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最後に、それでも全人類に「メギド72」を勧める5つの理由

 自身の記事でもたびたび取り上げさせていただいた「メギド72」というゲームが完結し、オフライン版に移行することが決定した。

 以前は、特定のゲームや、ゲームジャンルに向けて、似たような記事を書いた。

 筆者の最愛のソシャゲであり、これだけ長期に渡ってプレイしてきた運営型のデジタルゲームはない。

 そこで、(オフライン版の詳細な仕様がわからないので、実際にどうなのかはわからないのだが)最後の最後に、もっと多くの人にこのゲームを勧めたいと思って、この記事を書いた。

 本当なら、72個の理由を挙げたいところではあるが、それでは全人類にとって、読みにくいだろうから、7ー2=5個の理由にまとめてみた。

 お時間があれば、ご一読いただければ幸いだ。



1.戦闘システムの完成度

 なんと言っても、これが筆者が本作を偏愛する理由の最たるものだ。

 すでに、以下のような記事でも詳細を紹介している。

 その魅力をここでも、短く紹介することを試みたいと思う。


 まず、なんと言っても、本作の代名詞たるドラフトフォトンシステムに触れないわけにはいかない。

 これは、味方・敵ともに共通する行動権をアタック・スキル・チャージという3種類のフォトン(という名の資源)とし、それを自身と敵で取り合う、というシステムになっている。

中央部に沸いた資源(フォトン)を
ドラフトする(赤丸を自身がピックし、青丸を相手がピックしている)

 これには、様々な駆け引きがシンプルにまとまっている。

 自身が取ったフォトンは、相手が取ることはない。その逆もしかりなので、相手の行動をある程度制御できることができるシステムになっている。

 また、フォトンは(基本的に)各ユニットに最大で3個までしか積むことができず、下に積まれた順に行動することになる。これも考慮したピックが必要であり、いつでも最良のことができるわけではない。

 (おそらく)5分の2でアタック、5分の2でスキル、5分の1でチャージという確率でランダムに(基本的に)5個出てくるフォトンを奪い合う、という形式が、「メギド72」の各戦闘、各判断における固有性を保つのに、大きく寄与しており、面白い戦闘を生み出している。

 これらの振れ幅は、メインストーリーなどにおける強敵に対しては、それぞれのプレイヤーの思い入れのある戦闘経験を生み出す原因になっているし、大幻獣のように周回する必要がある敵に対しては、その振れ幅をどのように吸収するのか、という問題として取り組めるようになっている。


 とはいえ、そのフォトンによる振れ幅は大きいものであり、それを吸収する形で実装されているのがオーブというメカニクスだ。

 これは、各ユニットに1つ装備できるものであり、クールターンがあるがその効果を好きなフォトンを消費することで使える、というものだ。

 つまり、フォトンの種類に問わず、必ずその効果を発揮できる、というもので、「メギド72」の戦闘における安定性を司っている。

 余談ではあるが、この『オーブのクールターンを-1する』という特性を初期実装である『フォラス』と『ナベリウス』というユニットが持っているのだが、ついに、サービス開始から完結のその時まで第一線で活躍し続けるユニットになった。それだけ、本作の根幹に関わる能力であり、強力であった、ということを端的に示していると言える。


 また、比較的軽視されがちだが、覚醒値というメカニクスも本作の重要な役割を担っている。

 これは端的に言えば、必殺技ゲージであり、これが最大であると、各フォトンにおける行動・効果が変わる、というものだ。

 これがどの程度、(敵味方含め)どのユニットが溜まっているのか、というのは、長期戦においてかなり重要な情報であり、フォトンの偏りと合わせ、その時、その瞬間固有の問題を生み出すことにかなり寄与している。


 これらのメカニクスの組み合わせは、かなり完成度が高いと言え、「メギド72」という、強力なIP群の一因でもなく、メディアミックスに力を入れたわけでもなく、コラボすらも一切していない単独のゲーム作品が、7.2年という長きに渡って愛されてきた理由の一つになっているだろう。



 これらのメカニクスによる完成度は、いわば、戦闘級の選択に対する面白さを担保しているものだが、戦術級の選択に対しても面白さがある。

 それは、パーティ編成に関するメカニクスによるものだ。

 まず、マスエフェクトというものがあり、これはいわゆるリーダー効果であり、誰をリーダーにする(中央に配置する)かで、効果が変わっていく。また、この効果を発揮するためには、リーダーを決めるだけではなく、それぞれの場所において、いくつかのタグ(属性や男女のような)を満たす必要があり、その制限にどの程度準拠するのか、という判断がある。


