を抱くこともあるだろう。 また、屋外が舞台になることも多く、リアルな虫などの描写もある。
もちろん、不快な描写は一切取り除くべきだ、と主張するわけではない。しかしながら、必要性があるとは思えない不快さがあるのは事実であり、比較的多くの人にプレイされることを想定しているゲームにしては、癖があると感じたのも事実だ。ある程度は覚悟すべきだろう。
これは誰のためのゲームなのか
全体として感じるのは、これが誰のためのゲームなのかということだ。
総じて、ゲーマーにとっては良くも悪くも丸く優しいのに対し、ゲーム初心者にとっては尖っていて厳しい、というように感じる。
大前提として、3Dプラットフォームアクションというジャンルが一定の難しさを含んでいる。たとえば、最近発売され、ゲーム習熟者も初心者もプレイすることが想定されている「星のカービィ ディスカバリー」では、このような工夫をしているという記事が公開されたほどだ。
3次元的な奥行きをディスプレイで確認することは案外難しく、慣れていない人にとっては、ジャンプですら簡単ではない。
また、ギミックの都合上、ちょっとしたパズルというか、ひらめきが必要な箇所も多いのだが、ゲームの習熟者にとっては自明でも、初心者にとっては難しく、気付けないと感じたことも多かった。こういうのは、ちょっとしたコツというか、経験の蓄積が必要になる。
他にも名作ゲームのオマージュ的な要素も見受けられた。しかし、ゲーム初心者にはそれがオマージュだとわからないだろう。意味がない、ということがわからず、混乱するかもしれない(実際にしていた)。
そもそも、あらゆるジャンルのゲーム操作というもの自体が、ある程度ゲームに慣れているからわかるものであって、初心者が手放しに出来るようなものではない、という点もある。実例で言えば、飛行機を操作するパートなどはかなり苦労していた。
実際、筆者はデジタルゲーム全般に慣れていないプレイヤーと共にプレイしたのだが、こちらだけ気付いていたり、フォローが必要になったりすることはとても多かった。初心者だけでプレイした時、スムーズに進めることは稀だろう。もう少しサポート機能があっても良いのではないか。
しかし、ゲームに慣れているプレイヤーにとって、これらは全く問題にならない。全体として簡単すぎるだろうし、障害を感じることはないはずだ。
このように、主軸のゲームプレイに対する難しさがゲーム経験に依存し過ぎていて、極端な感想になりやすく、結果として誰のためのゲームとして設計されているのかが、良くわからなかった。前述の任天堂が手掛けるプラットフォームアクションなら、初心者はクリアを、習熟者はやり込みを目指すようなレベルデザインをされていることが多いが、本作はそうではなく、両者がクリアを目指すため、難易度が中途半端であると感じる。
ボリュームや2人専用ということもあり、プレイしてみれば楽しいのだが、なかなかオススメしにくいゲームになっている。
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