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「フォートナイト」の感想

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。
 また、視界が狭い人間なので、色々とご指摘いただければ幸いです。



前提

  • 競技的なプレイ(アリーナモードや大会など)にはあまり言及しない

  • アップデートなどにより、状況が変わる可能性がある他、一部仕様について推測を含んでおり、間違っている可能性がある

  • ゲームメカニクス、あるいはオンラインプレイと報酬の関連といった部分に着目した感想となる



感想

建築と射撃という2軸のバトルロイヤル

 今更説明するまでもない知名度のゲームであると思うので、簡単に。

 「PUBG」に端を発したバトルロイヤル系のゲームであり、その元ネタはそのまま小説(あるいはそれを原作とした映画の)「バトル・ロワイアル」である。この作品のように、プレイヤーは裸一貫で小さな島に転送され、そこでアイテムを集めながら、敵プレイヤーと戦っていく。行動可能範囲は次第に狭まり、戦闘は激化する。最終的に残ったプレイヤーの勝利だ。

 「フォートナイト」のゲームメカニクス的な特徴としては、『建築』ができるという特徴が挙げられる。ゲームマップは視認できない3次元的なグリッドで区切られており、それに沿った形で壁・床・天井・坂といったものを各プレイヤーは建築することができる。建築物は宙に浮かすことはできないが、重ねていくことにより、かなり高いところまで建築できる。これによる地理的なやり取り、3次元的な動きが可能になる、という点が特徴だ。

 これがなかなか面白いプレイを生み出しているように感じる。何かあった(戦闘や索敵など)時も、常に『建築』という選択肢がちらついており、各行動に対して選択を迫られている感覚がある。射撃とは大きく軸の異なる選択があり、一般的なTPS(FPS)以上に自由度を感じる。もし、敗北しても、選択肢があった以上、他にもっと良い動きができたのではないか、という気持ちにさせられ、理不尽な感覚を得られにくくなっている。



プレイし続けることに対する報酬の手厚さ

 勝つことよりも、プレイし続けることに価値を置いたデザインだ。

 「Dota2」が元になったバトルパスというシステムは、本作が導入したことにより、他の作品にも爆発的に広まった、という認識をしている。これは定額を支払った後、プレイをすることによって経験値が溜まり、報酬が得られるというものだ。本作の特徴としては、バトルパスの報酬の中にはバトルパスを購入するだけのゲーム通貨がすでに含まれている、という点が挙げられる。つまり、ずっとプレイできるのであれば、常にこの報酬を得られる。これは小中学生のような金銭的な余裕のないプレイヤーに人気である理由の一つであると考えられる。

 デイリーミッションやウィークリーミッションが逐次解放されていく形であり、経験値(バトルパスの進行度)の主たる部分を担っている。そのために、一気にプレイするよりもプレイし続けることに価値が置かれている。加えて、そのミッションも、敵プレイヤーの撃破にあまり関係ないものがほとんどであり、ゲームに対する習熟がさほど問われないものが多い。

 定期的に1~2週間程度のイベントも開催されており、それによる報酬(スキンや経験値など)も用意されている、という点もある。

 他の一般的なオンラインゲームでは、勝利(あるいは敵の撃破)によって経験値を得ることも多いが、本作ではそこは主軸ではないのだ。上達よりも継続に報酬を用意している。



金銭的な動線

 勝利に焦点を合わせないようにしているのは、課金システムにも影響していると思われる。前述のバトルパスの他には、基本的にスキンを販売しており、その部分で金銭的な動線を用意している。

 勝利に関連する部分(データ)に課金がある場合、どうしても、ゲームの焦点に勝利を持ってきて、それを推奨する必要がある。しかしながら、スキン課金(フレーバー)である場合は、むしろ、勝利を推奨しない方がよい。なぜならば、勝敗に対しては不利になってしまう可能性があるからだ。

 本作は上述のように、スキン課金が主軸の一つであることもあり、主要なIPとのコラボレーションも活発で、MarvelやDC、集英社からのIPのスキンなども存在する。結果として、スナイパーライフルを持ったナルトがアイアンマンをヘッドショットするような光景も目にするのだが、これらのスキンはゲーム的に考えると不利な要素だ。たとえば、ダースベイダーを例に挙げると、全身が真っ黒で、マントもひらひらと広がっている。これが荒野や森林を駆けるのだから、目立つのは当たり前であり、撃たれる可能性は上がる。

 それでもプレイヤーがダースベイダーを求め、ダースベイダーで楽しくプレイできるようにするため、勝利が報酬に繋がりにくいようになっている。



マッチング部分の特徴

 よくあるゲームでは、ランクマッチとカジュアルマッチがあり、それを選択できるようになっており、ランクには報酬が用意されている。つまり、基軸はランクマッチにあり、その練習のような立ち位置として、カジュアルマッチが用意されている。カジュアルマッチにはあまり報酬がない。

 しかし、これにはいくつかの問題が発生しやすいと考えられる。

 まず、カジュアル狩りに関する問題だ。ゲームをプレイする理由は様々だが、『他のプレイヤーに勝利する』ことだけに価値を置くプレイヤーも存在する。そのようなプレイヤーは、次第に敵が強くなっていくランクマッチよりも、より弱いプレイヤーのいるカジュアルマッチを優先するだろう。しかしながら、一般的なプレイヤーは自信や腕がないから、カジュアルマッチを選択するのであって、そこで敗北を重ねてしまうと、自身がプレイする場がそのゲームにはない、と感じられてしまう可能性がある。

 また、オンラインゲームは、高速でマッチングが成立し、ゲームプレイを繰り返すことができ、他プレイヤーと比べられやすく、ゲーム以外のコミュニケーション(会話や表情によるやり取りなど)がしにくいこともあり、どうしても競技的になりやすい土壌がある。ランクマッチに大きな報酬を用意すると、これらを助長しやすく、勝利至上の価値観が優先されやすい。これはチートの蔓延にも繋がりやすいとも考えられるだろう。

 つまり、結果として、カジュアルマッチとは名ばかりになってしまう。競技的なシーンを盛り上げたいのであれば、ランクマッチとプラクティス、とすべきであるだろう。


 一方、本作はまず、競技的なルールとカジュアルなルールを分離している(これは「スプラトゥーン」などにもみられる)。競技的なルールの場合、建築の自由度に制限を設けたり、敵を撃破する報酬を上げたりしており、ゲームに対する習熟のフィードバックが鋭敏に設定されている。これによって、競技的思考を持つプレイヤーは自身の腕の上達を感じられるし、カジュアルなプレイヤーは自信を無くすようなことはしなくて済む。

 次に、カジュアルなルールの方を主軸に置いている。デフォルトで設定されているのはこちらだ。ランクは競技的なルールにのみ存在し、それによる報酬もほとんどない。全くプレイせずとも問題はないのだ。

 また、マッチングは運営側がレーティングを加味し、BOTも含めて、一定のアルゴリズムで行われているようだ。各マッチで、ある程度、ゲームに対する習熟が同じで、しかし、多少のばらつきがある、という形になっていると感じる。結果として、理不尽に感じることは少ない。

 ただし、これでもサブアカウントによる初心者狩りは対策できない。ただ、バトルロイヤルは、様々な意味で、プレイヤー一人がゲームに与える影響が少ないため、そもそも、問題になりにくい体質があるとは言える。

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