 また、ターン制であることも、編成をより面白くしている。

 「メギド72」は、戦闘において、シンプルな仕様を採用している時がある。たとえば、ダメージ計算式は、大きくカテゴライズすれば、あの悪名高き『アルテリオス計算式』だ。

 このような計算式は、わかりやすさや、計算のしやすさ、攻撃役と補助役が明確化する、というメリットがあり、実際に本作ではよく機能している。

 素早さに関しても、その様なシンプルな仕様を採用しており、素早さの高い順で、ターンが回ってくる、という仕組みになっている。

 フォトンのドラフトとの兼ね合いもあり、行動順は非常に重要であり、それを調整したり、あるいは、シナジーのあるユニット同士の絶妙な数値の設定(調整)加減などは、かなりの見所がある。

 このような点も、編成において考えるべき、面白い点だ。


 加えて、少しマニアックではあるのだが、ターゲットシステムの仕様も、編成の面白さに寄与している。

 「メギド72」には、前列と後列という概念があり、それに対して、各ユニットは、『自身が前衛であり、前衛を狙うファイター』と『自身が前衛であり、後衛を狙うトルーパー』、『自身が後衛であり、前衛を狙うスナイパー』という属性のどれかを持っている。

 各ターンにおいて、プレイヤーは、自身のユニット1体と敵のユニット1体にのみ、ターゲットを設定することができ、設定されている場合は、それに従った行動をし、設定しなかった場合には、上記の前衛・後衛を加味しつつ、ある程度合理的な(たとえば、回復ならば体力が最も低いユニットを対象にするなど)オートの判断を行う、という仕様になっている。

 これが面白い。

 当然ながら、この攻撃は敵の後衛に、この攻撃は敵の前衛に与えたい、というようなことがあるのであって、それを編成の時から、ある程度仕込むことができるようになっているのだ。

 また、オートの判断に置いても、独特な仕様が存在しており、たとえば、『2回まで攻撃無効のバリアを貼る』という効果ならば、最も体力が低いユニットに対して使用されるが、『攻撃力を強化し、2回まで攻撃無効のバリアを貼る』効果ならば、それは攻撃力に対するバフの効果なので、最も攻撃力が高いユニットを対象にしたり、ということがある。

 こういった点も考慮に入れて、ユニットを選定して……とやっていくと、無数に考えどころがあるのがわかるだろう。

 もちろん、それらを強く考える必要のある戦闘ばかりではなく、むしろ、普段は考えなくてもよいことではある。単純に強力で、シナジーのあるユニットを詰め合わせるだけでも勝てることも多い。

 ただ、それでも歯が立たない時や、自身が何らかのチャレンジ(縛りプレイなど)を行っている時に、これらの仕様が明確に効いてくることがあるのだ。そのような時の興奮は測り切れないものだ。



2.キャラクターたちの平等性

 「メギド72」において、味方のキャラクターとなるメギドたちなのだが、彼・彼女らの取り上げ方が、他のソシャゲと比べて、平等性がある、という点もこだわりを感じる点だ。


 まず、本作はターゲットが絞られることが多い国産のソシャゲにおいて、比較的少数派と言うべき、男女それぞれのキャラクターが実装されているタイプのゲームだ。

 ターゲット層が絞られている場合、どうしても、その偏りはゲームの雰囲気やキャラクターたちに影響を与えるものだ。本作はそう言った雰囲気が少なく、カラッとした作品であると言える。

 性別の割合は完全に等価であるわけではないが、大きな偏りになるほどではない。実際にリアルイベントの様子などを見ると、プレイヤーも性別問わずおり、筆者のように家族ぐるみで愛好している方も多いように思う。

 また、キャラクターの扱いが、比較的平等性がある。

 たとえば、本作にはスキンである衣装や、リジェネレイトと呼ばれるスタイル違い版のキャラクターが存在するのだが、これは早期実装組の72体すべてにおいて存在し、偏りがない。

 初期配布組の衣装のみ、色違いが存在するが、それ以外は主人公のスキン以外、複数個の衣装を持っているキャラクターはおらず、2個以上のスタイル違いを持っているキャラクターも存在しない。

 キャラクターグッズに関しても、基本的にすべてのキャラクターにおけるグッズが展開されることが多く、偏りがない。

 もちろん、どうしても、完全に平等というわけにはいかないし、キーキャラクターが存在することは存在するのだが、それでも、他作品と比べれば特筆すべき平等性であると言えると思うし、何かのキャラクターが好きになった時に、他の大人気キャラクターは衣装を5個も持っているし、スタイル違いが4つも出ている……みたいになることはない。

 これは完結したからこそ、明言できることの一つだ。



3.SFとしての物語や設定のワンダー

 「メギド72」のシナリオはとても面白い。

 とても面白い、とは言え、シナリオを売りにしたソシャゲなんて山のようにあるし、長らくプレイしている作品であれば、思い入れがあり、その展開に感情的になることも多いだろう。

 ただ、それを差し引いても、特筆すべき面白さだと筆者は思っている。

 そして、それは、SF的な面白さである、と考えている。

 ファンタジーとSFは、隣接しているジャンルであり、ある種アナログ的に繋がっているものだと思うが、個人的には、SFである、ということは、説明が付いている、ということだと思っている。

 作中の現象が、あるいは、キャラクターの行動が、その根本的な世界設定が、理論的に説明が付き、それが作中でされるほど、SFである、というように個人的には感じている。

 「メギド72」は、(まあ、もちろん、シナリオごとの差異はあるが)論理的な作品だ。論理的な物語展開がされ、明確な世界設定がされている。


 「メギド72」には、ハルマニア・ヴァイガルド・メギドラルという3つの世界が存在し、それぞれ、端的に言ってしまえば、天使・人間・悪魔に相当するハルマ・ヴィータ・メギドが存在する世界である。

 そのタイトルに準ずるように、主人公たるソロモン王は、メギド(悪魔)を従えるわけだが、それらは基本的にヴィータ(人間)の姿をしている。これはメギドがヴィータの姿になっている(そうする事情がある)こともあるのだが、メギドラル(悪魔界)を追放され、ヴァイガルド(人間界)に転生した結果として、そうなっていることが多く、そういった『追放メギド』と呼ばれる者たちが、特に初期のユニットになっている。


 では、そもそも、メギドという種族はどういったものなのだろうか?

 そして、ソロモン王(プレイヤー)は、主に幻獣と呼ばれる存在と戦うことになるのだが、その幻獣はどういった存在なのだろうか?

 メギドは、本能的に幻獣を敵対視し、生理的な嫌悪感まで持つが、メギドと幻獣は似た存在であるようにも思える。それはどうしてだろうか?

 そもそも、どうして、一部のメギドはメギドラルから追放されたのか?

 そして、追放されたメギドはどうして、ヴィータとして転生することができているのか?


 そういった、数多の謎に、説明が付くのだ。

 加えて、その説明は、筆者にとっては、SF的なワンダーを感じさせるものであった。

 確かに、そう考えれば説明は付く。そして同時に、それはある意味では示唆されていたものだ。しかし、それは思い付かなかった。そして、そのありようは、現実世界で触れられるような形態ではなく、フィクションだから触れられるようなものであり、普段は使わない脳の領域を刺激される――

 そういった、SFのワンダーを感じられる。


 もちろん、そういった根幹的な部分でなくても、複数の視点を上手く書ききる技術もとても優れている。

 個人的にとても好きなのは、本作で、ソロモン王たちが不明な事象にぶつかった時に、それぞれ、参謀や研究者に近い立ち位置のキャラクターたちが自身の考えを述べていき、それらを互いが検討し合うシーンだ。

 これは、本当によく行われ、各キャラクターたちがどのような考えを持っているか、どのようなスタンスであるかを垣間見える楽しいシーンだ。

 他の作品では、それぞれのキャラクターが自身の『知識』を披露し合うことは多いが、『推論』まで語り合うことは少ないように思う。各キャラクターの推論を考えることは、そのキャラクターの知識だけではなく、その考え方まで反映する必要があり、より高度なことであるからだと思われる。しかし、本作はそれをやってのけている。


 また、主人公一行が行動を決める時には、議決を採ることが多い。

 これは、本作が『多様性』や(作中における意味の)『議会』がテーマの一部になっている、という点もあるが、自然とこのような民主的なシーンが挟まり、各キャラクターのスタンスや考え方が表明され、それらが取り入れられながら、物語が進んでいく様は、とても好感が持てるものだった。


 整理すると、「メギド72」のシナリオの根幹には、論理性が明確に横たわっている、と筆者は考えている。

 それによる、独自の世界観に対する説明や、主人公たちの行動は、読んでいてとても興味深いものであるし、他の作品のシナリオを読んでいる時とは異なる、ワンダーを感じられることも多かった。

 これは、かなり特異的なシナリオであると言え、読む価値がある、と明言できるものだと思っている。



4.IPやコラボなども存在しない単独作品

 すでに述べたことではあるのだが、本作は、かなり独立している作品だ。

 強力なIPや、世界観に連なっているものではなく、単独の作品である。


 また、終ぞ、コラボすらすることがなかった。

 コラボレーションというのは、世界観をまたがって行われるものであり、どのような作中の説明がついていたとしても、部分的には世界観が破綻してしまうのは避けられない。


 このようなことが避けられた作品なのだ。

 これには、2つの利点が存在する。


 1つは、本作だけで完結できる、ということだ。

 たとえば、同じIPの他作品を追う必要があるとか、そういったことが存在しない。コラボ先の元ネタを知っていないと十全に楽しめないシナリオが存在するとか、そういったこともない。

 完全に本作だけで、完璧に楽しむことができる。


 もう1つは、そのシナリオ、世界観が本作だけのものだ、ということだ。

 それゆえに、上述したような硬派な世界観設定や、物語展開ができた、という側面もある。


 強力なIPの最新作が、大人気作品とコラボする、なんてことが当たり前のソーシャルゲーム界において、完全に単独でありながらも、ここまで続くことができた、ということは珍しく、しかし、それゆえの価値が明確に守られているのだ。



5.完結することが明確化している

 そして、皮肉なことに、今となって生じたアピールポイントの一つは、作品が完結することが明示された、ということだ。

 先が気になるような伏線を張っていたとしても、作品が途中で終わってしまうのならば、意味がない。

 完結してから、その漫画を買う、連載は追わない、というスタンスの読者も一定数いるだろう。

 本作はその、完結が明示された運営型ゲームなのだ。


 もちろん、提示された、そのすべての謎や設定に説明が付くかと言えば、そうではないと思う(まだわからない)が、それは、連載されている漫画や小説、ドラマなどにも言えることであり、それが普通だ。

 ただ、本作のメインシナリオはしっかりと完結する。

 「メギド72」は、サービス開始からすこし経った時に、大筋としての将来の展望が簡単に示されている。その中で、大きく提示されたものに関しては、きちんと回収ができているのだ。

 つまり、最初から想定された分が、もちろん、大小の修正はあったにせよ、完結することなる。打ち切りとは異なる、ちゃんとした完結なのだ。


 また、システム面に関しても、更新が終わることになる。

 それによって、本作でもどうしても発生していたインフレが終わりを迎えることになるし、先々に広がっていくであろうプールを考える必要がなく、今ある分について考えればよい、という形になったと言える。

 オフライン版になる、ということは、(詳細な仕様はわからないが)基本的には通信を必要としなくなる、ということだろうから、通信が多少制限されている状態でもプレイできたりするし、通信待ちの時間などが短縮され、テンポ良くプレイできるようになるかもしれない。

 ある意味では、ずっとプレイできるようになる、とも言える。


 ただ、気を付けるべき点も存在する。

 細かい仕様はまだ明確になっていないし、メギドの召喚(ユニットの追加)などで、今(オンライン版)のうちに進めて置いた方がよい場合もあるだろうと想像ができる。

 また、「メギド72」は、7周年や7.2周年を祝うべく、いくつかの施策も行っている。どうせダウンロードするのであれば、それらの恩恵にあずかれる今のうちに始めて置いて、その恩恵を元に、後で、ゆっくりとプレイするのがよい可能性は高いだろう。

 だからこそ、今、始めるべきなのだ。

 たとえ、終わることがわかっていたとしても、始めるのが早いに越したことはない。

 終わりというのは、ある形における始まりにすぎず、それは碑となって、我々の今後の生活を支えていく一つの柱になるはずだから。

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